提案

さて、真選組に拉致られました。左の腕をガッシリとトシに掴まれています。私の知ってるトシはこんな大胆な行動はしないんだが、私が知らなかっただけみたいだ。堅物だと思っていたのに案外簡単に私の真選組入隊を許したし。銀時との張り合うとなんだか子供みたいになる人だ。

『トシ…、離していいよ。逃げないから。私が何か悪いことしたみたいじゃない。』

「いや、お前はテラスから飛び降りる奴だからな。車の中だとしても油断ならねえ。お前何するかわからねえし。」

『わかるわ!!総悟君!車飛ばし過ぎ!!ちょっ!警察でしょ!!何違反してんの!?タバコ買いに行った後になんで運転変わるのよっ。トシの方が安全運転でよかったのにっ。』

「違反が怖くて警察やってられないでさァ。それに警察の前に1人の男なんで。土方の野郎の方がいいなんて本当に名前は俺の心に対応心を燃やすのが上手いねィ。」

「無駄に格好いいな…。万事屋が追ってきてる。よほど名前が大切みてーだな。」

『対抗心とかいらないし!っていうかあっちスクーターでしょ!?追いつける訳ないんだからいいよっ。安全運転第一!』

「いいねィ。その方が奪いがいがありまさァ。」

あー、あの過保護め。いい加減子離れしてほしい。子ではないが。真選組にいくのはそういう意味ではいいかもしれない。なーんて考えてたら総悟に腕を引っ張られた。どうやら屯所に着いたみたいだ。なんかヤケに隊士の視線が痛い。っていうかまた戻ってきたとか。

「お前退屈しのぎにあのパーティーに来たんだろ?そんなに暇ならその退屈しのぎ真選組ですりゃーいいだろ。こっちだってただの女入れる気はねェ。お前の仕事ぶり聞いて引き入れてぇんだ。」

「見廻り組なんざにとられちゃかなわねぇですからね。先に唾つけときたいんでさァ。」

『まぁ、確かにね。上からの指令も受けやすいし案外いいんだけどさぁ。』

「ちょっと待つネェェ!!」

「そうだ!!何誘惑してんだァァ!名前ものせられてんじゃねぇ!!」

『銀時。お邪魔しますぐらい言いなさい。あと牛乳のみな。苺牛乳じゃなくてね。今日切れすぎじゃないの?』

「名前ー、万事屋にきてヨ!!やっぱりサドに負けるなんてなんだか嫌ネ。お姉さんなら私の側にいなくちゃヨ!」

「あぁ。こんなとこに置くならうちに来い。いつでも銀さんに会えるぞ。」

『あんまり嬉しくない…。』

「じゃあ、甘いもの食べ放題だぞ!!」

「銀ちゃん。食べ放題なんて聞いてないアルよ。私昨日も豆パンだったネ。お腹すいたヨ。」

『銀時、あんたまじでプーか。神楽ちゃんが可哀想だよ。こんな育ち盛りの子に。』

「仕事がないだけです!!」

『それをプー太郎って言うんだろうが。』

神楽ちゃんが可哀想になってきた。じゃあ、銀時が真選組に入ればいいじゃん、と提案したら皆から却下と言った。凄くいい案だと思うんだけどな。というかお前剣術できないだろ、と銀時がいい所をついた。確かに私は潜入と人をだますのは得意だけど戦いは苦手だ。

「誰も戦えなんて言ってねぇーでさァ。名前の得意分野をやってもらいまさァ。」

『得意分野って…スリ?』

「あ、使えた?あの技。」

「教えたのお前かァァ!!」

「スパイでさァ。名前には観察になってもらいまさァ。変装して侵入して情報掴む、得意分野ですよねィ?」

「さっきも言ったろ。上からどんな以来を受けてたか聞いた。それを頼むから仕事で発揮してくれ。」

『観察かぁ。今までの仕事と変わらんね。まぁ、政府から受けるのも真選組から受けるのもたいして変わりないからいいけど。』

「変わらないなら入らなくていいだろ!」

「でも、真選組に所属すれば移動はなくなりまさァ。もうふらふらしなくていいのは旦那も嬉しいだろィ。いつでにも会えまさァ。」

「まぁな…。」

「チャイナ。真選組に入らないと名前はどこかにまた仕事でいきまさァ。会えなくなるんだぜ。」

「そんなの嫌ネ!!」

『…トシ、総悟は交渉係がいいと思うわ。外交とかそういうのないの?』

「作るか。いや、なにか破壊して終わるな…。後始末が増えるだけだ。」

「…いまいち納得しねーな。なんか丸め込まれてるって言うか、」

「いつでも会いにくればいいだろ!いや、屯所にはくんな。こっちとしてもこいつ能力は買ってんだ。率先力になる。」

「誰がこんなとこにくるかァァ!!おい、名前。」

グイッと腕を引っ張られ銀時に室内の隅に連れてかれる。なんなんだ一体。まじで入る気かよ、と聞かれる。そんなに身を案じてくれているのだろうか。戦いは苦手でもやり方は色々ある。結構危ない橋も今まで渡ってきた。大丈夫だよ、と言えばそこじゃない、と怒られトシ達に聞こえない様にボソッと言われた。

「真選組に入るって事は攘夷とかめんどくせー奴等と関わるんだぜ。わかってんのかよ、お前。…桂とか高杉とかにって事だろ。」

『ああ!捕まえなきゃだしね。』

「そんなの銀さんは認めませーん!!」

「うわっ!!いきなりなんだよ!!」

『はい!!私真選組の観察やっちゃいます!!よろしくお願いしまーす。』

「はーい、決定ー。名前。これからよろしくでさァ。」

「ゆ、許しません!!なんで逆に入るんだよ!」

「旦那ー、面倒くさいでさァ。」

ガクガクと肩をゆさられる。ああああ会いにいくから!!と噛み噛みになりながら言う。週に7回な!という天パにそれ1週間じゃん、と呟く。だって晋助とか会えなさそうだし。自分で潜入して近づくのもいいけどここに居たほうが勝手に情報来るって事だ。楽できる所はしようぜ。

『日曜日は銀時の家に泊まる。週2回は会いにいく。』

「ご飯作ってくれる?」

『あぁ、作るよ。』

「遊びにきてくれる?」

『はいはい、行くよ。』

「添い寝してくれ、」

『甘ったれんな。』

「はい、すみません。」

名前、本当に行っちゃうアルか?と神楽ちゃんが言う。な、なんて可愛いんだ。あ、どうしよう。私って結構優柔不断。ちょっと心が揺らいでいたら総悟が私の腕を引っ張った。行かねェでくださせェ、なんて上目づかいをされる。ノックアウト!そのまま抱きしめる。

『可愛い、私総悟の傍にいるよ。』

「おいィイイイ!」

「なんです?嫉妬ですかィ?」

「何してんのォォ!!嫁入り前の子がホイホイ抱きつくんじゃありません!」

『お父さんか。』

「総悟ォォ!!調子のってんじゃねェ!なにかわいこぶってんだ!」

「なんですかィ。羨ましかったんですかィ?ムッツリ土方。死ねよ。」

「ホチャァ!!てめーが死ね、サド!!」

「てめぇ、いい加減帰れよ。」

「別にいたくている訳じゃありませんー。」

「上等だ…。表でろ。」

『退君、私観察だってさ。よろしくね。…チッ、こんなジミーと一緒かよ。』

「今の今まで優しかったのにィィ!ジミーって言わないで!!」

『あ、新八君。妙ちゃんに遊びに行くって伝えてね。』

「はい。そういえばあの卵焼き食べたのは本当ですか?よく平気でしたね。」

『あの可哀想な卵ね。口に含んでトイレに流したよ。食べてない、飲んでない。あ、ちょっとここお願いね。』

「名前ちゃん?どこ行くの?」

『あー、えっとね。ちょっと、そこらへんのー…。どこでもドアに。気にすんな、ははは。』

「そんなのないから!」

ジミーズのツッコミを背に私は路地裏の攘夷志士のたまり場にいった。柄の悪い男共がなんか絡んできたけど色々やる。やったことは企業秘密で言えないけど。1人を捕まえ誘導作戦をしたらすぐに奴の居場所が分かった。うっとおしいその長髪をみつけ声をかける。

『小太郎!!』

「名前!何をしている!!危ないだろう!?こんな所で。なぜ場所がわかった?」

『私の得意分野は情報収集ですぜ。ってか山田君に聞いたらアッサリ吐いたよ。警戒心ないね。』

「山田ァァ!!」

『ねぇ、そのペンギンみたいなやつなに。』

「ペンギンじゃない、エリザベスだ。それより名前、その格好はどうした。」

『あ、そういえばそうだった。妙ちゃんに借りたんだ。それより伝えたい事があって。』

「名前はいつも突然だからな。なにかあったのか?いつも驚かされてるからな。なんでもドーンとこい。多少の事じゃ驚かないぞ。」

『私銀時と結婚します。』

「…正気か?」

『やっぱそういう反応だよね。あ、冗談だから。私、真選組に入ったよ。』

「なに!?なんでやつらなんかの!?」

『はい。ここで提案です。日曜日は銀時に家にいるから会いにきてね。日曜日以外は捕まえるから逃げてね。』

「まじでェェ!!」

『あ、小太郎の事は真選組に言わないから安心して。日曜日以外に会うなよー。じゃあね。』

私はそれだけ言うと窓から飛び降りた。飛び降りんの好きなんだ。こう胃がひゅって感じ?このスリルがやめられない。だからきっと私は潜入とか変装とかして人を騙すのだろう。そうでもしないとこの身体の奥に居る獣を上手くセーブできない。その獣が小太郎と晋助の場合政府に盾を突いて今の形なのだろう。走り出した時に後ろから声がかけられて振り向く。

「名前!遊びに行くがバッタリ会ったら敵だぞ!!後真選組には気をつけろよ!!」

『うん!!』

「あ、着物似合ってるぞ。あと、今も昔も名前は俺たちの仲間だ。例え真選組でもな。」

『…うん!』

ありがとう、小太郎。敵になったって見捨てないでくれる。笑顔で手を振る。そんな大事な人たちに会いたいから日曜日は絶対に休む。我ながらいい提案をしたな。政府の仕事をするのと真選組に入るのとは少し訳が違うし色々気をつけよう。

「名前!どこ行ってたネ!!」

「探しただろーが。」

『あー、えっとね。妊婦さんを助けたってベタ?あー、本当の事言うとジャスタウェイの置物が売ってて1個買おうかなって思ったら本物がまじっててバーン的な?」

「嘘つけェェ!!おま、無傷じゃねーか!」

『私はテラスから飛び降りる子よ。スーパーマン並みに頑丈なの。そんなんで傷がつくわけないでしょうが馬鹿たれ。』

「格好いーアル!!」

『ありがとう。騙される子初めてみた…。』

「ピュアだから。なんでも信じるんだろ子供だし。」

「あ、昼ドラの再放送が始まるネ!幸子が浮気相手と駆け落ちするシーンは見逃せないネ!!」

『…どこがピュア?』

「ま、頑張れよ。」
 
話をそらしたなと思ったがグシャグシャと髪を撫でる銀時は昔と何も変わってなくて安心した。彼を見上げた時に見えた空はどんよりとしていて明日は雨か、と思う。だけど太陽が少しみえていて、ちょっと心が弾んだ。その光が眩しく、彼らみたいだなと思う。彼らを追いかける側にしろ会いたい、なんて私のわがままかもしれないけど。


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