こんな物騒な世界でもテストはあるらしく。いけんだろ、なんて簡単に考えていた私は勉強をしなかった。勿論赤点を取りましたよ。自分の力を過信していた。過去に戻りたい。しかも追試でいい点を取らないと夏休みは補習らしい。こんな世界にきたのに夏休みまで奪われてたまるか。待っててね私の夏!って事で、
『勉強するぞォォ!!』
「盛り上がってる所悪いけど今日から体育祭の練習だから。ああ!いや、そんなに落ち込むなって。な、名前!体育祭楽しいから!」
『だってせっかくやる気になったのにさ。追試一週間後だよ。なのに体育祭って…ってかさ。体育祭ってなにすんの?』
「体育祭は体育祭だろ。」
『いや、だって銃弾飛び交うし玉入れとか綱引きとかしないだろうし。そもそも人が集まるの?』
「玉入れとか綱引きとかするんだよ。こういう行事は絶対参加だからね。勝った所にはそれなりのご褒美があるし皆気合いはってるんだよ。まぁ、だいたい理事長の暇つぶし名目だけどね。」
『ビバルディ…。でもなんかご褒美以外平凡だね。』
「まぁね。あ、でも騎馬戦は銃使うし。他もなんか武器所持してたりするかな。アリスが前回騒いでた気がする。」
『…ものほん?』
「当たり前だろ。偽もんなんて使ってたらカッコ悪いよ。俺早撃ちは得意なんだぜ。」
かっこいい、悪いの問題なのだろうか。アリスが騒いでた、ってことはそれなりに危険なのだろう。だから身体能力の差が凄いのにこの中に混じって運動とか無理だって。ボリスは身軽で脚が早いし、エリオットなんかは体力がありそうだ。どれをとっても勝てる気はしない。休んでいいかな、そして勉強したい。それがわかったのか絶対参加だから、と笑顔で言われた。
『ううー、じゃあもうご褒美に期待する。なにがあるの?』
「色々あるけど賞金がでるって事が一番大きいかな。武器買ったり領土になにか建てたり。それくらい大きい金が動くから。」
『凄い!なんでそれを早く…言われても私に勝ち目はなかった。無理無理勝てないもん。』
「他にもご褒美はあるし赤組、白組に別れてるから大丈夫だよ。力加減はわかれてるから。重役であんたが知ってる人の組み分けは白組がアリス、ピアス、会長さん、ブラッドさん、No.2さん。ほらこれその紙。」
『ありがとう。赤組はボリスとエースとグレイとナイトメアとディーとダムと私か。ディーとダムも地位が上だから参加なんだね。あれ、赤組のが1人多いよ。』
「1人はどうせ吐血してでないし。あの人走ったらしにそうだろ?あとは組で勝ったら1ヶ月学食無料と宿題免除らしいけど、んなの誰も喜ばな『やったー!!宿題免除だー!!』ここにいた。」
『いや、宿題免除でどれだけ私の時間が増えると思ってるんだ。こっちは仕事もしてるんだからね。真面目に授業だって出てるの。』
「サボればいいのに。あんたって変なのとこ真面目なのに勉強しないとかさ。名前ってなんか、最初とイメージが違うな。」
『なにさ、勝手に連れてきたくせに。悪かったな。どうせ大人しくて謙虚とか思ってたんでしょ。もう開き直っての。こんな外人だからけの所で大人しくしてたら卒業なんてできやしないから!図々しくなるわ私。』
「けなしてるんじゃないよ。あんたって可愛いよね。俺は好きだけどな。」
『…。』
いや、なんていうか。んな格好いい笑顔で言われても。一応褒めれれているんだろう。私をなんでこっちに連れてきたかは理由をまだ聞いてはいないけど気にいってもらえてはいるのだろう。あんたとこうして仲良く喋れてうれしい、なんて甘い台詞を吐きながら私に頬を寄せてくる。びっくりしたがゴロゴロとのどを鳴らして甘える姿はまさに猫。落ち着け自分、相手は猫だ。それでもいっぱいいっぱいなのにボリスはさらに甘い言葉を吐く。うわあああああ。
『女たらし!』
「は!?違うって!?誉めてるのに…。なんだよ、俺本当に嬉しいんだぜ。俺のさらい方もまずかったけどあんたに嫌われなかったし楽しそうにしてくれて嬉しいのに、」
『そんな耳を垂らして落ち込まんでも…。ボリスって可愛いね。』
「…はぁ!?あんたおかしいんじゃないの!?」
『おかしくないよ。猫耳も可愛いし、誉めてるのに。』
「嬉しくないよ!!」
『はいはい。(ボリスが熱くなるのってなんだか珍しい。そんなに嫌なのかな)私の国では可愛いは最高の褒め言葉なのに。』
「そ、そうなの?でも可愛いなんて嬉しくないよ。」
『だって可愛いんだもん。』
「可愛くない!」
『可愛い!』
「可愛くないって!」
『可愛いって!』
「可愛いって!!」
『可愛くないって!』
「可愛…あれ?」
「ボリス、お姉さん。痴話喧嘩しないでよ。」
「そうだよ、ずっと見てたけど教室から歩きながらここまでそんな会話してくるなんて。こっちが恥ずかしいよ。」
グランドを歩いているといつの間にかいた双子にそんな事を言われた。やばい、確かに恥ずかしい奴らだった。でも痴話げんかだなんて。私達付き合ってないし、ときっぱり言えばじゃあ僕らなんてどう?と私の横にへばりつく。可愛いがさすがに中学生に手は出せないしどっちと?ってなる。困る私にボリスは双子を引き離し私に抱きつく。これから付き合う予定だから手え出すな!といって引っ張られた。
『…まてまて。(すっげぇ事言われたよね!え、なにそれって告白?予定ってなんだ!)うううううう、』
「やぁ、お嬢さんサボリかい?唸ってどうしたんだ?」
「具合でも悪いのか?赤組は騎馬戦の練習してるぜ。白組もだけど。」
『ブラッド、エリオット。久しぶり。大丈夫、猫だからって事にして気にしない事にする。ってか私が騎馬戦に出れると思ってるわけ?撃たれて死ぬわ。ってかなんで練習で銃弾を使うの…。当たったら死ねよね?』
「銃弾じゃなきゃ意味ねぇだろ。」
『えー…、本番までに人数減ったらどうするのかな。ってか白組押されてますよ。』
「まぁ、あっちはボリスに双子でやんちゃざかりな奴が揃ってるしな。若いって事だ。」
『なにをんな呑気な…。やんちゃですまないでしょ。可愛くもなんともないよ。やんちゃじゃなくてもはや暴れん坊だよ、将軍だよ。』
「まぁ、お互い頑張ろうじゃないか。私は賞金になんか興味はないが茶葉がついてくるそうだからな。」
『こんな嬉々としてるブラッド久っしぶりだわ。てっきりやる気ないのかと。本当に紅茶が好きだね。そういえば賞金ってどうやって決まるの?組は食堂の無料券とかでしょ?』
「賞金は所属の場所だぜ。寮ごとで競う競技もあるからな。あと、個人種目は各寮事の場所に得点がはいるんだ。」
「それで1位が賞金だ。各地位のあるものが代表ででる。これがリストだ。」
『なる程。風紀委員がブラッド、エリオット、ディー、ダム。生徒会がペーター、エース、アリス、ピアス。ピアスって風紀員じゃないの?』
どうやら家出と人数が足りないのが影響しているらし。ブラッド達は別にいなくても、なんて顔をしている。可哀想に。うちの所はナイトメア、グレイ、ボリス、私だ。ピアスとボリスならボリスの方が身体能力高そうだしボリスがこっちでよかったがこっちにはナイトメアがいる。その辺を配慮してこの配置なのだろう。でもボリスは猫で器用だし誰とでもやれそうだけどピアスは大丈夫なのかな。
「わー!!ペタちゃんと一緒だ。ねえ、ちゅうしようちゅう。可愛いなぁー、ねぇ!」
「気安く近づかないでください!この雑菌が!」
「あはは。ペーターさん懐かれてるな。よかったね。」
「よくないですよ!ああ、猫が来るのも嫌ですが鼠なんてもっと嫌です!」
『うん、よくなさそう…。ってか騎馬戦は終わったのか。どっちが勝ったの?』
「赤組が勝ったぜ。俺とチェシャ猫君が多く倒したからな。風紀委員さんたちがサボったから白組は弱かったぜ?」
「私に労働は向いてない。他の奴が頑張ってくれれば紅茶は手に入る。でなきゃいけないものだけはでるさ。」
「ねぇねぇ、ペタちゃん!あ、エリーちゃんもいる!!」
「よーし、ブラッド。練習に行こうぜ。」
「お前が私に人参をよこす時もそんな感じだぞ…。気付いてくれればいいのに。」
「なにか言ったか?」
「いや、別に。」
「えー。エリーちゃん行っちゃうの!最近会えないんだし寂しいよう。」
「お前が勝手に家出したんだろうが。仕事だけはきっちりやれよ。ほら、あいつにでもくっついてな。」
「僕に押しつけないでください!なんでこんな奴と一緒の組みなんですか。ああ、名前。敵同士ですが頑張りましょう!」
『あー、うん。そうだね、アリスの事頼んだよ。』
勿論任せてください、と私の手を握って笑顔のペーター。それをブラッドが嫌そうにして銃を向けてびびる。こんなとこで争わないでくれ。この人たち同じ組で大丈夫なのかな。荒れるか、と思ったが天然ピアスがペーターに抱きつき白組は騒ぎながら去って行った。ピアスはウサギが好きなんだね、嫌われてるけど。エースがそれを爽やかな笑顔で見ていて怖い。
「名前も動物に好かれて大変だね。でも赤組は結構仲がいいよな。」
『そうだね、社交的というか。表には出さないというか…。ってかエースどこいくの。』
「もう練習は終わったし出掛けようと思って。」
『絶対迷うから駄目!!グレイとエースが組んだら絶対勝てるんだから!』
「えー。迷わないかも知れないじゃないか。」
『絶対迷うから。買い物の帰り忘れたとは言わせないよ。バス停近かったのにエースについて行ったら凄い時間かかったでしょ!ほら、皆のとこに行って。』
「しかたないなぁ、わかったよ。まぁ、今回はペーターさんと敵同士だからそれを理由に戦えるし、トカゲさんとは同じ組だからそれを理由に鍛練してもらえそうだ。迷ってる暇なんてないもんな。楽しみだぜ。」
『なんかどっちも可哀想。』
「いたいた、名前。」
『アリス、どうしたの?』
「私たちは競技に出ないときあそこの台の上にいるの。一緒に行きましょうね。」
『なんで?ってかあそこの台って高っ!!?高すぎじゃない!?あれなんのためにあるの?出来れば登りたくないんだけど…。』
「流れ弾に当たらないように。基本個人種目以外極力出ないように組んでるし一緒の応援席なんかにいたら私たち確実に死ねわよ。」
『ぜひ、登りたいです!!』
そういえば私たちは余所者で銃なんて持ってないんだった。持ちたくもないけど…。でもせっかくなら少しくらい覚えておくべきかな。いや、怖いけども。やめよう、思考がこっちよりになっている。日本人の順応能力ってまじで怖いわ。意思がないのも困りもんだね。とりあえず気休めだけど今日からランニングしようかな、なんて言ったら本番明日だぜ、と爽やかな笑顔で言われた。早くない!?
オマケ
「ナイトメア様。体育祭には行かないんですか?」
「どうせ出ないからな。太陽の下にいるより寮にいたい。」
「じゃあついでにたまってる仕事を片付け「いやー。玉入れぐらいならでようかな!!」
ナイトメア出場決定。