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初めてのお味は

バーティと付き合い始めてたしか3週間くらいがたった。日々吐く息が白く、寒くなってきたと感じる日が続いていたにも関わらず、今日は珍しくポカポカと温かい太陽が暗い湖の奥のスリザリン寮にまで光を灯す。

そんなある休みの日、クィディッチの練習もなく課題もなく。私とバーティは図書室の新書の棚から面白そうな本をいくつか持ってきて談話室にて一つのソファで2人一緒に本を読む。つまり何も無い日常だ。
何も無いが、外にでてバカな人たちに関わらずに好きな事だけ出来るだなんてなんて素敵な日だろうか。思わずため息が出てしまいそうになりながらも、しかし私より先に息をついたのは近くのソファに座っていたラバスタンさんだった。

「なあ、そういやお前ら付き合ってるんだよな」

立ち上がり、なぜだか面白くなさそうにダラダラと私たちの方に歩いてくる。

「ええ。付き合ってますよ」

「みえません?」

「見えないんだよなあ」

「こんなにラブラブなんですがそれは」

「ずっと前からラブラブしてたようなもんだろお前ら……」

何をおっしゃるか。私たちが付き合い始めたのは最近のことなのにずっと前とは。まあ確かに? あまりしていることは変わりませんがね。それでも前は繋いでいなかった手を繋いだりとかしてるから前よりは進展はある。

「で、何がおっしゃりたいんです」

「あれだ、お前らがイチャついてるところが見たい。キスしてるところとか」

「そういうことに部外者はあまり首突っ込まない方がいいですよ、レストレンジ先輩」

「しゃあねえだろ。ここ最近退屈してるんだ。お前たちが面白いことをしてそれをからかわないと気がすまねえな」

「退屈は嫌ですよね……」

「ひどい先輩ですね」

バーティ苦笑。私は呆れてしまった。
この人なんだかんだ言って、少なくとも2学年上の先輩たちの中では常識人だっていうのに、こっちの都合はどうでもいいって思ってる時多々ありますからね。全くもって困った人だ。

「大体人前でキスなんか……」

「人前じゃなかったらすんのかお前ら」

「まあしたことはないですが」

「ナマエ、しっ!」

しっ! ってなにそれかわいい。なにそれバーティかわいい……っ!!
ラバスタンさんはにやにやと私とバーティを交互に見ながら口を開く。

「いやー、バーティって案外ヘタレだよな」

「は? なぜバーティなんです」

「こういうのは男からだろ」

そんな訳ないじゃないですか。私だってやりたければやる、多分。キスしたければ私からやりますともええ。それはもうキスだけで濃すぎて全年齢という公共の場でやれば怒られるようなものをね。私がしたいと思ったらします。やったことはないですけど。

大体、ラバスタンさんの考える恋人らしいことって察しはつくけれど私が積極的に聞きまいような内容ではないと思う。

「キスくらいもったいぶらずにしろよー、俺らの前で」

「レストレンジ先輩は楽しんでるだけですよね……」

「そういう人だから、ラバスタンさん」

他人の不幸は蜜の味。いやそれを考えるのは私の周りにはラバスタンさん以外にもたくさんいるけれど。

うーん、それにしてもラバスタンさんがキスキスいってたから本当にしてきたくなってきちゃった。淑女らしくないと母様に怒られてしまうだろうけど、学校だし関係ない。なにより私がしたいわけだし。

「バーティ」

「なに、ナマエ……っ」

きついだろうな、とは分かっていたけど、バーティの胸ぐらを掴む。だってバーティってば最近背丈が急激に伸びてきて、お互い座っているのに顔が遠いんだから。
勢いだけで押し付けようと思っていたのに、思ったより勢いが強かったのだろうか。当てる、というよりはがぶり、と噛み付いているような気分だった。それでも感触は予想してたものよりも柔らかい。

ラバスタンさんが口笛を吹いたのとほぼ同時に口を離す。ほんのりと頬を赤く染めていたバーティに、終わらせたあとではあるものの、つい「美味しそうだな」と考えてしまう。けれどそれを言うわけにはいかず、お礼を言おうとすればこんな言葉が漏れてしまった。

「ごちそうさま」

2017/02/06


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