03


暗闇の中ゆらゆらと漂う意識。夢かな、と思いながら気持ちよく体を預ける。しかしそこであの時聞いた声がしてそれに反応する。が、体は思うように動かない。

【どうだい?楽しめそうか?】

あんた誰なのよ。人の夢に勝手に出てきて。

【それは悪いね。でも時期に会えるさ。君は悪魔なんだから。】

どういう意味?私を…帰して…よ。

【今はまだ…。お休み。】

『っ!』

「…大丈夫か?うなされていたが。」

『あ、大丈夫で…す…。なんかすみません。』

「?そうか。」

『(ペンギンさんが、私の目の前にっ。というか寝顔見られたショック)えっと、スミマセン。なんかお世話になってて。』

「いや、怪我は大丈夫か?」

『は、はい。昨日よりだいぶ楽になりました。ローさんは腕のいい医者ですね。もう動けますよ。』

昨日動けなかったのが嘘みたいだ。さすが死の外科医。死、って所は余計だが。そうか、と口を開いたがそれ以上の会話はなし。ペンギンさんってやっぱり無口なんだね。クールなんですね。ペラペラ喋られても反応に困るんですが。しかし何しに来たのだろうかじっと私を見るがなにも喋らない。気まずい。

『あの、私名前っていいます。』

「俺はペンギンだ。」

『…。』

「…。」

…会話が続かない。まぁ、別にいいんだけどね。ペンギンさんって安心するし。でもきっとこんな見ず知らずの女とか思われてるんだろうな。嫌われていたら嫌だが警戒は絶対しているだろう。どうしたものか、と考えているとそうだと思いだしたように持ってきた紙袋をあげた。

「これ、船長からだ。」

『?わぁ、つなぎだ。しかもなんか短パン…。これローさんの趣味ですか?』

「…あぁ白いつなぎに黒いニーハイ。黒いブーツは鉄則だ、だそうだ。スカートがいいって言ってた奴らが大勢いたが止めといた。色々あるだろ。」

『(飛んだらパンチラとかかな。さすが気の利く。まぁ、飛べないけどね)…ありがとうございます?』

「あと船長から伝言なんだが飯食って風呂入ったら船を案内しろ、と。体がだるいなら無理しなくてもいいが大丈夫か?」

『大丈夫ですけど。あ、あの忙しかったら私1人で回りますんで。本当に気にしないでください。』

「?あぁ。気にするな時間ならある。」

『いや、でも(はっ!!ってか疑われてるなら1人で歩かせないか。でも私のお目付役なんて可哀想な気が。うーん、どうしたら、)』

「俺に案内されるのは嫌なら違う奴を呼ぶが。」

『いえ!!ペンギンさんで嬉しいですが!…あ。』

「…。」

『…あのだから、仕事とか支障があったら申し訳ないとか思ったり、嫌とかじゃなくて、』

なに言ってるんだ私っ。ペンギンさんがこんなに喋ってくださっているのに私は!なに告白みたいな感じで言っちゃてるんだ。ペンギンさんは船長命令で仕方なくやってるんだからな。気を遣わせたくなかったのにこれじゃあ逆効果だ。

『スミマセンっ。』

「ククッ、さっきから謝ってばっかだな、お前は。」

『だって申し訳なくて、…なんで笑うんですか。』

「いや、船長が面白いと言っていたからどんな奴だろうと思ったんだが。」

『…面白いですか?私。テンパってるだけですけど。』

「海賊相手に会話していればそれだけで面白いさ。」

『まぁ、ローさんは確かにあの隈何だろうとか、目つき悪いな、とか怖いとか思いましたが。あ、いや、別にローさんをけなしてる訳じゃなくてですね!!』

「ククッ。」

『…ペンギンさん。そんなに笑わないでくださいよ。居た堪れないです。』

なんかイメージと違うしっ。そんなに笑われると恥ずかしいんですが、もう寝顔見られてるからなにも言えまい。下を向いていると悪い悪い、と頭を撫でられる。うわー、ペンギンさんに頭撫でられてる!!恥ずかしくなってお風呂借ります、とローさんに用意してもらった服を持って部屋から飛びだす。傷が痛い…馬鹿私っ。

「…風呂の場所知ってるのか?」


-


私は風呂の場所知らなかった。そしてさっきから視線が痛い。あれが悪魔か?とかガキじゃねぇか、とか周りがうるさくて居心地が悪い。ガキで悪かったな。とりあえずどこか行かないとと思ったら甲板にでた。360度海だ。青、青、青。この船は潜水艦だから海が見れたのはラッキーかもしれない。太陽が反射して光っている。綺麗だな、と手すりに手をついて遠くまで見る、うわー。

『スッゴい…。』

「おい、そんなに乗り出すと落ちるぞ。」

『うわっ!!』

「っ!!」

いきなりの声にびっくりして手すりの手が滑る。重力に逆らえず落ちていく体に落ちると目をつぶった時に海に落ちる前に誰かの腕が腰に回って引っ張ってくれた。振り返ればペンギンさんが呆れたように立っていた。

『あー…、びっくりした。あ、ペンギンさん。ありがとうございます。』

「…はぁ。」

『え、ため息?ため息ついちゃいます?』

「能力者なんだから泳げないんだろ?目が離せないな、名前は。」

『(あ、笑った。かっこいいな。いやぁ、ハートの海賊団にきてよかった)すみません。』

「謝るな、無事で良かった。で、風呂は行けなかったんだな。」

『いや、場所知らないんですよね。残念な事に、はい。』

「来い。船内も案内する。」

『いや、なんかスミマセン。』

「ほんと謝ってばかりだな。気にするな。」

フッと笑う彼はまだ完全に心を許していないのだろうがペンギンさんって面倒見がよくて結構話しやすいな。きっともてるんだろうけどそういうの断りそう。さりげなくドアをあけたり傷は大丈夫か?とか聞いてくるあたり、

『ふふっ。』

「?なんで笑うんだ?」

『ペンギンさんっていい人だなぁ、と思いまして。』

「海賊だぞ?」

『関係ありませんよ。海賊が皆悪いって訳じゃないですし。それにペンギンさんって面倒見いいから頼りたくなるってか安心します。』

「そうか。そういえば名前はなんの専属なんだ?能力者ならやっぱり戦闘員なのか?」

『…ペンギンさんは私が戦えるように見えるんですかっ!?私自分でどうやって羽出していいかもわからないんですから。』

「…本当に能力者か?」

『…まぁ、それは置いといて。私海賊になってませんよ。考え中です。』

「それは楽しみだな。」

彼の隣は安心する。
(そんな事言われたら入るざるおえないじゃないですか)
(フッ)
(計算っ!?)




  
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