つまりは好きってこと

言葉遊びみたいだな、と思った。意味深なことをいって、上辺だけ聞くと卑猥にも聞こえて。しかし本当はそんなことなくて。こっちが遊ばれているような気分になるけど。本当は優しくて一歩引いて皆を見てくれてるようなところもあって。脇差っぽくない彼が私は面白くて好きだ。

「君も物好きだねぇ。僕と2人きりで楽しみたいなんて、会話の事だよ?」

『にっかりは面白いからね。落ち着くし。』

「そうかい?変わってるねぇ。」

『それよく言われる。それににっかりはさー、やばい事いっても流してくれるというか。』

「ははは、そんなこと言うと期待しちゃうよ。」

『いや、期待させるような浮いた話ではなく。なんつーか、周りはおかんみたいなやつが多いから。』

「ああ。君はよく燭台切や歌仙なんかに恥じらいがない、って怒られてるもんね。」

『そもそもここに来る前からそんなものあったかは謎だけだね。』

それはまた、と穏やかに笑うにっかり。そもそも生きていた時代が違い過ぎる。肌を見せるな、大口をあけて笑うな、下品な言葉を使うな。テレビや雑誌を導入してからは私の生きていたころの情報が入ってきて些か大人しくなったが。月9ドラマをみて雅ではない、と怒っていたが毎週見るあたり好きなんだろうな歌仙。

「付き合っていないのにいたせちゃうことが凄いよね。…接吻のことだよ。」

『多分いたせちゃう人もいまっせ。本番の事だよ。』

「ごっ、ほ!」

『大丈夫かー。にっかりって案外初心なとこあるよね。そういうとこ好きだよ。』

「君は本当に…。そりゃ怒られるさ。」

『いやね、深読みしたのはにっかりでしょ。私なにも言ってないわ。どの本番を想像したのよ。』

「っ、」

『ありゃま。』

「ど、どうして近づいてくるのかな、」

『珍しくて。』

あのにっかりが照れている。あまり表情が変わらない人だ。無表情ではないけれどいつも穏やかに笑っている。にっかり、とついているくらいだし。しかし赤面して目を泳がして、なんて滅多に見れない。慣れてそうで慣れてない、この人のこいうところ可愛くて好きだ。嫌がるにっかりの頬を両手で挟んでこっちに向かせると固まった。

「…主、あまり調子に乗ってはいけないよ。反撃されたらどうするんだい。」

『ふふ、にっかりからの反撃か。楽しみだなぁ。』

「君って人は懲りないよね…。前もこんなことがあって、僕は顔に出さないように頑張っているというのに。」

『いやいや、その反応がいいんだからそのままでいてよ。主悲しい。』

「本当に恥じらいがないよ。」

『私の時代はこんなもんよ。それにこういう時じゃないと見れないでしょ。』

「僕の照れ顔かい?」

『それもだけどオッドアイ。』

「ああ、そっちか。君って本当に僕の事好きだよね、瞳の事だよ?」

『いやだな、にっかりの事も好きだよ。あ、また照れた。』

「っもう!主!」

本当に珍しい。頬はまだ固定したままだからよく見える。私の両手を掴んで外そうとするが私も対抗する。こんな貴重な機会滅多にないんだからよく拝んどかないと。痛い、とか首がもげるとか叫んでいるけど気にしない。いいから見せろや!とぎゃあぎゃあ叫んでれば後ろからため息が聞こえた。

『お、宗三だ。』

「なにをセクハラなさってるんです貴方。にっかりが可哀想ですよ。」

『だってにっかりが照れてるとか貴重じゃない?可愛くない?』

「僕に男を可愛い、と思う趣味はないですので。」

『宗三は私を可愛いと思ったこともないと思うのですが。』

「貴方自分が可愛いと思ったことあるんですか。」

『まぁ、何十年も生きてるしそこそこメイクとかしてお洒落したときは可愛いかなとは。めっちゃ私って可愛い!とは思わないけど見られなくない程度に可愛くはできたかな、とかはさ。やめて、そんな目で見ないで。そりゃ宗三に比べたら可愛くねぇですが!』

「僕は何も言ってませんよ。」

『にっかりー、宗三が苛めるよー。』

「とりあえず手を放してくれないかな。首が痛いんだけど…。恥じらいをもってお淑やかにすれば可愛いんじゃないかな。今の主も僕は好きだけどね。」

「恥じらい、お淑やか。無理ですね。」

『即答かよ。いいよ、そんな取り繕ったような自分面倒だし。あ、宗三そこ座って。』

「なんですか。」

『主命でっせ。』

溜息をつきながら渋々座る。にっかりの時の様に両手で頬をはさみ宗三の顔を見る。うん、やっぱり美人だねぇ。片手で目にかかってる髪をどかしてみる。好きだなぁ、と呟けば宗三がじわじわと赤くなった。嘘だろ、珍しい。にっかりも横で笑っている。よく見えるようににっかりの方に首を動かせば宗三が痛い!と言い手から逃れ、睨んだかと思えば無言で逃げて行った。

「逃げ足が速いね。」

『さすが籠の鳥。いざってときはすぐ逃げる。でもわかったでしょ?』

「うん、確かに普段冷静な人の赤面の顔は見ものだね。ところであの愛の告白は、」

『瞳の事だよ。』

「だよね。」

『いや、宗三も好きだよ。』

「だろうね。」

『え、にっかりも好きだよ。』

「はいはい。」

『うわー、流された。』

いつも通りのにっかりに戻ってしまった。まぁ、それはそれでいい。今日は2人の珍しい姿も見れたことだし。僕も君を赤面させてみたいな、なんて横でにっこり笑った。楽しみにしてるからまた見せてね、と自分の瞳を指せばまた笑った。懲りない人だねぇ、なんて言いながら優しいにっかりは見せてくれるに違いない。宗三はきっと逃げるな。案の定数日間会うたびに逃げられるので追っかけたら歌仙と江雪に叱られた。



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