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文学少年と

セオドールくんは読書家である。図書館で会うとよく机の上に本を山積みにして黙々と本を読む。グラグラと揺れる本の山は少し怖いけどセオドールくん全くと言っていいほど気にしていないから私の胃がきゅうきゅうするだけである。ストレスである。
……誰かが、ナマエでもストレスたまるのかとかそんなこと言った気がする!! 私だってストレス溜まるのに! 溜まりすぎてお腹がきゅるきゅるするのにっ!!

「あの、セオドールくん」

「ん」

「一度に持ってくる本の量を減らさない? 見ていて怖いんだけど……」

「何度も取りに行く時間が惜しい。一日二十四時間、睡眠時間は十五時間、読書の時間はたった九時間」

「待って待って」

ツッコミどころが満載だった。
睡眠時間十五時間…は多分廊下で寝たり、大広間で寝たり、教室で寝たりも含まれているのだろう。それにしたって長すぎだけど。

「他は? ご飯トイレシャワー移動他」

「食事中に本を読むことなら多々あるからそこ。排泄なんて早歩きで数分、シャワーも同じく」

「シャワーくらいゆっくり浴びよ?」

そう言えばセオドールくんはどこがおかしいのかわからないとでもいうようにきょとん、と私を見つめた。美形さんはそんなものでも絵になるからいいね!

しかしこれは予想外だ。睡眠時間が読書の時間より長いっていうのもそうだけど、睡眠読書以外まともな生活を送っていないだなんて……。セオドールは実は化物なんじゃないかな? 普通の人間とはいわせねーよ?

「セオドールくんや、きみはそんなんじゃダメです……っていうか将来仕事することになるんだから睡眠読書以外に時間がないなんてことになったら仕事できないよ」

「金なら腐るほどある」

「だから仕事をしなくてもいいと。ふむ、将来の夢はニートだね?」

「…………まずいな」

お、まずいと思ってくれただと。

ぴたりとページをめくる手を止めて、ふいっと私の顔を見つめた。
いつものクールな顔ではなく若干の不安がよぎり、しかしすぐになにか閃いたかのように「あ」と口を開く。

「なにを思いついたの?」

「仕事をする女性を嫁にする。それで俺は主夫になる。主夫になれば家事をしながら読書ができる」

「それはハイスペックの人のみできることだよ」

っていうか働かなくても困らないくらいお金のあるお金持ちなら屋敷しもべ妖精がいるだろうし多分成立しないよ……。

「条件のいい奥さんは見つからなさそうだね」

「…ナマエ、苦労はさせない。主夫にさせてくれ」

「それがもしプロポーズなら引き受けないよ!? 主夫っていうかセオドールくん(美少年)だとヒモっぽいよ!!」

お金を提供するだけで家事をしないと思われる美少年相手にお金を渡すとかすごいセオドールくんがヒモっぽい。私はセオドールくんに貢ぐだけ……っ!!

「せめて愛を下さい、愛を」

「……本格的にヒモっぽくなるけどいいのか。主夫という名目で家事は屋敷しもべ妖精に任せるからな」

「やっぱり!」

しくしくと泣いたふり。けれどそれにセオドールくんが動揺するはずもなく、再び視線を本にうつしてしまった。
女の子の中でもちょびっとお高い私の涙をスルー! わかっていたけど清々しすぎていっそ好きだよ。

頬を膨らませて、セオドールくんの気を引こうとぺしぺしと彼の作った本の山を倒れない程度に軽く叩いてみせる。

「いざとなればナマエが在宅ワークにすればいい。休憩時間に労いの言葉くらいかけてやれるぞ」

「セオドールくん……それ屋敷しもべ妖精がいなくても私なら家事できそうとかそういう理由でしょう」

「よくわかったな」

「セオドールくん私のこと嫌いだよね!?」

「まさか、結構好きだ」

くすくす
珍しく音を立てて笑うセオドールくん。
なんだか誤魔化された気がしなくもないけれど……。

「ナマエと結婚したら毎日起きてすぐから寝る前まで読書ができるな」

「そんなキラキラした顔で言わないでよ……」

後日、この会話を聞いていたザビニくんに「お前ら付き合ってもないのによく言い合えるな」といわれていっけね! となったのはまた別の話だ。

2016/05/10


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