05

あの後真っ赤になった彼女はフリーズしてしまった。顔を赤くして俺を見上げる顔とか、ポニーテールで晒された首筋とか。少し汗ばんだ肌とか色々ヤバくて外という事も忘れてがっつきそうになるのを抑える。とりあえずコンビニ行かね?と言えば我にかえってくれた。

「おせぇーよ。一体どこまで買いに行ってたんだよ。」

「迷子になったのか三之助!」

「名前ちゃんが一緒なんだからそんな事あるわけねぇだろ。宿題終わった?」

「勿論。待ちくたびれたよー。あれ、名前。どうしたの?」

『あ、あの私っ。今日は帰りますね、御機嫌よう!』

「御機嫌ようって、いつも使わない癖に。ってかアイス忘れてるんだけどー!どうすんのさ、コレ。…三之助、なにしたの。まさか手なんて出してないよね!」

「お、落ち着けって数馬!」

「だからお前に行かせたくなかったんだよ!」

「三之助、お前に理性ってものはないのか。これだからいけどん野郎が集まる部活は…。」

「最低だぞ三之助!」

待て待て、俺は手は出してない。そりゃ勿論出したかったけども、そこは我慢したとも。つか、藤内はさりげなく俺の部活を貶しているぞ。まぁ、七松先輩がいけいけどんどんで押し倒せ!といったからぐいぐいここまで来てみたけども。その結果逃げられたけども。

「手なんか出してねぇよ。」

「本当に?じゃあなんで急に帰った訳。」

「告白したから?」

「はぁ!?馬鹿なんじゃないの!出会って何日だと思ってんだよ。」

「出会った時から数えたらもう1年半だろ!」

「でもまともに話してこうやって会えるようになってからまだ1週間もたってないだろ!」

「三之助にしてはよく我慢した方だと僕は思うけど。ほら、男は勢いも大事だし!」

「さすが左門!」

「迷子は黙ってて。もー、男が苦手だから徐々にいくって言ってたじゃないか!」

「そうだけど、予想以上に可愛くて。可愛い名前ちゃんが悪いと思います!」

冷たい目で見てくる数馬と藤内。数馬と知り合ってから見かけるようになった彼女。挨拶しては逃げてしまう彼女を目で追うようになったのはいつからか。もっと話したい、知りたい。そう思ってようやくここまで来た。

「大体ここまで来るまで俺は大人しく待った方だろ?高校1年生の時から気になってたんだぜ?」

「三之助が一目ぼれかもしれない、って言った時はまじで頭うったかと思ったけどな。」

「数馬が男が苦手で人見知りな所もあるから待ってくれ、って言ったんだろ。それでこうして話せるようになったからアタックしたのに。」

「だからって展開が早すぎるよ!」

「しょうがないだろ!今までは漠然と好きかも知れない、だったけどさ。喋ったりしたら確信に変わっちゃったんだから。この子が好きだなぁ、って。わかったからにはアタックあるのみだ。」

「それで逃げられちゃ意味ないけどな!」

「左門の言う通りだな。」

「どーしましょう、数馬くん。」

「しるか!大体幼馴染が好き、なんて僕は気まずいんだから。なんだか僕のお姉ちゃんを好きになったんだけど、的な。まぁ、ああみえてしっかりしてるし約束した夏休みの予定をすっぽかすような奴じゃないよ。」

「よかった。でもまぁ、言ってしまったものは仕方ない。俺はこれからアタックしていくからよろしく!」

「つーか、三之助。去年から気になってました、って言ったのか?」

「え、言ってないけど。」

「それって滅茶苦茶チャラい奴と捉えられてねぇか?1週間たらずで告白された、って。お前は見た目が元々遊び人見たいなんだからよぉ。」

「じゃあそもそも告白を本気と取ってもらえないかもね。」

まじかよ!なんで俺そんな信用ないわけ!?ちゃらくなんてない、と言い張りたいっ。髪の毛結んでたりメッシュ入れてるのは姉ちゃんが美容師だからだ。ピアスを片耳開けたのは七松先輩に憧れて真似した。だから別に遊んでるとかじゃないんだけど。っていうか部活で死んでるから遊ぶ暇ないし。

「俺ってそんなにチャラくないだろ!」

「そうかもしれないけどさぁ。本能的に生きすぎるんだよ、これだからいけどんは。立花先輩みたく周りから固めてスマートにやればいいのに。」

「それの方がタチ悪くね?」

「とりあえず誤解を解いた方がいんじゃねえか?よくわかんねぇけど、はっきりさせたほうが俺はいいと思うけどな。なんなら家隣だし連れてくぞ?」

「作兵衛、隣なんだから俺は1人で行けるって。」

「行けねえから困ってんだよ俺は!」

「とりあえず前進あるのみだ、三之助!」

「おう!」

左門に背中を押され数馬が止める声も無視して家を飛び出す。勢いでチャイムを鳴らしたけどこれ親が出てきたらどうしようか。なんだか立派な柵がすげぇ威圧感だしてる。まぁ、胸くらいしかないし開けようと思えば開けれるんだけどさ。いつも思ってたけどオシャレな家だよなぁ。うわ、今更緊張してきた。どうしようか、と考えていたらおずおず名前ちゃんが出てきた。

「えーっと、そんなに怯えなくても。」

『あ、ごめんなさいっ。』

「あの、そこでいいから聞いてください。俺は本気で名前ちゃんが好きなんだ。それから急に告白されて戸惑ってるかもしれないけど俺1年前位からずっと見てたんだ。ずっと話したいって思ってて今こうして遊んでる事とか嬉しいんだけど、やっぱり急すぎた?」

『え、えっと、1年前?』

「そう。ここで話してると名前ちゃんが通って挨拶してくれるじゃん。いい子だなぁ、って思っててさ。それから部屋からピアノの音聞こえて凄く上手だな、って思ってたり。なんかそういう些細なとこから気になり始めてもっと話してみたいって思ったんだ。だからえっとー、俺にチャンスをくれない?俺の事知ってから返事を聞いてもいいかな?」

『ピアノ、聞いてたんだ。恥ずかしいっ。』

「なんで?すっごい綺麗な音色で俺好きだけど。名前ちゃんっぽいよ。」

『三之助君は私を知らないから、』

「じゃあお互い知っていくってのはどう?夏休み、いっぱい遊んでお互いを知って行こう。それならいい?俺も名前ちゃんの事もっと知りたいんだけど。」

『そ、それなら。』

「本当に!?」

私も楽しみにしてたから、とはにかみながら近づいてきてくれた。可愛いなぁ、その顔。柵一枚の距離がもどかしい。LineのIDを教え合って連絡するね、と笑えば照れたように視線をそらす。そういうのが一々ツボだ。絶対惚れさせてみせるから、と柵から少し上半身を乗り出しその白いほっぺにキスした。馬鹿!と言って家に逃げた彼女は可愛いかった。

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