氷と太陽
※神代兄妹の兄弟喧嘩デュエルあたりの妄想です。
「おーい、シャークに妹シャーク!昼飯食べに屋上行こうぜ!」
もう、またその呼び方?
私にはちゃんと璃緒っていう名前があるのよ。
九十九遊馬の妹シャーク呼びは直らない。
彼が兄の凌牙のことをシャークと呼んで慕っているのは知ってる。それに、凌牙がその呼び方を満更でなく思っているのも知っているわ。
でも、それを私にも使うのはどうなのよ?
確かに私は「凌牙の妹」ではあるけど…。私は私。凌牙と一緒にしないで。
「なんだあ?小鳥。おっ!お前の弁当もうまそうだな!もーらい!」
「もー!いい加減にしなさいよ!」
全く…と呟きながらも、どこか嬉しそうな小鳥さんの顔。
知っているのよ?あなたが遊馬のこと、好きなんだってこと。
そのお弁当だって、遊馬につままれることを想定して作っているってことも。あなたが一人で食べるには、少し量が多いものね。
小鳥さんを名前で呼ぶのは、やっぱり幼なじみだからなのかしら?それとも…何か特別な感情があるの?
そうだったら…なんだか少し悔しいわ。「一人の女の子」という存在として、彼女を見ているんですものね。凌牙の妹として見られている私と違って。
本当はね、あなたと私が付き合うことになったというデタラメな情報を聞いたとき、別に嫌じゃなかったのよ。…まあ、全然好みのタイプではないのだけれど。
でも、一緒に居て楽しいと思えるし、もっとあなたのことを知りたいと思うわ。あなたが何をしてくれるのか、予測がつかなくて時々心配になるけど、興味をそそられるわ。怖いもの見たさってやつなのかしら。
あの凌牙が彼に一目置いていることが最初は不思議で仕方なかったけれど、今ではその理由が分かるような気がするわ。
九十九遊馬…その明るさで色々な人を惹き付けてやまない存在。そして、皆を平等に照らし、活力を与える太陽のような存在。
でもそれは、時に残酷な存在でもあるの。どんなに望んで光の受け皿を大きくしたところで、太陽の光を独り占めすることはできないのだから。
私は太陽の光を独り占めしたいとは思わないわ。だって光を浴びすぎると氷は溶けてしまうもの。
でも少しくらい、あなたが氷柱の一角を認識して、溶かして丸くしてくれれば、私も少しは優しくなれるのにな。
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