03

仲間探しと資金集めが当分の間の任務らしい。大した怪我も彼らはすることなく、おかげで私は平和だ。私は準メンバーとしてここにいるらしく、雑用ばかりさせられる。主にアジトの見張りだ。鬼鮫さんがいなければご飯も作るし、角都さんの帳簿の手伝いもする。そうつまり下っ端扱い同然だ。まぁ、戦闘に駆り出されるよりましだ。全員が全員、毎日ここにいるわけでもない。それが一番ありがたいが数か月もいればここに慣れ、親しくなってしまった。

「名前、相方が死んだ。俺と任務へ来い。」

『また殺してしまったのですか。どうして連れてこないんですか。殺してしまったら治すものも治せませんよ。』

「あんな奴ら治すだけ無駄だ。それに丁度いいストックになるしな。」

『角都さんのお手伝いはいいですけど任務は嫌ですよ。足手まといになって殺されるの目に見えてるじゃないですか。』

「俺を怒らせなければいい話だし、すこし怪我させても治るんだろう。」

『同じような事サソリさんにも言われたんですけど。私不死身じゃないんですからね。やめてくださいよ。』

「サソリは相方がいるだろう。」

「あんな奴お断りだ。話を持ち出したのは俺が最初だ。もしコンビを組むなら俺だろ?」

「こういうのに早いも遅いもないだろう。本人の意志じゃないのか。」

『本人の意志ならどっちも嫌ですよ。貴方たち私の事こき使うじゃないですか。なんでアジトから出てまでパシリみたいなことしなきゃいけないんですか。』

角都さんの帳簿付けの手伝いはまだいい。家事を任されている身として、生活費を増やしてほしいので交渉しつつ一緒に帳簿を見た方が効率がいい。サソリさんに至ってはただの雑用だ。傀儡のメンテやら毒の調合まで。後者は私も学ぶことが多いのでありがたいが。ここの医療忍者としては色んな毒を知っていた方が解毒剤も作れる。

『お2人のお手伝いは私にもためになるし、必要なことだから文句は言いません。寧ろありがたいとも思っていますが。任務は別です。絶対貴方たち私に手を上げます。』

「ありがたいと思ってんなら、その分返したらどうだ。」

「イラつかせなければ手は上げん。それにそれくらいでやられる奴はそれまでという事だ。」

「その通りだな。大体俺は飯も食わねぇし家事で世話になったこともねえ。なのに毒薬を教えてるんだから恩を返せ。」

『傀儡のメンテから部屋の掃除までさせられましたけど。私がごみを捨ててこの前切れたじゃないですか。あんな散らかった部屋に使う部品をその辺に置く方が悪いのに。』

「名前の分際で俺に口答えするとはいい度胸だ。大体俺は嫌奴は部屋に入れねぇ。お前をかってるんだから感謝しやがれ。」

『どうしてそう上から目線なんですかね…。とにかく私はアジトに引きこもりますからね!そんなに相方が欲しいなら仲間探しは全力で手伝います。組まされないために。』

「俺を振るなんざ本当にいい度胸じゃねえか。」

「じゃあイタチならいいのか。」

ヒルコの尾を避けていれば角都さんがそんなこと言いだした。皆は私とイタチの関係を知らない。しかしなにかあったと感づいている。お互いここ数か月普通にすごしている。寧ろ過ごしているうちに昔を思い出している。気まずくないが昔に戻ったように普通に接するから錯覚してしまう。あの平穏な日常が戻ったのかと。そんな時サソリさんの鬼畜っぷりが私を現実に戻す。

『外の任務は皆ごめんですよ。イタチは逆に気を使いますし…。』

「それは意外ですね。お2人は気を使わないような親しみを感じたんですけど。」

『おかえりなさい、鬼鮫さん。昔過ごしたからそうみえるだけでしょう。イタチは一緒じゃないんですか?』

「先に戻ってろ、と言われました。それよりリーダーから任務です。誰か暇な人が当たればいいと。資金集めに村の長を殺すだけですから、そう難しくはないようです。」

「名前、行くか。」

『嫌ですよ。そんなに行きたいなら角都さんと組んだらいいじゃないですか。丁度良くないですか。』

「そしたらお前が大蛇丸と組むんだな。そうリーダーに伝えよう。」

『待って、待って角都さん。私が悪かったですって。あの人私を変な目で見てくるんですよね…。ちょいちょい部屋に来い、って誘ってくるし。』

「まぁ、そんななりでも女は女だしな。」

『サソリさんは一々むかつく発言しかしませんね。違いますよ、体目当てですよ。』

「…だからそういう事か。」

『いや、違くてですね。私を実験台にしたいみたいです。捕まったらホルマリン漬けやら解剖やらされそうなので逃げてますが。』

あの蛇のような目にとらえられると鳥肌が立つ。イタチの事もなにかと聞こうとしてくるし。気に入ってるから殺さないわ、と言うがどこまで本気かもわからない。お気に入りにしてあげる、という意図は果たして何なのか。読めないし、食えない男なので用心したにこしたことはない。イタチがわざわざ部屋まで来てあいつには近づくな、と釘までさしてきた次第だ。

『(誰も好きで近づかんけど)わかりました。じゃあ、私1人で行ってきます。』

「名前さんの術を見たことがないのでなんとも言えませんが。お1人で大丈夫ですか?」

『村の長なら何とかなると思いますよ。鬼鮫さんは今任務から帰って来たばかりですし、ゆっくり休んでください。たまに戦わないと腕も鈍るので。自分の身は自分で守らないとうるさい先輩がいるし。その先輩が攻撃してくる日常なんで。』

「鍛えてやってるんだ。」

『頼んでないです。角都さんは圧はかけてきますけど攻撃はしてきませんよ、サソリさん。』

「わかった。じゃあこれからはめちゃくちゃ優しくしてやるよ。」

『…気持ち悪い。逆に怖い。』

「大蛇丸よりこいつの方が危ないんじゃないか。死んだら代わりに誰かが行かなきゃいけなくなる。へまはするなよ。」

『わかってます。もしやられそうになったら自爆と共に村ごと焼いてしまいますよ。』

「死ぬ位なら俺のコレクションになれよ。一生可愛がってやる。」

『私が死んだら体の一部分も残らないようにしてください。研究に使われるなんて嫌ですもん。賞金が高かったら売れたんですがね。すみません、角都さん。』

「…売るくらいならストックにしてやる。能力に使い道がありそうだ。」

「名前は引きこもってるから顔知られてないしねー。村まで案内するよ。」

【ウルヨリコレクションカストックダナ。ハヤクシロヨ。】

久々にゼツさんが出てきた。口には出さないが死ぬなよ、と言ってるようだ。例えが物騒であるが、いや実際やるだろうが。部屋に戻り準備をしてから外にでる。久々に着る暁のコートは今だ自分で見慣れない。さっさと帰ってきて研究にとりかかろうと村へ急ぐ。すんなり任務を終わらせて戻ればサソリさんが入口を入ってすぐのところで待っていた。可愛がってやる、の発言が頭を過り構えると笑われた。私をジロジロと見るので思わず笠を深くかぶった。

「それ着るとこ初めてみたな、と思っただけだ。」

『あぁ。アジトでは作業しやすいようにと思って。皆さんもここでは脱いでますもんね。私はここにいるのが殆どなので、それよりどうかしましたか。』

「大蛇丸が裏切った。イタチを襲ったぞ。まぁ、逆にやり返されたがな。」

『怪我は!』

「くくっ。やっぱりイタチは特別か?」

『そんなことないですよ。サソリさんが怪我しても心配します。傀儡だから私が直接治すことなんてないですけど。皆手当てするときは平等に心配してますよ。』

「…そうか。それより俺の相方もいなくなった。さっきの話、どうだ?」

『コンビの話ですか?私出会い頭にコンビはごめんだとサソリさんに言われた気がしましたが。』

「気のせいだろう。」

『私案外根に持つんですよ。きっちり覚えてます。それにこれで丁度角都さんと組めるようになったじゃないですか。』

「あんなジジィお断りだ。」

『貴方も見た目より年でしょうよ。イタチの処に行ってきます。傀儡のメンテなら手伝いますから。それからこの前の毒、解毒剤ができたので見てください。』

「ほう、あれの解毒か。ああ、あとで部屋に来い。それが解き終わったら新しい課題を出してやるよ。」

『それはそれは。…案外サソリさんと組むのも悪くないかもしれませんね。冷たいですけど人に教えるの上手だし。ああ、でもそれだとコンビってより私が一方的にお世話になっちゃうからやっぱり駄目ですね。』

「そうか。」

少しサソリさんが笑った気がした。ヒルコに入ってるからわからないが。小さく会釈をしてイタチのもとに走る。やり返して大蛇丸が抜けた、ということはイタチは勝ったのだろう。しかし心配なことに変わりはない。イタチは特別か、と言われた言葉に胸がチクリした。それをかき消すように部屋のドアを叩き、許可をえて入る。

『…案外元気そうで何より。』

「ああ、大丈夫だ。それより任務に行ってたんだろう。怪我はないか。」

『それを私に言うか。今の自分の状況見てみなさいよ。私の任務なんて村の長の暗殺だけ。大蛇丸を相手にする方がよっぽど大変でしょ。さっさと脱いで。』

「…大丈夫だ。」

『なに恥ずかしがってんの、意味わかんない。いいから医療忍者の言うことは絶対。イタチは昔から怪我しても大丈夫、ばかり。他の者を先に治せ、って聞かないんだから。今は他の人なんかいないんだから大人しく言うこと聞いて。』

「…名前はそれでも俺を優先してくれただろう。」

『…やばい人以外ね。死に至らない傷なら恋人を優先するでしょうよ。さすがに1人で診てるときは逆に贔屓にならないように傷の具合順してたけど。はい、後ろ向いて。』

「上達したな。」

『何年離れてたと思ってるの。抜け忍から追われてる時だって自分で手当てしてたし。』

「すまない。」

『…なんのお詫びよ。イタチ、前も言ったけど考えがあった事でしょ。私に謝るのはおかしいよ。私は貴方を許さない。ずっと憎んでる。許してなんかあげないから。』

治った背中を思い切り叩く。イタチが小さく唸ったのを見て少しせいせいした。他に怪我をしてないかと体をよく見る。腕や足に触り痛みがないか、表情をみようとイタチを見れば目が合った。目線をはずしてすまない、という顔は幼い頃の照れた顔と一緒だった。どうしてそんな顔をするのか。私に恋している、そんな顔だった。


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