04

イタチがちょくちょく話してかけてくる。それは任務の事や家事などの必要な会話であるから無下にはできない。避けるのも変だと思うが、イタチは私がここにいることと生きていることに慣れたのか距離が近くなっている気がする。仲間として、ならいいのだが。こんなことを考えてる時点で自惚れてるのかもしれない。しかし時たま男の顔をするから困るのだ。

『(つってもイタチと恋人だった期間なんて数年だし、あの頃は幼かったし。イタチは大人っぽいから忘れそうになるけども、)今もお互い子供か…。』

いや、あれほどの決断をして里を抜けて。今だってきっと彼はリーダーに里には手を出さないでほしい、等と条件をだしてここにいるはずだ。優しすぎて自分の事は後回しにする人だと良く知っている。私を殺すときもすまない、と何度も謝りながら泣いていた。だから私は抵抗もしなかった。この人に殺されるなら本望だとも思った。理由を知ったら悔しかったけど。そんな私がまたイタチの前に現れるとは。彼はどう思っているのだろうか。

『…やっぱりなるべくかかわらない方がいいよね。』

「イタチの事?」

『小南さん!お疲れ様です。こちらに来るなら行ってください。今お茶入れますね!』

「ふふ、ありがとう。名前が家事をやってくれて助かってると鬼鮫から聞いてるわ。男所帯だからすぐに散らかるし。任務中はろくな食事もとれないから、ここに帰って来た時に美味しいものが食べれると嬉しいみたい。」

『そういってくれるのは鬼鮫さんとイタチくらいですよ。雑用位しかできませんから。なにかあったら言ってください。』

「名前もなにかあったら言ってちょうだい。中々こちらには来れないけれど女は2人だけですもの。相談にのるわ。」

『…私が弱いのがいけないんですよ。付いて行くほどの器量もなく、自分で死ねるほどの強さもない。結局ここでも引きこもって皆に守られてるし。駄目ですね、私。』

「適材適所というものがあるわ。貴方には貴方にしかできないことがある。医療忍術の難しさはわかっているでしょ?それに暁のために色々研究してくれていることも知っているわ。食事だって、ろくなものを食べてなきゃ戦えない。貴方は大切な仲間よ。いてくれなきゃ困るわ。強いだけなら他にいくらでもいる。でも気遣えたり仲間を思いやって考える事は皆ができるものじゃない。」

『小南さん…。』

「ここの奴らはそういう人ばかり。強いかもしれないけど人を思う気持ちには欠けている。仲良しごっこをしろ、とは言わないから任務さえしてくれればいいけれど。私はそういうのも大切だと思う。名前がいるから殺伐としたここも円滑に回るのよ。自信をもって。」

暁唯一の女の人に会いたがっていた私にリーダーが早めに合わせてくれた。その日から私は小南さんを慕っている。戦闘能力が低い私にはここの空気が最初は冷たく感じた。暗部よりもっと気を抜けない場所。仲間、という概念がない。いらついたら殺す。それが当たり前で、自分のしたいようにする人達。小南さんはそんな私に唯一優しくしてくれた。小南さんのおかげでここにも馴染めたようなものだ。

「自殺しようとしてたってこと、ペインから聞いてはいたけど。死ねなかった、ってことは生きたかったってことよ。私は名前が生きていてくれてよかったわ。」

『…そうなんですかね。でも私も小南さんに会えたから、よかったです。それで今日はどうしてこちらに?』

「新しいメンバー候補を見つけたの。サソリと組ませるそうよ。イタチと鬼鮫が戻り次第岩隠れに向かってほしいの。丁度こちらに任務があったから、通信より直接顔を見に来たのよ。」

『そうだったんですね。じゃあサソリさんには伝えときます。角都さんのパートナーはどうですか?』

「それも今探してるところ。目星は何個かついてるからすぐに見つかると思うのだけれど。それまでは資金集めに徹底してもらうわ。本人も嫌じゃないみたいだし。じゃあ私はもう行くわ。少しだったけど話せてよかった。」

『私もです。お気を付けて。あ、昼ご飯用に色々作ったのでお弁当にします!少し待っててください、詰めるだけなので。」

「嬉しいわ、ありがとう。」

小南さんにお弁当を渡して見送った後サソリさんの部屋に行く。ノックをしてから返事をもらい入る。ヒルコの整備をしていたようで珍しく本人がいた。この姿を見るのは数回目だが貴重だ。傀儡のメンテや毒の調合を手伝って何度か部屋に通うようになってから見せてもらった。というより今の様に整備をするから脱いだのだけど。綺麗ですね、そう言ったら鼻で笑われたのを覚えてる。

『やっぱり綺麗ですね。』

「ガキに褒められても嬉しくねぇよ。」

『サソリさんは熟女好きなんですね。永久の美を追求する割には女の趣味は真逆なんですね。』

「殺すぞ。」

『二言目にはそれですね、慣れました。小南さんから伝言です。サソリさんの相方が決まって、イタチ達が戻ってきたら岩隠れに行くようにと。爆破部隊にいたそうですよ。角都さんの方ももうすぐ見つかるそうです。』

「で、俺たちと組まなくていいからご機嫌ってわけか。」

『いえ、それは別に。本当に行け、と言われたら行く気でした。ただ足手まといになるのが嫌で。勿論怒らせて殺されるのも嫌ですけど。機嫌がいいのは小南さんに会ったからですかね。あとサソリさんにも会えました。』

「…口説いてんのか。」

『あ、サソリさんの本体にも会えたという意味です。私に芸術はわかりませんがサソリさんが美しいというのはわかりますよ。』

「そうかよ。」

ふん、と傀儡に目線を戻すが喜んでいるに違いない。ここまで打ち解けた理由も任務の言付けで部屋を訪れた際、完成された傀儡が部屋に飾ってあり褒めたことからだった。パーツパーツは不気味でも、サソリさんの手で完成された傀儡は繊細で。それでいて色々仕込めるのだから凄い。綺麗ですね、と傀儡をみて呟いた私を少し認めてくれたようだ。芸術を理解している奴と。そこは全くとして理解してないが。

『あ、そうだサソリさん。これ宿題の解毒剤。ここに置いておくので暇なときに見てもらっていいですか。えっと、こっちです。』

「ああ、わかった。そっちのしまった方はなんの薬なんだ?大蛇丸といい、変な研究ばっかりしてんだろ。」

『失礼な。あの人みたいに変態っぽい事はしてないですよ。普通に医療忍者っぽく薬のストック作ったりしてるだけです。こっちのは私用の解毒剤です。』

「私用?」

『サソリさんからもらった毒を自分で試してみて、』

「はぁ!?お前馬鹿か!死ぬぞ!この俺が作った毒だぞ!馬鹿か!馬鹿なのか?この馬鹿。」

『そんな馬鹿って言わなくても…。それにほら生きてるし。』

「俺から毒を貰ってったり色んな意味わかんねぇ研究してんのに実験体がいないと思ってたんだ。動物でもとっつかまえてんのかと思いきや自分自身を実験台にするとは…。お前果てしないMだな。」

『違いますよ。こんな体ですから怪我はすぐに治るし、人に痛い思いさせるの嫌だし。実験台とかそいつが生きるように手加減したり、ご飯与えたりする方が面倒で。痛がって騒がれると殺したくなるし、そうすると後始末面倒で。動物は可哀想ですよ。』

「優しい馬鹿なんだか酷いやつなんだかわからねぇな。お前のその身体は毒もありなのか。」

『そうですね。細胞が毒の吸収をしないようにしたり、内臓が解けたりしても修復するので。勿論吐き気や頭痛、痛みは感じるので毒は少量を薄めたところから始めますよ。』

「そりゃそうだろうが。時間通りに飯やら洗濯やらやってるからぶっ倒れるようなことはしてないと思ってたが、」

『皆が任務でいない時か真夜中にやってるんで。雑用が仕事ですからそれはしっかりやりますよ。』

「真面目かよ。死んだらどーする気だよ。」

『あぁ、そっか。リーダー達しか知らないんでしたね。死のうとしてたんですよ、里を抜ける前。でも死ねなくて利用されるくらいなら、ってぬけたんです。だからリーダーにやられた時も別に死んでもいいかなって。今もそこまで生きたい、って思わないですね。』

あの時イタチに殺されてばよかったのかもしれない。そう何度思ったことか。それでも生きていたのは泣きながら殺した理由を知りたかったから。理由を知った後はもう一度イタチに会いたかったから。ただ死ぬ前に一目見たかった。憎んでいるのに矛盾しているけど。そして会った今は…、欲が出て来て困る。だから死にたい。でも生きてみたいかもしれない。

「…名前。俺のコレクションになるか。」

『は?』

「死にてぇけど、生きたいんだろ。ま、悩んでやる時点でてめぇは死ねねぇだろうが。だから傀儡にして一生可愛がって生かしてやる。俺の人形としてな。」

『口説いてんですか。』

「馬鹿いえ。綺麗だと思ったんだろ。ただ死ぬのが嫌ならこれと同じように綺麗にして使ってやる、って話だ。」

『…そうですね。前にも言いましたけど利用されるのは嫌なんです。傀儡にするなら穢土転生なんかはされないし実験体にもならなさそうですが。サソリさんが死んで私が誰かの手に渡ったら嫌ですし。』

「俺は死なねぇよ。」

『死んだと思った私が生きてるんですから。なにがあるか世の中わかりませんよ。サソリさんだけの人形で大切に誰にも見つからず可愛がってくれて。サソリさんが死ぬ時は一緒に消滅させてくれるというのなら、考えてもいいですよ。』

「プロポーズか?」

『そうとれるなら、そうかもしれません。まぁ、万が一死ぬ時があるならの話ですよ。痛いのは嫌なんで。今は暁のために生きてみようと思います。だから当分は生きてるんでその間にサソリさんも考えてみてください。』

戦闘で使えない傀儡なんて本当にただの人形だ。サソリさんが欲しがるわけもない。そう思ったのに彼は楽しそうに笑って考えとく、と言った。急にそばに来たかと思えば私のおでこ、鼻、顎のライン、首を綺麗な指がなぞる。俺のモノになるなら傷つけるなよ、と彼は妖艶に笑った。イケメンってずるい。


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