雪灯りを探して

吐く息は白く朝から降っていた雪は夜中になってもやまず足跡が残る位には積っていた。こんな日に仕事なんてと悪態をついていたが先ほどようやく終えた。初雪だと、喜んでいた彼女の元に無事だと安心させるためにも早く帰った方がいい事はわかっていたがどうも足は当てもなく江戸の町をさまよっている。

「今日も殺しちまったねィ。」

独り言と一緒にまた白い息がでて静かに消えた。今までだって仕事を終えて名前さんに会いにいっていたのに今日はなんだか自分が汚れている気がした。雪を見て無邪気に笑う彼女を見たからか、雪があまりに白いからかわからない。なんだか感傷的になってしまった。これだから冬は嫌いだ。寒いし。

『お兄さん。そんなとこに突っ立てたら風邪ひきますよ。』

「大丈夫でさァ。風邪をひいたら優しく看病してる人がいますからねィ。それよりお姉さんこそ風邪ひきやすよ。」

『私にも風邪ひいたら悪戯しつつ世話してくれる方がいますから。おかえりなさい沖田さん。ご無事で何よりです。』

「…悪かったでさァ。」

すぐ帰らなかった事なのか傘もささずに雪の中突っ立てることか。はたまた名前さんに探しに来てもらったことに対する謝罪なのか。彼女がどの意味でとったかは知らないが傘の中に俺を入れ優しくほほ笑んだ。鼻が赤くて代わりに傘を持とうと手に触れれば氷のように冷たくて思わず抱きしめた。傘が転がっていって雪が名前さんの綺麗な髪にさらりと落ちた。

「名前さんあんたこんなに冷たくなって本当にアホですかィ。」

『沖田さんだってこんな雪の中皆さん帰ってきてるのに1人ほっつき歩いて。どっか店にでもいってると思ったらアホですか。』

「なんでィ。こんな夜中に変な店いって浮気してるよりましでィ。夜遅くなる時は先に寝ててくだせェ、って前にもいいやしたけど。」

『仕事が終わったら無事か早く確認したいからなるべく早く帰ってきてね、と前にも言いましたけど。』

落ちた傘を拾って無事でよかった、と優しく笑う彼女の傘をとって今度こそ2人して傘にはいる。雪を優しく払ってただいま、と言えばおかえり、と俺の頭をなでるその手をとって少し荒いキスをする。お互いの体温を貪るように何度もそこにあるのを確かめるように口づけを交わす。変に悩んでいたことはもう満たされて忘れていた。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -