元治元年、五月某日。
今日の夕食には、焼き魚とお芋の煮付け、人参と大根のお味噌汁、おひたしが出ました。当番は平助君と沖田さんです。

「…………」

「うわぁ…」

「…うむ…」

「……うぇ」

ご飯と煮付けは美味しいです。他が……その、すごい味付けになってました。

「おい、平助……この魚は誰が焼いた?」

「総司だよ」

「味噌汁は誰が作ったんだ?」

「出汁をとったり具を入れたりはオレで、味噌入れたのは総司」

「このおひたしは?」

「……総司」

魚は塩辛いし、お味噌汁は味噌が多すぎるし、おひたしは醤油に漬け込みすぎで、正直に言えばどれもしょっぱい。いつも思うけど、沖田さんは味付けがいい加減過ぎます(私の立場からして、そんなことは口が裂けても言えそうにないけれど)。
皆さんの不平が飛ぶ中、私の隣に座っているクラちゃんの箸も止まっていました。ここに来て初めての食事になる彼女も、沖田さんの味付けには衝撃を受けたのだと思います。

「……アンタは」

と、ふいにクラちゃんは膳に箸を置いて、ふらりと立ち上がりました。それから勢い良く沖田さんを指差して、

「アンタは料理をナメてんのか!!」

広間に響き渡る大声でそう怒鳴りつけました。怒鳴られた本人である沖田さんも、他の皆さんも目を瞬いています。

「食事は心の洗濯!!だってのにこんなマズいもんばっか食ってりゃ心も荒むわ!!味見もろくにせんとテキトーな味付けしやがっててめぇだけが食うならまだしも他人様に出す料理なら丹精込めて作らなきゃ失礼だろうが!!人よりむしろ食材に失礼だ!食材に謝れ!農家の人たちや漁師さん他多数にも謝れ!!」

物凄い迫力でほとんど息継ぎもなく言い切ってから、腰を下ろしたクラちゃんは何食わぬ顔で食事を再開しました。沖田さんをはじめ皆さんは驚いた顔のまま、誰も言葉を発せられずにクラちゃんを見つめています。

「あの、クラちゃん…?」

「ん?何してんのアンタら」

恐る恐る、彼女の名を呼んでみると、クラちゃんは幼い仕草で小首を傾げ、着々と器の中身を減らしていた箸を一時止めました。それから満面の笑みを浮かべて、こう言います。

「いくらマズいって言っても、せっかく出された料理なんだから食べなきゃ。残したら勿体無いでしょ?」

あ、残したら殺される。誰もがそう悟った瞬間でした。





(料理に関しちゃそれなりのこだわり持ってます)






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