カナリアは今日も歌う


仲間が死んだ。といっても飼っていた小さな小鳥が死んだだけだった。俺たちにとってはたかだがカナリアでしかなかったがそれを大切に部屋で可愛がっていた名前にとっては酷く辛いことみたいだ。落ち着いたかと思ったらベポをみた瞬間また泣いて部屋に閉じこもってしまったのだ。

「動物でごめんなさい。」

「…だから俺はペットなんて飼うなって言っただろうが。どうすんだよ、あいつがいないと空気がよどむ。」

「それ俺たちにむさくるしいっていってるんですかキャプテン。でも確かに毎日名前の泣き顔みてると可哀想になるよな。」

「でもシャチとバンダナ最初あれはあれで萌える、とかそそられるって言ってなかった?キャプテンどういう意味?」

「ベポ!余計なこという、おーい。ペンギンさーん俺の喉にナイフが刺さりそうですよ…、やばい!目がまじだ!悪かったって!怒んなよ!」

「自分の女をそういう目で見られて怒らないほうがどうかしてる。」

「悪かったって!でもまじで早く元気づけにいけよ!お前の役割だろ!」

首元からナイフをどかせば安心したように一息つくシャチに蹴りをくらわせてから名前の部屋にむかう。全く不謹慎なやつらだ。海賊だから仕方ないか、と思いながら彼女の部屋のドアを叩く。返事はないが入るぞ、と一言いってドアノブをまわせば鍵はかかってなかった。入ってもいいという事だ。

「名前、」

『心配掛けてごめんなさい、ベポをみたら思い出しちゃって。もう大丈夫だからっ。』

「全然大丈夫そうじゃないけどな。…名前の悲しそうな顔をみると俺まで辛い。それに毎朝カナリアと一緒に歌う声で目覚めるのが日課だったのに綺麗な声が聞こえないのも寂しい。好きだったのに、」

『聞こえてたの!?』

「部屋が隣だからな。俺以外聞こえてないからいいだろ。それに名前がそんなんだと次は俺が死ぬかもしれないな。」

『ど、どうして、』

「好きな女がずっと泣いていて心配でご飯も喉を通らないし眠れないんだ。このままだと俺は衰弱していつか死ぬな。すぐではないがでも自殺だってありうるだろ。」

『駄目!』

確かに心配で食事の量は減ったが死ぬわけない。彼女に俺がどういう思いかしってほしかっただけだ。しかもシャチが欲情している、ってことは他の奴らもそうだということだ。イライラする。彼女の目元にたまった涙を舌ですくいそのままおりて唇を貪る。ベットに押し倒すと腕の中でもがく。

『ペ、ペンギン、』

「あと俺は可愛い彼女が部屋にこもってばかりで俺を相手にしてくれずご無沙汰で、しかもいつも他の男に隙ばかりみせてイラついている。どう責任とるんだ。」

『え、ちょっと、ひゃ!』

「カナリアみたいに鳴いてくれても、いつもみたく泣いてくれても俺は構わない。どうする?このまま部屋に引きこもる気なら俺がずっと側にいてやる。寂しくないようにな。」

『…それはそれで魅力的な提案だけど明日から普通に過ごす。心配かけてごめんなさい。あとありがとう。側にいるってわかって凄く安心した。だからもうどいていいよ。』

「誰がどくといった。いっただろ。俺はいらついているし名前がずっとカナリアのことばかりで嫉妬しているんだ。それから他のクルーにも見せつけなきゃいけないし。まぁ、夜は長い。今泣いたところで変わらないだろ。」

『っ、』

するすると手を伸ばすとびくりとして顔を赤くさせる。ああ、泣いてるよりこの表情の方がずっと好きだ。次の日小さな歌声で目を覚ます。小鳥はいないけど綺麗な声が俺の目覚めと幸せを運んでくれる。彼女が恥ずかしそうに俺にほほ笑んだ。やはりこの方がずっといい。腰を引きよせ小さくキスをした。




  
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