06
来た道を戻って走る。死んだ人にもう一度会えるならそんな奇跡があるのだとしたら言いたい事は山のようにあるからけして逃がしたりはしない。凶暴化した骸骨が次々に襲ってくるが鞭と歌でなぎ倒していく。多少切られたって走りすぎて歌がかすれたって構わない。早く会って顔が見たい、声が聞きたい。私の話を聞いてほしい。

「っ、名前!」

『!!カテリーナさんは忘れてたみたいだけどやっぱり貴方は覚えてるのね私の事。よかった言いたい事があったの。さっきは逃げてごめんなさい、でも私、会いたくて、』

「いいから早く逃げてくれっ。ここの骸骨をみたらわかるだろう?俺だっていつこうなって君を襲うかわからないんだ!他の幽霊みたいに君を忘れるかもっ。君をもう二度と傷つけたくない。」

『…貴方はいつも私の事考えてくれてるのね。なのに私はっ、危ない!!話はとりあえずこっちに!骸骨が凶暴化してる。』

「こんなこと初めてなんだ。そっちは行き止まり。こっちに来て!」

攻撃をよけつつ反撃をして彼に案内してもらって甲板にでる。みればアッシュやお嬢様達が骸骨と戦っていた。物陰に隠れるが彼はどこか苦しそうだ。やはりタロッコの力のせいだろうか。もうきっと会えないだろう。きっともうすぐ消えてしまうだろう。お互いそれは言わなくてもなんとなくわかったからどちらともなく抱きしめキスを交わす。実際に感触があるかなんてのはよくわからなかった。ただ自分の頬が涙で濡れていく。

「…さっき名前の歌が聞こえた。聞こえる方に行ったら本当にいるんだ。びっくりしたしもう聞けないと思っていたからもう一度聞けてよかったよ。綺麗になったね、さすが俺の女だ。」

『愛してた、なのに私は貴方を見捨ててしまったっ。ごめん、ごめんなさい、私は貴方に相応しくない女よっ、ずっと後悔して!』

「名前、俺は君じゃなくて自分を責めていたんだ。命を張って島を守る君は凄く輝いていて俺はそれに凄く憧れていた。でも俺は逆に海賊で命を奪う悪党だった。君の横にいれば自分の罪がなくなって同じような綺麗な人間になれた気がした。」

『綺麗な人間なんかじゃない。貴方を見捨てたっ。』

「あの時タロッコを渡して俺をとっていたら俺はその方が嫌だったよ。君は俺が惚れた時と同じようにその信念を曲げずに島を守った。俺はそれに協力できて嬉しかった。恨んだのは海賊なんて道を選んだ自分。まっとうな生き方してたらもっと名前を幸せに出来た。ずっと一緒にいれたのに。」

『そんなの貴方らしくない。自由で明るくて優しくて、色んなところに飛びまわってなんでも突っ込んで挑戦していく冒険心の強い所が好きなの。普通の暮らしをしてる貴方は輝かない。』

「そっかじゃあ俺は俺でよかったのか。…もっといろんなところに連れて行ってやれたらなぁ。」

強い風が吹き空が光る。お嬢様がタロッコを使っているのがみえたあと骸骨達が次々と姿を消し小さな光となって空へ旅立っていく。戦いが終わったのだ。成仏、そんな言葉が当てはまった。綺麗だ、と見とれている暇はなかった。私の腕の中で光が放たれる。優しく笑った顔に行かないで!と力を込めたが足から少しずつ、そして確実に消えていくその体。行ってしまう、彼が。

『待って!まだ私貴方に話したい事が山のようにあるのっ。行かないで、ねぇ、』

「名前、君が君でよかった。ずっとそのままでい、て…、あまり無茶はするんじゃな、」

『っありがとう!私を守ってくれて!好き、大好きっ、』

「俺も…、す、」

『っ、』

すき、そう音にならぬ間に私の腕から彼は消えてしまった。静かに涙を流す私にパーチェがぎゅうと抱きしめデビトが手を握りルカが優しく頭をなでてくれた。荒れていた海が戻って大好きな島が見えてきた。泣いた後はすっきりして会えてよかったと心から思えた。これでようやく前に進める気がした。



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