06

新しく入ったデイダラを案内する。ゼツさんに案内された時を思い出し、時が経つ速さとここに馴染んでいる自分がいて嫌気がさした。結局私はイタチとも話しているし、心配もしている。仲間だから、仲間として。そう割り切れてないのはお互いなのか、私だけなのか。関わらない方がいいとわかっているのに気になってしまう。恋する乙女か私は。

『デイダラ…、まじでイタチを痛い目に合わせてくれ。』

「?おう、頑張るけどさ。そんなに応援されるのも変な感じだな。本当は仲悪いのか、うん?」

『わ、悪かないけど…。良くもしたくないのよ。だから仲良くなる前にどうにかしてほしいというか、』

「良くしたくない…。ははーん、イタチが好きなのか。これ以上好きなる前に手を打ちたいわけだな、うん。確かに顔は整ってるかもしれねぇが、」

『断じて違う。次その話題だしたら私がデイダラを殺すことになるからね。』

「名前は正式な暁のメンバーじゃないんだろ?ここ来るときに聞いたぜ、指輪持ってるやつがメンバーだって、うん。そんな奴にオイラが負けるかよ。」

『そりゃあ、準メンバーですけど。ああ、そのごつい指輪。確かにサソリさんの部下とかみるけどアジトにはいないし。なるほど…。じゃあ私別に彼らとマンセル組まされることはなかったってことか。』

「名前は誰の部下なんだ?あのおっさんか?」

『おっさん…。(確かにヒルコにしか会ってないけど)それ本人の前で言わないでよ。すぐ切れるからねあの人。まぁ、確かにデイダラからしたらおじさんかもだけど。そもそもサソリさんの部下とか、命がいくつあってもたりない。』

「何言ってんだ。俺は優しいだろうが。」

サソリさんの部屋を訪ねる前に彼に会ってしまった。そしてどこが優しいのだろうか。私が何度彼の尾の餌食になりかけたか。なにか頼まれて嫌だと逃げればチャクラの糸で捕まえるし。お前をかっているんだ、という誉め言葉はいいパシリだ、としか聞こえない。まぁ、最初よりはあたりが柔らかくなり私の逃げる避けるといったスキルもあがったけど。

『丁度いいところに。デイダラをサソリさんの部屋の隣にしたいんですけどいいですか?』

「右の部屋は俺の傀儡の部屋にしてるから無理だな。左は人体のホルマリン漬けだらけだが、それでいいならいいぞ。」

「ふざけるなよ、うん!そんな気味悪いとこで寝られるか!」

『というか勝手に空き部屋使ってるんですか。あ、しかもドアに結界張ってるし。』

「ああ、俺の部屋から壁に穴開けて繋げた。今まではいちいちドア使ってたがな。そのドアもいずれ壊すつもりだ。」

『壁に穴…。無理くりひとつの部屋にするなんて。この前部屋に入ったときはなかったですしね。じゃあこの目の前の部屋で。ここなんでしたっけ。』

「適当に倉庫として使ってるが、まぁどかせばいいだろ。大体なんでこの餓鬼を俺の近くにするんだ。」

『これから任務のこととか話し合うことが多いんですし。近い方がいいかと思って。』

「必要なことがあれば会いに来させればいい。大体任務で外にばかりいるだろうしな。」

「そんなに毛嫌いすることねぇだろ、うん。こっちだって陰険な口悪いおっさんの近くなんてごめんだぜ。」

「行儀が悪い餓鬼だな。やっぱりお前が俺と組め。」

『サソリさん。私指輪持ってないので。正式な暁メンバーでもないのにマンセルは組めませんよ!』

いい笑顔で言ってやればそれならマンセル+部下として来いと言われた。2人きりも嫌だがこの喧嘩に毎回巻き込まれるのも嫌だ。私が大人しくサソリさんの怒りに触れないようにしてもデイダラが怒らせたら意味ない。そして仲裁役、勘弁してくれ。薬の研究がある、と逃げれば舌打ちをした。あまり自分の身体をつかうなよ、と部屋に入ってく。案外心配してくれてるのかもしれない。

『行ってしまった。じゃあデイダラ、この部屋の荷物をどかして、』

「あんなこと言われた後でここを使うなんて絶対嫌だぞ、うん。」

『我儘か。まったくもう。』

「名前。子供のお守か、ご苦労だな。」

「誰が子供だ!」

「お前は入ってきたばかりなのだから文句を言わずに従え。それに任務の時以外関わらなければいい話だろう。部屋に籠ってれば別にどこだろうが変わらない。」

「俺は…、負けたからここに来たが!従う気も大人しくしてるつもりもねぇ!」

「面倒な奴だな。あまり名前に手間をかけさせるな。」

『イタチ、もしかして任務?後で、って言ったよね。すぐ終わるからちょっときて。』

「…また後で、」

『もうその手は通用しないから。デイダラすぐ終わるからそこで待ってて。』

「おい、名前。」

倉庫に入って扉を閉める。デイダラに聞こえないように防音の結界をはる。イタチが誰にも言わないということは知られたくないという事だ。適当に武器が入ってる箱に座らせ、身体をみる。脈を計り、身体に触れる。聴診器がないので手を胸に当てればその手を取られ抱きしめられる。すぐに距離を取ろうとするが力が強まっただけだった。

『…なんのつもり。』

「心配ない。ただの任務疲れだ。最近眼を使い過ぎただけだ、あまり気にするな。」

『イタチの気にするな、とか後で、とか嘘ってわかってるから。第一別に抱きしめなくていいんですけど。』

「…酷く傷ついているような顔をしていたからな。」

『イタチ、あんたがわからない。確かに私は貴方を好きだった。だけど殺された。泣いて好きだと、謝りながら殺してくれたのを覚えてる。好きで貴方がいないなら死んでもいいと自殺しようとした。真相を聞いて私の安全のために殺してくれたってわかったから。でも理由もなしに守られたのに腹がった。』

「名前、」

『知っていたらなにかできたかも、ってずっと泣きながら考えてた。なにもできなかったかもしれない。それでも一緒にいたかった。連れて行かないことなんてわかってる。それなら私はあの晩貴方に潔く殺されてたかった。真相が知りたくて醜く生に縋りついた。そしてサスケ君が生きてることを知った。私は選ばれなかったことが悲しくて、そして怒ってるの。私だけが貴方をこんなにも好きだったなんて、悔しくて馬鹿みたいだからっ。』

「違う!俺も好きだった!」

『っ、だったら、』

「すまない…、すまない。」

ぎゅうと抱きしめる腕に力が入った。優しい彼の嘘が私を蝕んでく。彼が私を殺したのは愛ゆえなのだと信じたくなってしまう。それが彼の本心なのかもしれないけどやめてほしい。別れ話をするなり酷い事をするなり、私から、私の中からイタチという存在を亡くしてほしかった。嫌いになってから里抜けしてほしかった。そうすれば私は彼を忘れて今頃木の葉で楽しく過ごしていたことだろう。

『ちゃんと、ちゃんと殺してくれさえすればっ…。』

「…ああ、そうだな。しかし名前が回復が早い特殊体質だとは聞いていない。どうして黙っていたんだ。」

『イタチが私に隠し事してる限り教えてなんかやんない。まだ隠し事してるのも知ってる。…とやかく聞くつもりはないわ。あの頃から貴方の嘘は始まってる。今更嘘が増えたところでどうってことない。ただあそこまでしたのに理由があるんだろうし無駄死にするようなことはやめて。体調が悪いなら私に見せなさい。』

「わかった。理由を、聞かないのか。」

『なに、聞いたら答えるわけ?信じないけど。』

「さっきの食事でも思ったが強くなったな。昔はそんな風に俺に言ったことはなかった。サソリさんの側にいて性格が移ったか?」

『冗談。少し会わないだけで女は変わるのよ。したたかにならざる負えない状況に置いたのはイタチよ。あの頃の純粋で可愛かった私はいないの。貴方の後を追っていた私はね。こうみえても綺麗じゃないのよ。生きるためならなんでもした、女って便利ね。』

「!名前、」

『…イタチだけがよかった。私に触れるのも、キスするのも、初めても。貴方が私を変えたの。だからもう私をこれ以上惑わせないで。心配もしてくれなくていい。暁のために私は貴方を治療する、それだけにして。』

「嫌だ。」

『イタチ、』

「もしもう一度…。もう一度会えたのなら、言おうと思ってた。それは俺が死んだ後であの世という物が存在したらだと思っていたが。名前が好きだと。もう離さないと。」

イタチの固い掌が私の頬を包んだ。手裏剣やクナイをたくさん練習して、豆が潰れて固くなった懐かしい手だ。優しい瞳が私を射抜く。唇が触れた。少しかさついた唇が。今まで何度も忘れようとしたこの匂いと温もり。いつも壊れ物を扱うように、此方を窺う様な優しい口付け。変わらなくてずっと求めていて涙が出た。自分もイタチに手を伸ばそうとした時、デイダラがドアを乱暴に叩いた。そこで現実にかえりイタチの頬を思いっきり叩いてやった。今更好きだなんて許してやるもんか。そう自分に言い聞かせた。




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