授業中ぼーっと空を眺めるのが私の日課だ。というより授業が退屈なだけである。なんで天文科なのに神話の勉強なんぞしなきゃいけないんだ…。眠い、子守唄か!
「しっかりやらなきゃ駄目だぞ。選択授業でこれを選んだのは自分だろ?まったくお前は。」
『錫也…、お前は元気だなぁ。だって星座と宇宙と神話だったら一番楽そうなのは神話だったし…、私計算とか嫌いだから公式ある授業はとりたくなかったんだもん。』
「なんで天文科にはいったんんだか。まったくお前は。」
『その台詞さっきも言ったよ。そりゃ星が好きだし…、ってか自習なんだから寝てもよくね?お休み「駄目だ。プリントが出されただろ?」…真面目ちゃんめ。』
困ったように笑う隣の錫也はクラスではおかん的存在。今は選択授業だから錫也くらいしか仲良く喋れる人がいない。つまり彼は私の世話を甲斐甲斐しくやくのだった。やめてくれ。本当に寝かせてください。
『寝るっていうかね、机につっぷしたいんですよ。それすら許してくれないのですか!』
「お前も哉太もつっぷしたら本当にねるから駄目だ。いいからプリントを終わらせようか。」
『錫也くーん、一問目からわかりませーん。』
「問題も見てないだろ。まったく。世話が焼けるよ。」
はあ、とため息をついて笑う彼。錫也が私だけを見てくれるこの瞬間は優しさと優越感と愛おしさ。今は私だけを見ていてくれる。それがこの授業に出ている意味だと最近の私は思う。
「なにニヤニヤしているんだ?」
『いや、いつもありがたいなーって。錫也がいなかったら私駄目だわ。』
「お前卒業したらどうするんだ?俺だってずっといてやれる訳じゃないだろ?…心配だ。」
『そんな不安な顔しないでよ。えー、いてくれないの?じゃあ、錫也みたいな人を探すよ。私の世話を見てくれるいい彼氏を、』
「…、」
そうだ、いつまでもいる訳じゃない。間違えた文字を消そうと手を伸ばした筆箱には消しゴムがなかった。隣から手が伸びる。錫也が困ったように笑っていた。
「お前の面倒が見れるのは俺くらいだと思うからずっと一緒にいるよ。わかった?」
『…はぁ、』
「ほら、消しゴム。忘れたんだろ、使って。」
『あり、がと、』
今のは告白?なんて聞く暇はくれないみたいだ。消しゴムが私の掌に転がる、指先は触れる。ドキリと心臓が高鳴る。ああ、一生私の面倒見てくだい。
(触れた指先にトキメキ)
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