すべては、清艶のりょう様の為に…
どるりょうが朝セクロスしてるだけの話です。


微睡みの楽園


 朝の光が瞼を震わせて、凌牙は眼を開けた。ぼんやりと霞みがかった視界が明るくなり始めた部屋を映し出している。外は日が顔を出したというところか。休日に起きるにはまだ早いと思われる時間だろう。

 ふと耳を澄ますと、自分のものではないもう一つの寝息が聞こえた。規則正しいその音の方へ振り向くと、口を緩く開いてまだ眠っている顔が眼に入る。いつも凌牙をまっすぐに見詰める淡い灰色の瞳は、今は瞼の下だ。
 そう、こいつは凌牙を昨日ぐちゃぐちゃにした張本人。休日前だからと言って家に連れ込み、日付が変わって凌牙の体力が尽き果てるまで精を絞り尽くしたのだ。幸せそうに何度も何度も凌牙の名前や恥ずかしい言葉を囁きながら。凌牙はそんな彼の声と手に導かれるまま、訳のわからないまま何度も果てた。
 骨まで喰らい尽くすはずの鮫が骨の髄まで絞り取られてしまうなんて。お陰で身体が重い。そんな凌牙を放って安らかな寝息を立てるその顔がなんだか憎らしくなって、凌牙は鼻先を摘まんだ。

「ふがッ……なんだ、…?」

「起きたかよ」

「ん、りょうが……はやいな、おはよう」

「…おはよう」

 寝ぼけ眼のドルベはまだ夢の中に足を半分入れたままなのか、普段の彼からは感じられないようなゆっくりと舌足らずな口調でヘラリと笑い、凌牙の蒼い髪を撫でた。 

「昨日は、可愛かったよ」

「うるせぇ馬鹿……誰かのせいで腰が重いんだよ」

「ふふ…ついつい歯止めがきかなかったんだ。久しぶりということもあってな。すまない」

「別に怒ってねぇよ」

 ふいっと凌牙は寝返りを打ってドルベに背中を向けた。自分の腰がやけに重いのは、彼だけのせいではない。盛り上がってしまいついつい調子に乗る彼を甘んじて受け入れてしまった自分のせいでもあるのだ。昨日自分が何を口走っていたかを思い出すと恥ずかしくて死にたくなる。こんな顔を彼に見られるのはたまらない。

「こっちを向いてくれないか凌牙」

「……」

「凌牙」

「うるせぇ。俺をほっといて寝てた罰だ」

「さては、寂しかったのか?」

 凌牙の言葉を自分の都合の良いように解釈したドルベはすすっと身体を近づけて、後ろから凌牙の身体に腕を回した。凌牙は身体が重いことを理由にして、ドルベの腕を拒否しなかった。

「痕……沢山付いたな」

「誰が付けたと思ってんだよ。服で隠れんのかこれ……璃緒に何か言われたらどうすんだ」

「君の服のラインはわかっている。ジャケットを脱がなければ大丈夫だ」

 ドルベは凌牙の肩についた紅い痕を上塗りするように軽く吸ってゆく。朝の鈍い頭に感覚を滑り込ませるような、強すぎず弱すぎないちょうどいい強さだ。そんな感覚が次第に熱を持ち始める。

「っ、ん……」

 吐息が漏れ始めた凌牙のベッドの上に投げ出された手に、彼の手が重なる。するりと衣擦れの音がして彼の脚がじゃれるように凌牙の脚に絡まる。静寂の中に、熱が満ちてゆく。

「凌、牙…」

「あ…朝から、っ…盛ってんじゃねぇっ……」

「一人で起きてしまって寂しかったんだろう?埋め合わせしないと」

「うるせっ……はぁ、んっ…!」

「凌牙、こっちを向いて…」

 凌牙が上半身だけ動かしてドルベの方へ顔を向けた。非難の色を含ませた眼は彼の悪戯のせいで潤んでしまっている。ドルベはふふっと笑って唇を重ねた。

「ふぅ、…ん、ふっ…」

「好きだ…。可愛い、凌牙……ん…」

「んんっ…!」

 ちゅ、と音を立てて優しく吸われていく毎に、彼の舌が優しく凌牙の口内を撫でていく毎に、凌牙の理性が崩れていく。
 意地っ張りな凌牙は乱暴に扱われるより優しくされることに弱い。苦痛には耐えられるが、優しさには抗えない。ドルベはそういうところもよく解っている。
 ドルベは唇を首もとにずらしながら、凌牙の腰を撫でた。力を入れずに軽く太股のあたりまで何度も往復するように撫でていく。

「ふぁっ…!」

「腰、大丈夫か?」

「も、今更っ…!わざとだろっ…ぁ…!」

「そんなことはない。心配してるんだ」

「どの口が……ひっ…!んん…」

 疑いを断定させてくれない彼の真剣な眼差し。そんな眼をされたら、その言葉を信じたくなってしまう。ずるい奴だ。
 腰を撫でていたドルベの手がするりと尻の方に伸ばされた。しなやかな指で割れ目をなぞられ、無意識的な期待から凌牙の身体が跳ねた。重なった手をぎゅっと握る。

「いいか?」

「今更…だめだって言っても…っ、止める気ねぇんだろ……硬いの当たってんだよっ……」

「君が嫌だと言うならここまでにするよ。私のほうは収まりがつかないが…何とでもなる」

「くそっ…お前ずりぃぞ…!」

 ここまでしておいて、止めるという選択肢を持ち出して来るなんて。悪態はあくまでも照れ隠しであって、凌牙が続きを欲しがっていることくらい一目瞭然な筈なのに。戻れない崖っぷちに凌牙を立たせて、彼は意地悪な笑みを真剣な表情で隠しながら凌牙の答えを待っている。

「凌牙、君がどう思ってるか聞きたい…。私はしたいが、君が嫌がるのに押さえつけて続きをすることはできない」

「っ……馬鹿……!しろよ、続き…。俺だって…、…して…欲しい……」

 顔を真っ赤にしながら消えそうな声で凌牙がそう言ってやれば、途端にドルベはふにゃりと相好を崩して、「ありがとう」と囁きながら耳に口づけた。それだけでビクンと身体が跳ねて吐息が漏れる。
 ドルベは尻の割れ目を辿っていた指先を中へ進めた。

「痛くないか」

「へいき、だ……。あ、あ……っふ、ん…」

「昨日入れたばかりだから大丈夫そうだな」

 そうは言いながらも、念入りに中の性感帯を刺激しながら解していく。中を傷つけては大変だからというドルベの優しさだ。それが、逆に凌牙の羞恥心と更なる欲望を煽る。

「凌牙、可愛いよ。愛してる…」

「あん…!あ、はぁっ!あぁっ…!」

 中を刺激し、唇と舌で首筋の皮膚を撫でながら、昨日のようにドルベは愛撫の合間に言葉を囁く。凌牙は前立腺を撫でられる快感と共に、彼の言葉に耳を犯されて感じた。 

「ドルベ……っぁ、…!」

「どうした?」

「やだ…焦らす、なぁっ…!ああっ!」

「凌牙、言ってくれ…。どうされたい?君の言う通りにしてあげる」

「っく……い…れて……入れて、くれ…」

「何をかな?君の中には既に、私の指が入っているよ……」

 顔を真っ赤にして茹で蛸のようになりながら、ようやく「入れて欲しい」と言えたのに、彼は一体凌牙にどこまで言わせるつもりなのだろうか。
 ドルベは「顔が真っ赤だ」と嬉しそうに笑いながら相変わらず凌牙の皮膚を唇で撫でている。どうやら、凌牙がハッキリと言うまで望むものを与えるつもりはないらしい。
 恥ずかしくてどうにかなりそうだった。しかし身体は疼くばかり。彼の意地悪い愛撫と言葉で、凌牙の理性がどろどろに溶けてゆく。

「ふうぅっ……お前の……ちんぽ、いれてほしいっ……あ、俺のなかっ…ん……、せつないっ……さみしいんだ…。な、ぁ…おまえの、で…いっぱいに、して…?」

「ん、よく言えた、凌牙。そんな姿を見せられては私がどうにかなりそうだ…」

 ドルベは凌牙の蒼い髪をすいて、後ろの孔からずるりと指を抜いた。抜かれる快感に小さく悲鳴を上げた凌牙の身体を上に向かせて、彼が覆い被さる。
 口づけは先程よりも熱く激しく、戯れではないことを教えてくれる。泥沼のようになった凌牙の理性に彼の熱は真っ直ぐ突き刺さった。激しい熱に包まれ、優しさに包まれ、愛情に包まれ、凌牙は溶けてなくなる自分自身をなんとか掴みながらドルベの腕の中で彼と一つになる。

「あぁっ!はぁ、あん!ア……ドルベ、ぅっ…!」

「凌牙、気持ちいいかい……」

「い…いっ…んんっ!あっ、く…!ああ!」

「好きだよ…大好き。凌牙…私の全ては…、っん…君のものだ…!」

 羞恥心のその先にあるのは脳髄を犯す快楽のみ。暗いトンネルを抜けた先に、楽園が広がっているように。
 彼に揺さぶられて、好きな所を突かれて、掠れる声で名前を呼ばれて波打つシーツの上で凌牙は乱れた。
 甘えるのが下手で、寄りかかるのが下手で。人に迷惑をかけずに生きようとする凌牙の全てをドルベは受け止めようとしてくれる。寄りかかってくれと、厳重な凌牙の心の扉の鍵を一つ一つ開けてくれる。凌牙も、そんな彼だからこそ自分をさらけ出したいと思う。彼なら、全てを受け止めてくれるから。

「な、…なあ、ドルベっ……!っん!」

「なんだい、凌牙」

 激しい動きに掻き消されそうな凌牙の声を拾う為に、ドルベは動きを緩めた。近づいた顔を両手で包んで更に近づけて、その耳元に囁く。

「おれ、も……すき……」

「…!凌牙っ」

 彼の囁いたものの何十分の一の言葉かもしれないが、凌牙にとっては精一杯の言葉だった。
 そして凌牙の言葉に感極まったドルベが息の詰まる程抱き締めてきて顔中に口づけてくるのはもうお決まりで。凌牙の後ろに刺した杭の存在も忘れ、彼は口づけに夢中になっていた。

「ハァ、はっ…ドルベ、うごいて、…くれ……俺、もう…イキたい…!」

「わかった……なら、一緒に…!」

 凌牙の脚を抱え、ドルベは律動を再開した。深く繋がって擦れ、二人は吐息を交じらせながら快感に震えた。凌牙がドルベの肩を力強く掴んだのを見て、ドルベは凌牙の性器を扱いた。今日初めて触るが、そこはもうはち切れそうなほど勃起している。

「あ、あっ!ア、はあ、ぁっ!んうぅっ……!」

「くぅ、っ……!凌牙、っ….」

 程なくして凌牙はぎゅっと眼を閉じて射精した。ビク、ビク、と腰が跳ねてドルベが擦るままに性器から白濁を飛ばす。ドルベも少し遅れて、低く呻きながら彼の中で果てた。

「はぁ……はぁ、っ…」

 ゆっくりと開いた凌牙の眼に、自分を見守る灰色の瞳が映る。その目尻が下がったと思うと、彼の顔が近づいてきて再び凌牙は眼を閉じた。薄く開いた口を覆われ、唇や舌を吸われる。先ほどまで賑やかに音が溢れていた空間にはちゅ、ちゅ、と静かに労る音だけが響く。

「はぁ……ふふっ」

「なんだよ…」

「いや、…幸せだな、と思って。君を好きで、本当に良かった」

「っ……」

「もう一度、聞かせて欲しいな。君の、可愛い言葉…」

「馬鹿野郎……恥ずかしいんだよ」

「そんなこと言わずに」

「うるせぇ…朝から盛りやがって」

「朝から可愛い君が見れて私は満足だ」

 ドルベは凌牙の隣に再び転がり、凌牙の身体をぎゅっと抱き締めた。いやらしい触り方ではなく、凌牙を抱き枕にするような、純粋な抱擁。

「愛してるよ…大好きだ。…幸せを、ありがとう…りょう、が……」

 彼の言葉はどこまでが意思を持つもので、どこからが寝言なのだろうか。ドルベは言いたいことだけ言ってまた、凌牙をほっぽってさっさと寝てしまった。
 ため息を吐きながら、このまま日が高くなるまで惰眠を貪るのも悪くないかと思った凌牙も、彼に抱き締められたままうとうとと微睡み始めた。汗をかいてべたりとした身体も、妙に暑苦しい温度も、凌牙の中に入ったままになってる異物も、特に嫌ではないと思うから不思議だ。
 寝落ちてしまう前に、彼の前髪をかきあげて口づけを一つ落とし、起きている彼の前では絶対に言えないであろう言葉をその耳に囁いた。抱擁が強くなったような気がするが、特に気に止めず凌牙もまた、瞳を閉じた。



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りょうさんのとこで「甘いりょうが受け読みたい」と書かれているのを発見してしまったので…
そしてりょうさんに「どるりょう書きます!」と言ってしまったので(笑)
傲慢かもしれないが、書かずにはいられなかった(モンスーノ感)
ドルベがナッシュ呼びではないのであくまで現パロと言ってみる。

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