もう嫌だ、死にたい。気持ち悪い、具合悪いよ!妊娠なんか糞くらえ…。重たいしさっさとでないかなこの野郎、と悪態をついている私に反して錫也はなんか凄く楽しそうであったりする。食事は匂いで駄目になる時もあるしお腹ははるし、常にだるい。体は熱っぽくてイライラする。そうやっていらついた時に錫也にあたる自分が嫌だ。でも彼は楽しいそうだけど。
「名前ほら、できたぞ。洋服と靴下と…。大丈夫か?なんか顔死んでるぞ。」
『つわりが酷いー…。哉太、蜂蜜レモネードホットよろしく頼みます。』
「お、おう。大丈夫かよ。ってか蜂蜜レモネードってどうやって作るんだ?」
「蜂蜜レモネードなんだから蜂蜜と檸檬でいいんじゃない?まぁ、哉太に頼む時点で駄目でしょ。あ、チョコとかいれたらどうかな?」
『うえー、ちょっと羊やめろよお前。今の私にそれは駄目。すっぱいものが食べたいの。』
「ええー、絶対美味しいのに。じゃあ僕が飲むから、それ一口だけ飲んだら?案外妊娠中にいいかも!」
『嫌だー、吐いちゃうー。』
「そもそも俺が堂々と間接キスを許すと思ってるのか?」
「す、錫也が怖い。」
「馬鹿だな羊。錫也、やっぱり頼むわ。名前の事はお前が一番わかってるだろ。」
はいはい、と嬉しそうに立ち上がる錫也。なんでそんなに楽しそうなのか錫也が置いていったふりふりの可愛い洋服を見る。産まれるのは女の子って言ってからなんか作ってると思ったらまぁ、可愛い。哉太がうえ、見たいな顔してる。羊は素敵!と言っているけど。
「こういうのって似合う似合わないの差があるんじゃねぇのか?性格も顔も名前に似たらどうすんだよ。」
『うわー、それは似合わないことこの上ないね。可愛いけど着たいと思わないし、動きづらそうな。でも小さい子だったらなんでも可愛いよきっと。』
「そうだね。子供の時に可愛い姿を沢山写真に残さないと。」
「写真だったら俺に任せとけよ。」
「俺は名前も可愛いしきっと似合うと思うよ。はい、蜂蜜レモネード。熱いから気をつけろ。でもやっぱり女の子らしくしすぎたかな?月子は小さい頃、こういうのよく着てたから。」
『月子と比べないでよ。』
「嫉妬か?あー、でも確かにそうだったな。」
「僕も見たかったなぁ。でも本当に可愛くていいと思うな!錫也の子供で女の子なら間違いなく可愛い女の子だよ。家事もできるし!」
「月子の二の舞にはならないようにしねぇとな。そういえば名前の料理とか見た事ないけどできんのか?」
失礼な事を言う哉太に錫也から昔教えてもらったプロレス技をかけると妊娠中!と3人に怒られた。いいのよ。たまには動かないといけないのよ、わかったか。今日の晩御飯は私が作ってやる、と宣言すると錫也のご飯が食べたい、と羊がいった。まじで失礼じゃないか。まぁ、作らなくていいなら楽でいいか。
「それで名前とかどうすんの?やっぱり星の名前とかか?」
「産まれた月にもよるよね。星座とか守護星とか。」
『お前らだんだけ星好きなんだ。あ、でも星月学園には通わせたくない!?哉太も羊の所も産まれるんだし月子の所も合わせて幼なじみにしたいってかー。』
「通わすとか何年後だよ。でもそれもいいな。」
「でも僕の所はようやく4週間目に入った位だからまだまだ先だよ。後輩になっちゃうね。でも錫也の子が面倒みてくれるなら安心だね。」
『羊はフランスから帰ってくるの?』
「まだわからないけど星月学園には通わせたいな。哉太のところは?」
「俺の所が一番先に産まれるんだよな。一応来週予定日で俺らの地元で産むから実家にいる。」
『そっかー。数か月しかかわらないけど先輩として色々聞こうかな。羊もなにかあったら言ってね。』
「メルシー。」
とか言いながら高校時代を思いだした。名前は4人の出会いの春から取りたいだの、羊のフランス語講座だの、なんかまたグダグダと過ぎていったが錫也はその間また新しい洋服を作っていた。おおう、愛されてるぞ赤子よ。将来が楽しみだ。可愛い服もきっと似合うだろうな、と出来た服をたたんだ。
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