ズキズキと痛む膝の傷からは泥と血で汚れていて早く洗い流したい。歩くと痛いし頬は熱くじんじんする。口の中にも血の味がしてイライラする。もう一発ぐらい殴ればよかったな、と行き場のない怒りにため息をつく。ふと、目の前に誰かが立ち止まったので視線をむければ奴。私は思わずげ、と言ってしまった。

「!なにその傷、大丈夫なの。」

『別にこんな傷たいしたことないし。…大丈夫だからついてこないでよ。』

「僕は名前のお目付役を頼まれてるし女の子が怪我してるのにほっとけないよ。君の事だから適当に水で洗ってすませそうだしね。」

『怪我の手当てなら慣れてるから。』

「それ自慢じゃない。喧嘩しないって約束はどうしたのかな。」

『喧嘩つーかあいつらが勝手に絡んできたんだ。』

「絡んできたら僕を呼ぶか逃げるかしなさい、って言わなかった?」

『逃げるとか余計なめられるだろ。それに君弱そうだしな金久保様。』

にんまり笑ってやれば綺麗な顔が歪んだ。男子に絡まれ泣くのも叫ぶのも私はやらず。右ストレートを叩きこんだ日からなぜか余計に喧嘩をふっかけられる。女に負けたのが悔しいのか知らないが先生に目はつけられるし、お目付役としてクラスを牛耳る?金久保っていうボンボンが私にくっつくことに。今のように口煩いしついてくるので、うざったいことこの上ない。

「名前が喧嘩強いのはわかるけど女の子なんだからもっと自分を大事にしなきゃ。傷が残ったらどうするの。」

『別にどうもしないし傷なら作ったろくでもない男共に言ったらどう?それに昔からこんなんは日常茶飯事だからなんとも思わないね。』

「あぁ、男の方は僕からきつく言っとくから安心して。日常茶飯事って昔からなにしてるのかな。」

『そりゃ、…金久保様は金持ちで苦労した事なさそうだもんな。別に先生に言われたからって面倒みてくれなくてもいいよ。君も面倒だろ?先生には言っとくから。』

嫌々見られるのもこっちだって嫌だ。私にかまうのも話しかけるのも優しく手当てするのも、先生に頼まれているからだろう。たまに彼にすがりたくなる。助けてよ、と。でもそんなの自分が惨めすぎる。傷ついたって小さなプライドを守るために私は1人で戦う。

「ねぇ、違うんだよ。先生に言われたから名前に近づくんじゃないよ。僕がそうしたいからしてるんだ。誰だって好きな女の子は守りたいものでしょう?」

『…は?』

「だからもう怪我したら駄目だよ。君を泣かすのも慰めるのも押し倒すのも傷つけるのも。手当てするのも僕だけでいいんだから。はい、終わり。一緒に帰ろか。鞄教室?」

『あ、え、はい。』

「じゃあ取ってくるから待ってて。あ、くれぐれも暴れないように。」

見とれるくらい完璧な綺麗な笑顔を残し彼は消えていった。手当てされた場所が熱くなる。彼は好きで私といる?というか凄い事いわなかった。ぼんやりする頭で考える。不覚にも嬉しいとか思う自分に鳥肌がたって暴れてしまった。



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