チョコミントフレーバーはいずこへ
彼女は苦いのが嫌いだ。俺の飲み物に手を伸ばしてきた時それを知ってるから止めようとしたが俺が声を発するよりも彼女がそれを飲む方が早かった。案の定眉間にしわをよせうげ、といった。中身はコーヒー、勿論ブラック。せやから言ったのに、まぁ実際に声には出さなかったが。
「人の飲みもんに手だすからそういう事になるんやで。」
『えー、侑士がそんな苦いもんのんでるからいけないんだよ。でも似合ってるからいいけど。』
「さよか。」
『うん、カッコイイよね。でも口の中が最悪だよ。あ、宍戸ー。なんか甘いもん頂戴!口直し出来そうな奴ー。』
さらりとカッコイイと言って宍戸の元へ行ってしまった名前の姿を追う。そうやって何気ない言葉で俺を喜ばすところが好き。宍戸にチョコをもらって嬉しそうにしてる顔が可愛いが同じ位その顔を宍戸に見せてるのがどうしようもなくむかつく。
『チョコもらったよー。あれ、侑士なんか不機嫌だね。どうしたの?チョコほしかった?もうたべちゃったよ、チョコミント。宍戸は本当にミント好きだよね。』
「(また宍戸かいな)…名前は俺が機嫌悪いとかいいとかすぐに気付くけどようわかるなぁ。よくポーカフェイスって言われるんやで?」
『うーん、そうだねそんなにわかりやすくはないから最初は戸惑ったけど。侑士の事良く見てるし好きだからわかるよ。』
「名前、」
『うん?』
どうして彼女は俺の欲しい言葉をいつもすぐにくれるのだろうか。宍戸への小さな嫉妬心なんかどうでもよくなって機嫌が直る。口にコーヒーを含み彼女の唇に吸いつく。コーヒーがこぼれない様に少しずつしつこく口内へ流し込みチョコの味を消すように舌をからめた。最後に少しこぼれて顎を伝ったコーヒーをなめあげる。
「俺は今ご機嫌やんなぁ。」
『っ、にがい、ってかなにすんの!ほら宍戸が顔真っ赤に知ってるじゃん!口移しでコーヒー飲ませるなんて!』
「宍戸からもらったチョコより俺からもらったコーヒーの方がええやろ。なんや足りひんかった?」
『いい!もうなんなの侑士のばか!』
顔を赤くして怒る名前の髪をなでて俺も好きやで、といえば恥ずかしそうにしながらも大人しくなった。彼女の口からなめとったチョコミントの味が少し口の中に残っているがあと数回キスをすれば消えるだろう。そしたら彼女はまたきっと赤くなるけどそんな顔も好きだからいいとする。侑士嬉しそうだね、といった彼女に全部名前のことやけど、と言えば不思議そうな顔をした。