05

イタチが馬鹿みたいに優しい男だと知いる。私に今でも申し訳ないと思っていることもしっている。だからこそ私はあえてイタチにあの日の事を問うたことはない。同胞殺しの真実はしっていても私を殺した理由は知らない。粗方想像はつくのだけれど。彼の口からそれを今聞くのはよくないと勝手に思っている。そしてあの優しい男は私にまた嘘をついている。

『イタチ、ちょっとこっちに来て。』

「名前。悪いがこれから任務だ。帰ってきてからにしてくれないか。」

『すぐに終わるから。』

「サソリさんが待つのも待たされるのも嫌いなのを知っているだろう。」

「わかってんなら早くしろ。」

『先に行っててください。ヒルコの姿のサソリさんにならすぐに追いつくでしょうよ。そんなに早くしてほしいなら早く来てよ。』

「…すまない、名前。」

『逃げやがったな、あの野郎。』

サスケ君によくやっていたおでこを小突く仕草。そしてすぐに彼は消えた。それを追うようにサソリさんも歩いて行く。久々にそれをやられてなんだか泣きそうになった。最初より確実に距離が近くなった。それを私はどう扱えばいいか判断しかねていた。しかしイタチはずけずけと私に近寄ってきた。なのに私に近づかないときがある。今日は顔色がよくない、あいつなにか隠してる。

『…鬼鮫さん。イタチの事頼みました。』

「理由を聞かないのですか。」

『聞いたところで鬼鮫さんが私に話すとは思いません。イタチも易々とは話さないでしょう。しかしこの時点でもうほぼ確信してます。私は医療忍者としてここに来ました。私の力で治すとこまでは治しますよ。』

「それを聞いて安心しました。貴方たち2人は仲が良いのだか悪いのだか、よくわからないので。イタチさんは名前さんが好きみたいですけど。」

『…どうでしょうね。そんな気持ち、今も持ってるかはわからないですよ。』

「…おや。薄々感づいてはいましたがそういうご関係で?」

『昔のことですが。あまり言いふらすものでもないかと。イタチの事、本人が言わないという事は広めたくないのでしょう?このことも他言無用でお願いします。』

「私は口が堅いのでご安心を。」

『ばれてしまったらそれはそれでいいのですが。まぁ、皆さん知らない方がやりやすいでしょうし。引き留めてしまってすみません。サソリさんが怒るので早く行ってください。』

「はい。イタチさんはちゃんと見ておきますよ。」

鬼鮫さんにお辞儀をして見送る。否定しないということはやはり体調がよくないという事だ。写輪眼、あの目は体にも影響を与える。それほど優れた瞳だ。使い過ぎているのか、元々病気があるのか。なんにせよ私はできる限りの治療を彼にするだけだ。溜息をついて夕ご飯の支度にとりかかる。今日はサソリさんの相方がくる。3人はそれを迎えに行ったわけだが。

『こんな小さい子だとは思わなかった。』

「なんだと!喧嘩売ってんのか、うん!?」

『いや、だってサソリさんと組むからてっきり…。あ、おかえりなさい皆さん。怪我などないですか。』

「ああ、問題ない。」

「イタチさんの幻術ですぐでしたから。おやおや、今日は豪勢ですね。」

『好き嫌いもわからなかったし、歓迎会もかねて。イタチも鬼鮫さんも久々に帰ってきましたから。角都さんもいないから今がチャンスと思いましてね。』

「帳簿見たらばれるだろうが。」

『自分が食べれないからってそういうことを言う。ちゃんとサソリさんには別なものを用意しました。お金なら大丈夫です。この前薬草を取りに行ったらたまたま賞金首に出会って。いやぁ、運がよかったです。』

「そんな話聞いてないぞ。」

『イタチに報告する意味が分からない。大体今まで任務でいなかったでしょうよ。』

「そうか…。怪我はないか。」

『あっても自分で治せます。自分の心配だけしてなさい。』

怒られるイタチが珍しいのかサソリさんはにやにやしてみてる。鬼鮫さんは私たちの関係を知ったから微笑ましく。さっき来た彼は興味深々と言った感じでこちらを見ていた。10歳位だろうか、可愛い顔をしている。名前を名乗ってよろしくね、と笑顔でいえばデイダラだ、とそっぽを向かれた。打ち解けようと笑ってやったのにこの仕打ちとは。

『さ、冷めないうちに食べちゃってくださいな。』

「凄い量だな、うん。うまそうだ。」

『若いんだからいっぱいお食べ。任務になったらいつご飯食べれるかわからないし。サソリさんはご飯食べないから今後、ちゃんとしたご飯はアジトだけかもしれないよ。』

「まじかよ!食べなくてもいいのか、うん。」

「まぁな。忍者なら兵糧丸でもたべとけ。それで名前、俺にはなにがあんだ。くだらねぇもんだったら怒るぞ。」

『せっかく用意したのにそういう事いいますか。あげなくてもいいんですよ、別に。』

「名前さん、強くなりましたね。昔は怯えていたのに。」

『なんだか慣れてきました。』

「で、なんだ。寄こさないなら俺は部屋に戻るぞ。」

そういう割には手を差し出すようにヒルコの尾を出している。巻物をだせば器用にその尾が持って行った。賞金首だった奴の部下の死体だ。そこそこに強く、若く、いい男であった。素敵な人でしたよ、と笑えば4人がピクリと反応した。クズみたいな奴をサソリさんに渡しても芸術性を感じず人傀儡にはならないだろう。

「お前の好みをじっくりみて、傀儡にしてやるよ。寂しかったらその傀儡で可愛がってやろうか。」

『一般的な事を言っただけであって。私の好みは…、まぁいいです。お好きに使ってください。デイダラ君、口にあうかな。』

「へ。ああ、うまいぞ。里抜けてからろくなもん食べてなかったからな。久々にご飯、っていうものを食べた気がするぞ、うん。」

『そう、それはよかった。イタチもちゃんと食べてよ。』

「食べてる。賞金首の男は強かったのか?」

『私が大した怪我もせず倒せたからそうでもないんじゃないの。医療品と食材かったら少ししかお金が残らなかったし。』

「それは申し訳ない事しましたね。」

『いいんですよ。本当は全部角都さんに渡さなきゃいけないんですから。まぁ、どっちも必要経費ってことで。サソリさんも食べれればいいのに。このビーフシチュー凄く上手くいったんですよ。』

フン、と笑われてサソリさんは出て行ってしまった。ご馳走様、とイタチが行儀よく手を合わせた。後で部屋行くからね、とアイコンタクト(睨め)すれば肩をすくめた。仕方ない、と諦めてる様だ。まぁ、逃げたところでいつかは会うのだから遅かれ早かれってやつだ。多分イタチもそれをわかってるはずだ、逃げないだろう。皆が食べ終わり片づけをすませればそこにまだデイダラ君がいた。

『デイダラ君。』

「…オイラの方が年下だろ。デイダラでいいぞ、うん。俺も呼び捨てにするし。」

『そう。今日は疲れただろうしゆっくり休んだら?任務があるときはリーダーから連絡が来ると思うし。それまで自由にしてていいみたいだし。』

「部屋がどこかしらない。」

『相方は、あー。サソリさんだもんね、じゃあ私が案内するよ。部屋は、サソリさんの隣でいいかな。空き部屋が何個かあると思うし隣開いてたような。…大蛇丸の私物ってどうしてんだろ。あったら捨てていいかな。(サソリさんが欲しいものはすでにもらっていらない物は角都さんが売ってそうだ)』

「なぁ、あのイタチって男と名前は仲がいいのか?」

『仲がいい…。いや、普通じゃないかな?そう見えた?』

「そーだな、なんだか気さくな感じがしたからな。うん。」

『同じ里でよく班を組んでたから。昔馴染みってことよ。イタチがどうかした?』

「そうか。俺はいつかあいつを倒す、うん。」

『(イタチも憎まれんの好きだなぁ)あー、あいつむかつくよね。』

私が同調したことにびっくりしたのか青い綺麗な目をぱちくりさせた。なんでも自分で決めて、なんでも自分でしょい込む。人の事を心配するのに自分の事は二の次だ。嫌いになりたいのにならせてくれない。しかしデイダラがイタチを倒すというのはなんだか可愛く感じられた。本人は至って真面目なのだろうが、確実に無理だろう。

『じゃあ、強くならなきゃね。あの人めっちゃ強いよ。』

「んな事オイラだってわかってんだ、うん。俺の芸術であいつを認めさせて、絶対負かしてやるよ。」

『芸術…。デイダラも芸術家なの。』

「ああ、そうだぜ。も、ってことは名前もなのか?」

『私じゃなくてサソリさんね。道理でマンセルを組まされるわけだ。うん、君たちいいコンビになりそうだね。』

「そうかぁ?文句ばっか言ってくるし分かり合える気がしねぇ。芸術センスも違いそうだぜ、うん。」

『そうかな。今度見せてもらうといいよ。サソリさんの作ったものは凄く美しいよ。私は好きだな。』

「…名前はどんなのが好きなんだ?」

『どんなの、とは。私は芸術とかわからないから…。綺麗だとおもったものが綺麗。直感的に素敵だとか好きだとか。感性っていうのはそういうのじゃないの?フィーリングっていうかさ。』

「そうか…。見せてくれ、って言ったら見せてくれるかな。オイラも同じ芸術家としてそこまで褒められる作品を見てみたいぞ、うん。」

『邪魔しなきゃ大丈夫じゃないかな。隣の部屋使っていいか、許可を取りに行くついでにお邪魔しよう。デイダラはどんな作品を作るの?』

よくぞ聞いてくれました、とばかりに熱弁するデイダラ。芸術は爆発なのだ!と高らかにいう。起爆粘土で作られた蜘蛛がテーブルをかさかさと動く。これだけみるととても可愛いのに。爆発に関してはよくわからなかったのでいいフォルムだね、と褒めたら喜んだ。顔にすぐ出る、素直、可愛い。ようやく私にも後輩ができました。


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