心地よい音楽が耳と心に染みわたる。なんだかお腹の中もリラックスしてるようだから不思議だ。そしてたまにもっと聞きたい、とでも言ってるように私のお腹を蹴る。それが嬉しくて私は最近この颯斗くんの練習室についてくる。紅茶とピアノと編み物。なんて裕福で幸せなんだろう。ああ、太るわぁ。でもリラックスするわぁ。

『このままでいたい…。』

「ふふ、最近の名前さんはのんびりとしていますからね。赤ちゃんも貴方も少しなまけちゃっていますね。」

『まぁ、颯斗くんに似た子なら優雅で大人しい子だからね。私は完全になまけてるけど。これもすべて颯斗くんのせいだよ。紅茶は美味しいピアノは素敵。そりゃ、ぐーたらしちゃうわ。』

「それはありがとうございます、なのでしょうか。でも音楽はいいといいますし、名前さんのその幸せそうな顔が見れて僕も弾きがいがありますから。」

「そんなことずっとやってるから貴方少し太ったんじゃないですか?」

『空翔くん、君は本当にそういうことしか言えないのね。確かにそうかもしれないけど、颯斗くんを見習ってよ。昔から超紳士だったんだからね。』

貴方が見習ってお淑やかになったらどうですか、と鼻で笑われてしまった。なんだかこれが空翔くんの普通だから、もうなんとも思わない。慣れたな私。うっ、っとお腹を抱えて苦しんでみれば大丈夫ですか!と駆け寄る2人。そんな2人の頬に指をさす。ほおけた顔が2人ともそっくりでなんだか笑えてくる。

『なんつってね。ピアノと減らず口ばっか言ってないでご飯にしますか。』

「人の親切心に漬け込んだんですか。なんて人ですか…。」

「まったく名前さん…、そういう心臓に悪い冗談はやめてもらえますか。結婚を申し込んだときといい、貴方は僕の寿命を縮める気ですか。」

『ごめんってば颯斗ー。今日はクラムチャウダーだよ。空翔くんも手伝って。』

「…はい。それで本当に大丈夫なんですか?最近具合が悪そうだと颯斗兄さんから聞いたので、」

『心配してくれたの!』

「いえ、…子供に罪はないですし。」

「ええ、心配してくれたみたいです。僕も2人が仲良くしてくれて嬉しいですが、あんまり仲良くなると嫉妬してしまいますよ。」

『颯斗くんが一番だよー。それに子供ができたら颯斗くんも浮気できなくなるからね。』

「浮気なんてしませんよ。今もこれからも。」

「ご飯できましたが!目の前でイチャイチャしない!」

珍しく声を荒げる空翔くんに赤ちゃんの影響に悪いから怒鳴らないでくださーい、と言えば母親になんかなれるんですか?また鼻で笑われた。とりあえず本日2回目なので頭を拳でぐりぐりしてやった。颯斗くんが大人しくしてください!とでも楽しそうに怒った。

『もう、そんなんで好きな子ができたらどうするの。それじゃあ小学生の男の子だよ。好きな子に悪戯とかするんでしょ。』

「貴方は僕の事をなんだと思っているんですか。」

『だってー、いつもそんな態度だと勘違いされちゃうでしょ。颯斗くんもそうだけどわかりずらいのよ、君達。』

「ふふ、じゃあ僕は名前さんに会えてラッキーですね。空翔もこういう人を見つけたらいいですよ。」

「いやですよ。僕はもっとできた人をもらいます。」

『かわいくなーいー。どう思う颯斗これ。反抗期ですか。』

「照れているんですよ。僕は大分仲良くなったと思いますけどね。でもなんだか本当に反抗期と言いますか。親子の会話みたいですよ。」

「はぁ!?」

『産まれてる子供はもっと素直に育つといいなぁ。あ、でもお守は頼んだよ。空翔くんは頭いいし。』

「貴方と比べると誰でも頭良くなると思いますけど。というか僕は貴方みたいな親は嫌です。」

反抗期めー、と言いながら茶碗を片付ける。颯斗は笑いながら僕がやります、と手伝ってくれる。そんな私達を微笑ましくみる空翔くん。その緩んだ顔が珍しくて私は近づいて両手で顔を挟んでマジかで見る。なんて可愛いんだ。顔が真っ赤になって慌てる顔がもっと可愛い。

「こらこら、あんまりいじめちゃ駄目ですよ。」

『でもなんだか子育ての練習になっていいよねぇ。顔が似てるからイメージしやすいし。反抗期も予習できるというか、』

「僕は子供じゃありません!」

「でも楽しそうですよ。僕たちの子供が産まれたら面倒みてくださいね。」

『産まれてすぐにこんなカッコいいお兄ちゃんができるなんて嬉しいなぁ。よろしくねー。』

「っ、仕方ないから見てあげますよ。」

『ツンデレさんめ。』

「照れやなんですよ。」

「違いますよっ。でもまぁ…、」

『「ん?」』

「嫌いじゃないです、こういう感じ…。」

「ふふ、僕もです。」

もう、養子になっちゃう?というと渋い顔をした。性別はどっちなんでしょうね、と聞いてくる颯斗にどっちかなー、と返す。お茶を淹れて食後のデザート。太りますよ、という言葉はスルーしてどっちがいい?と聞いてみる。2人とも考えてから女の子ですかね、とはもったので笑ってしまった。私は2人に似た男の子がいいな。




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