「綺麗だな、」


光に反射して赤色が輝く。

まるでルビーの海だ。



「零すなよ、蓮二」

真田は苺ジャムの小瓶を日光に透かせて覗き込む柳を見遣る。
さらさらと深緑色の髪が透き通るように白い頬を撫で、長い睫毛が縁取る瞼から覗くビー玉のような瞳は小瓶を映してキラキラと輝いている。

そんな目の前に居る柳を、
世界中の何よりも綺麗だ、と真田は思う。


「……あ、」

柳の声に、ふ、と我に返ると、目の前の柳は頬に零れたジャムを指で拭って舐め取ろうとしているところだった。

「全くお前は……っ」

真田は急いでウェットティッシュを手に取り零れたジャムを拭き取ろうとしたが、それを柳は拒んだ。

「蓮二?」

べちゃり。
ジャムを拭った柳の指が真田の頬をなぞる。

「弦一郎におすそ分け」
「お前な……」

くすくすと悪戯っ子のように柳が笑う。
苺の甘い香りが鼻腔を擽る。
柳は眉間に皺を寄せた真田の顔に手を這わせ、ちろりとジャムを舐め取った。

「蓮二、」

柳の柔らかく温かい舌先が、ぺろり、ぺろりと真田の頬にあるジャムを溶かし絡め取る。

真田の輪郭を覆う細く長い指が、
ジャムに塗れて更に赤く熟す唇が、
微かに震える長い睫毛が、
柳の全てが、
やはり世界で一番綺麗だ。と、真田は思う。

真田は柳の細い腰を抱いて自らに引き寄せると、白く長い首筋に、ちゅ、ちゅ、と幾度も吸い付いた。

薄く開かれた瞼から覗く、熱を帯びた瞳は真田を捕らえて離さない。
その瞳を愛おしく思いながら、柳の頬に付いているジャムをべろりと舐め上げる。
ぞわり、と震えた身体を抱き抱えながら、熱い吐息を吐き出す唇に吸い付いて、舌先で前歯をなぞった。

「げんいち、ろ……っ」

どこまでも甘くくぐもった声と香りが脳内を擽る。


「甘いな、」

真田は自らの唇の端を親指で拭い優しく目を細めると、もう一度、深く柳に口づけた。








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