07

すぐ済む、と言ったのにしばらく出てこない私たちにデイダラは痺れをきらしたようだ。そしてそのドアを叩く音がうるさくて、サソリさんも部屋から文句を言いに出て来たらしい。私はこの気持ちをかき消そうと努力しているのに踏みにじるイタチがむかつく。しかし頬の赤い紅葉に少し心は晴れた。男前が上がったな、とサソリさんに笑われイタチは微妙な顔をして去っていった。私の髪を撫でるのを忘れなく。それがいつものさよなら、またねの合図。

『(もうまたね、はないけど)ごめん、デイダラ。遅くなった。』

「餓鬼を置いて倉庫で盛ってるなんてやるじゃねえか。」

『そんなわけないでしょう。そしたら今頃イタチの頬は赤くないです。』

「へぇ、じゃあ振ったのか。」

『…違います。とにかくうるさくしたのはすみません。デイダラ、私の隣の部屋が空いてる。そこでもいい?』

「ああ、うん。ここじゃなくてイタチの近くじゃなきゃどこでもいいぜ。」

「名前。後で部屋に来い。」

『なにか用でもありますか?ついでにデイダラにサソリさんの作品を見せたいんですけど。私が褒めたら是非見たいって、』

「同じ芸術家として興味があるぞ、うん。」

「お前のは爆発だろ。一瞬の美なんて俺とは真逆だ。俺は永久の美こそが芸術だと思ってる。」

「なんだと。永久なんて、」

『ちょいちょい。長くなりそうだからそれは任務で暇なときに討論してください。どうせ2人で長々一緒にいることになるんですから。とりあえず部屋に案内してから戻ります。2人の芸術感性の末、作品が見たいならご勝手に。』

「俺らに八つ当たりすんな。」

「そうだぜ、うん。」

『しなてないです。』

イタチとはなにかあるとは思ってがな、とヒルコの姿で笑う。俺も怪しいと思うぞ、うんとデイダラ。なに意気投合してんのこいつら。仲良くやってくれるのはいいけど私のをネタにするのはやめていただきたい。デイダラを部屋に案内して、窓を開ける。ずいぶん使われてなかったみたいで埃臭い。外を見ればイタチが出かけるところだったらしく優しく笑って小さく手を振っていた。叩いた罪悪感もあり少しだけ、ほんの少しだけ振り返して背を向けた。

『埃臭いけど我慢してね。お布団は、一度干した方がいいね。今日は軽く掃除して、明日布団干してシーツは洗濯しとく。今日は私の部屋で寝て。』

「はぁ!?な、なに言ってんだよっ。同じ部屋でなんか寝れるわけないだろ、うんっ。」

『私は医療忍者だから部屋と別に医務室的な部屋があるの。そこに簡易ベットもあるから、続き部屋だけどドアはあるよ。』

「な、なんだそうか。」

『ふふふ、思春期の君には悪い事したね。なんなら添い寝でもいいけど。』

「思春期ってっ!?そんなに年変わらないだろ、うん!大体オイラは別に意識なんてっ、笑うんじゃねぇ!」

『ごめん、ごめん。可愛いな、と思っただけ。ここは年上ばかりだし、下のイタチも全然年下っぽくないしね。』

「名前はイタチより年上なのか。じゃあ案外オイラより年上だな。」

『まぁね。あの人は天才だったから。私が同い年か年下で同期になるって方があり得ない。2つか3つ、くらい上だったはず。昔から大人びてたから、年下っていう感覚ないけどね。』

「ふーん。ますますむかつく野郎だな。」

『その通り。じゃあ、掃除して寝たいときに隣の部屋に来ていいから。私は呼び出し食らったからサソリさんのとこにいってくるよ。作品は今度見せてもらいなよ。』

「今日じゃダメなのか?うん。」

『体に出てなくても新しい生活だもの。疲れてるはずだし、掃除が先。急に任務が入るかもしれないから休めるときに休んで。私の事は気にしないで部屋に勝手にはいっていいからね。』

「おう、ありがとうな。」

にか、っと笑った顔は年相応で可愛らしい。思わず頭を撫でればその手をはたかれたけど。子ども扱いすんなよ、うん!と睨まれてしまった。思春期って難しいな。サソリさんの部屋に行けばヒルコのままだったが私を見て中から出てきた。デイダラを連れてくると思っていたのかもしれない。何の用か、と聞けば小さく笑われた。この人の前で私はあまり嘘がつけない。それは感情のでない人形の瞳だからかもしれない。なにも映らない無の前には誤魔化してもお見通しだと言われている気がする。

「死にたい、っていってた理由はイタチか?」

『そんなこと聞くためにわざわざ呼んだなんて随分暇なんですね。』

「暇じゃあねぇが、俺は食事も睡眠もいらねぇからな。お前たちより少し時間を無駄にしたって構いやしないんだよ。で、今日の様子から見ると復縁を迫られたと。」

『そうですね、多分。』

「へぇ、てっきり否定するかと思ったが。」

『まぁ、サソリさんに知られても困る事はないですし。復縁もしませんし、どうでもいいので。』

「…俺にはまだイタチが好きだ、って顔に見えるけどな。」

『…好きだから付き合うとか、一緒にいたいっていう幼い恋心は終わったんです。好きだから一緒に居れないし、わざと嫌われるようにしたり思いを断ち切ったりすることも必要かと。』

「くく、否定しないのか。お前もイタチも報われねぇな。お前ら頭いいくせに馬鹿だからな。」

『イタチはそうですよ。頭良くて優しくて馬鹿なんです。だから私は少しでもそんなイタチに似合うような女になりたくて、わかったふりしてる馬鹿なただの女ですよ。イタチとは色々あって好きですし、支えたいと思いますが復縁はしません。違う形で彼を支えます。こんなこと絶対言ってやらないけど。言わないのが仕返し、みたいなもんで。』

「それを俺に言っていいのか。」

『サソリさんに嘘はつけないんで。それに餓鬼の恋愛のごたごたなんてわざわざ首突っ込む性格でもないでしょう。興味もないくせになんで聞いたんです?』

「興味はある。お前のことだ。」

言っている意味がわからなかった。私よりほんの少し高い背が私を見つめる。相変わらず綺麗な瞳には感情は映らない。綺麗な肌も陶器のように白いが温度はない。それと同じ綺麗な指が私の輪郭を優しく撫ぜた。思わずびくり、と肩を震わせれば彼はふっ、と小さく笑った。この人はこんな顔をする人だっただろうか。人形のくせに表情筋が柔らかい事で。さすが人傀儡だな。今度は唇をなぞられ、本気で心配になる。

『熱でもあるんですか、サソリさん。』

「傀儡が風邪なんか引くかよ。」

『じゃあなんですか。優しいとかまじで怖いんでやめてくださいよ。サソリさん顔綺麗なんで乙女心がぐらつきます。』

「いいじゃねぇか、ぐらつけば。」

『いやですよ、人形相手に。それにサソリさんに万が一恋しても無謀ってわかってるのに行くなんてそれこそ馬鹿ですよ。』

「この前は熱烈なプロポーズをしてくれたのに随分酷い事いうじゃねぇか。それに優しくしてやるって言っただろ。もしあの時の条件を俺が飲んだら名前は俺のもんになるんだろ。だから傷つけるな、と言ったはずだ。」

『ああ、言われましたね。』

「だからお前の今後には俺も興味がある。」

『素直に心配した、と言えないんですか。ツンデレですか、貴方。まぁ、確かにサソリさんって色々こじらせてそうですもんね。』

「失礼な事いってんじゃねぇ。誰がこじらせてんだよ。俺が心配してんのはその身体だ、勘違いすんな。イタチに傷つけられたら困るだろうが。」

『イタチは私に手を挙げませんよ。あー、多分。喧嘩とかでは、任務とかでは別ですけど。(殺されかけたくせに庇うのも変な話だが、あれはイタチの意志ではないし)』

「ああ、イタチはお前には甘そうだからな。俺が心配してんのはそっちじゃねぇぜ、名前。お前らが今後そういう仲になったらこっちは傷つくだろ。」

お腹の下あたりを指で押され思わず距離をとる、がチャクラ糸のせいで無理だった。動けないことをいい事に子宮らへんをにやにやしながらなぞる。そういう意味か、つか最低だなこの人。セクハラ親父!と叫べば綺麗な顔が歪んだ。心配してやってるんだぜ、と今度はスカートの中に手を忍ばせ下着の上からそこをなぞった。ぞわぞわと背中になにかが走る。ここが傷つくことをな、と低温ボイスが耳をくすぐり膣の入り口を指で押される。下着がなければ確実に入ってる。

『っ、ちょ、やめて、』

「なんだ、感じてんのか?イタチとよりなんか戻ったらここもだが、この綺麗な肌にも赤い印を刻むだろうよ。俺の、だってな。ああ見えてあいつは独占欲が強そうだ。そんなことされてみろ、俺のコレクションになったときに気分が悪い。」

『…だったら口で言えばいいのに。触らないでください、ロリコンですかあんた。』

「ほぉ。この体制で挑発するなんざいい度胸じゃねぇか名前。よっぽど俺に犯されたいらしい。下着越しじゃなくてまじで突いてやろうか。」

『傷つけんの嫌だったんじゃないんですかっ、』

「他人にはな。俺のコレクションだ、俺がどうしようか勝手だろうよ。」

『まだサソリさんのコレクションじゃないし、あれは考えておいてくださいという話でした!そもそもサソリさんは傀儡ですよねっ。そんな機能あるんですかっ?!』

「ねぇけど。まぁ、女を犯す方法なんていくらでもあるしな。俺に感情はねぇが、殺したいとかコレクションにしたいとかお前を泣かしたいとか。そういう欲求はあるな。」

『…それ欲求と言う名の感情では?と、いうかさっきからなぞるのやめてくださいっ、』

「せいぜいいい声でなけよ、名前。」

まじか、まじなのか。イタチにも言ったが処女ではない。追われる身となってから、匿ってもらうためにそういう事をしたこともある。生娘じゃないし恥じらう乙女でもない。だからといって温度のない傀儡と、しかもサソリさんとなんてごめんだ。太ももに滑る手、服をはごうとする指には温度はないのに。喋る言葉も私を揺さぶる表情も人のものだ。人形というなら、まだ無機質の玩具の方がましだ。恥ずかしくて、混乱し涙を流した私にサソリさんはかぶりつくようなキスをした。その表情が感情を持った人間の様で私はますます混乱した。


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