01

数年前に愛していた男に裏切られた。私はそれが信じられず泣いて暮らした。その時の生活ぶりはあまり覚えていないが酷いものだったらしく、監視がつけられた。自殺しようとしていたのだから当たり前かもしれない。食事もとらず私は部屋の同じ位置にいてただ泣くだけだった。それから火影が私にこう告げたのだ。あの夜の真実を。イタチが何故、一族を抹殺しなければいけなかったのか。

『話をすべて聞いた上で思った。火影は私を哀れんで教えたのかもしれない。残った彼の愛した唯一の弟を面倒見てほしかったのかもしれない。だけど私にはそれができなかった。』

「お前のその能力。里はそれが欲しいだけだ。そのために生かした。自殺を図られるよりも理由を話して生かしておく方がよかったのだ。」

『そう、私もそれを理解した。火影以外はきっとそう思ってる。しかしその理由を知ったら私が里を裏切るかどうかなんて誰にも分らない。あいつらはイタチの守った里を守るのが私の役目だなんて言ってたけど。都合がいいにもほどがある。』

「それで抜け忍になったわけか。」

『この能力が欲しいがために術をかけようとしたのよ。私を操る術をね。根の者たちは私を道具としか見てない。暗部にいたころからそうだったけど、この能力さえあれば私の意志はどうでもいいのよ。だから殺してやった。自己防衛であっても里のものを殺したわけだし、あの里に未練はない。だから抜け忍になったの。』

「イタチの弟はよかったのか。今頃1人で寂しくしているぞ。」

『うちはでもない者が慰めたって意味はないでしょ。それに逆よ。あの子のためにも出たの。私はきっといつかあの子を殺してしまう。』

「ほう。」

彼に恨みはない。何度かあった事のある可愛い少年はイタチによく懐いていた。だから私とも少しは面識があった。あんな弟がいたら溺愛もしてしまうのもわかる。だからといって一族と恋人の私を殺しておきながら弟だけは助けるなんて。私はサスケ君に負けたのだ。彼は私を一族抹殺と共に殺した。しかししくじったのだ。私はこの通りしぶとく生きている。

「その身体の再生能力。医療忍術にも長けているが、生命力を伸ばすようなその術。里が欲しがるのもわかる。三忍の1人綱手姫にも匹敵するその力。」

『そこまで知ってるんだ。里では医療忍術に長けてる、ってだけで通してた。生命力の方は禁術だし里でも上役しか知らない。イタチでさえもね。だからこそこうして生きてるんだけど。まさかあの状態で復活できるとは奴も思わないでしょ。』

「一族と愛すべき恋人、里まで裏切ってもなお弟を助けたかった。その男、今もまだ恨んでるか?」

『…もう終わったことだし。時がたてば傷はいえる。里と一族をかけても守りたかった弟よ。たかだか恋人が勝てないのも今じゃわかる。それに本気で好きだったのは私だけだったのかも。まぁ、お互い若かったし。どういう顔して会えばいいかわからないから会いたくはないね。』

「未練があるようだな。」

『未練じゃない…。ただ、悲しくなるだけよ。大体なんでそんな話をするわけ。あんた私に仲間になってほしいだけで昔話しにきたんじゃないでしょ。私を勧誘するために私の過去を調べ上げるのはいいけども。』

いきなり現れたペインと名乗る男。暁に入らないか、と言われ断った。抜け忍であるし里からの追手は仕方なく殺している。しかし別に殺人が好きなわけでも犯罪者でもない。彼らのグループは犯罪組織だ。目的のためなら罪のない人間の命も奪うのだろう。私はそんなことはしたくない。しかし断れば案の定戦闘。負けた挙句こうして昔話をさせられている。

「俺がやった傷ももう治ってるな。」

『それ位が取り柄なので。そもそもさ、多少戦闘能力もあるけど。まぁ、あんたみたいなやばいくらい強いやつはさすがに無理だけど。私基本は後ろで援護することばかりだし、戦力にならないよ。暁ってあんたみたいな化け物ばかりでしょ。』

「化け物ばかりだが怪我はする。そして量より質だからそれを失ったら困る。」

『…そいつらの治療をして、死にそうなら禁術つかって生命力分けろってことね。』

「話が早くて助かる。殺しが嫌ならアジトにいればいい。お前には元々そういうつもりだったしな。医療忍者は先に死ぬな、鉄則だろう?本当に人手が足りないときには戦闘に加わってもらうが。」

『化け物くらい強いならそんなに怪我しなくない?』

「それならそれで好きなことをしていていい。ただしアジトにはいてもらうが。アジト内なら自由にしてくれていい。戻ってくるなら外出もいい。監禁する気はないしな。どうせ追い忍から追われてるならどうだ。こちらはアジトに来る奴は仲間以外皆敵だ。化け物たちが追い払う。俺たちはお前を守るからお前も俺達を助けろ。」

『まぁ、悪い話じゃないけど。…なにかあるの?』

「仲間にイタチがいる。」

『…あんた性格悪いわね。』

「会いたくないなら部屋に引きこもってればいい。」

『ばれるでしょうよ。あっちは写輪眼もってるし。怪我したら治すんでしょ。そうそうに怪我なんてしなさそうだけど。…嫌だ、っていったら?私とイタチならイタチをとるでしょ。』

「どうしてそう思う。」

怪我が大分治ってきたので立ち上がる。元々傷の治りが早い体質だ。生命力が凄まじいことを利用できないかと禁術を使って色々実験していた。自分の身体なら印を結ばなくても勝手に自己再生してくれる。ただし周りにバレたくないので封印していたが。だからイタチも暗部も知らない、知るのはごく一部。抜け忍になった瞬間私はそれを解いた。だからいくら傷を作っても自動的に再生される。勿論限界はあるが。術にはリスクがある。私の強みはそんなもの。イタチに比べれば天と地の差。

『私を選んでくれる人はいない。私自身をね。イタチは弟をとり、里は私の能力だけを欲しがった。どちらを助けるかってなるといつも選ばれない。自分で治せるからってね。選ばれない人生を歩んできたから諦めがついたの。夢は抱かない。』

「俺はどちらも捨てない。名前、仲間になれ。」

『我儘な…。貴方に勝てる気がしないからいいよ。その代りさっき言った通り私は基本戦闘しない。怪我人いないときは自由。部屋に引きこもっても何も言わないで。協力はするし仲間とも仲良くするけどイタチは別。向こうだってやりにくいだろうから。』

「別に仕事仲間として接してくれればいい。お前とイタチはなにかあってもコンビを組ませないことにしよう。」

『そうして頂戴。それからそれ暁っていう装束?』

「そうだが。」

『外に出るときとか暁として行動するときは着るけどアジトでは着なくてもいいかな。私は基本引きこもってるし、医療忍者の研究とか作業するときにそのでっかいマントみたいな羽織は邪魔くさそう。』

「ああ、必要な時に着るならそれでいい。研究も俺たちのためになるものなら協力しよう。」

『そりゃどーも。貴方のことなんて呼べばいい?』

「なんでもいい。俺は基本違うところで行動してるからな。なにかあれば連絡してくれ。用があればこちらからかける。とりあえずアジトに案内する。傷はもういいか?」

『ズタボロにしてくれたくせによく言う…。じゃあリーダー。』

「ああ、なんだ。」

『これからよろしくね。』

「こちらこそよろしく頼んだ、名前。」

リーダーの後に続いて歩く。途中の町で必要そうな下着類だけは買っておいた。どんな仲間がいて、歓迎されるかもわからない。女性はいるかと聞けば1人だけいるがアジトには基本いないと言われた。じゃあ男所帯なわけだ。生理用品も多めに買っておこう。後は足りなければ買いにくればいい。こうして私は暁のアジトに来た。そして早々に懐かしい男と再会した。イタチ、そう私が言えば彼は珍しく驚いた顔をした。




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