果たして、倉庫には人がいた。武装した男たちが四人、中央に積まれた木箱の上に腰掛けている。人質らしき男女二人は倉庫の隅で震えていた。
男たちと人質が離れているのをいいことに、中に押し入って早々リオンは双銃を構えた。

「なっ、何者だお前ら!!」

「東方軍だ。早速で悪いが、大人しく投降してもらおう」

愛用の剣ーー日本刀タイプの業物だ。初めて見た時、リオンはこっそり感動したーーをスラリと抜いたセツナが、冷静そのものの口調で告げれば、男たちは一斉に立ち上がる。人質の元へ向かおうとした男の足元で、リオンの放った銃弾が跳ねた。

「少尉」

「了解」

呼びかけに頷き、すぐさま動く。男たちに銃口を向けたまま駆ければ、人質の元に着くのは容易だった。彼らを背に庇うように立ち、なお敵を警戒して銃を構えると、彼らは唯一の出口を塞ぐセツナを見る。

「ちぃっ、氷の錬金術師め、仲間を連れて来やがったか」

「予想出来たことだろう?」

にぃと弧を描いた唇。剣舞のように緩やかに空を切って、丹念に磨かれた刃が獲物を見定める。セツナの動きに応じて、長い銀髪とコートの裾がふわりと舞い、武器を持ち出した男たちや顔を上げた人質の二人、そしてリオンでさえその美術品のような立ち姿に一瞬呼吸を忘れた。

「さあ、かかってくるがいいよ」

あくまで冷淡に、しかし微笑みを浮かべて彼女が言う。その瞬間、弾かれたように男たちが駆け出した。

「な、ナメやがってぇ!!」

放たれた銃弾は扉に埋まった。それが狙っていた筈の人間は上体を傾けながら床を蹴り、最も扉に近い場所にいた男を間合いに捕らえる。刀の峰を首筋に叩き込めば、短い呻き声と共に床に沈んだ。
力を失った手から零れた拳銃を蹴り上げ、二人目の男が構える銃に見事命中させる。それを取り落とし、動揺して拾い上げようと身を屈めれば、一人目と同じように首筋を叩かれてまた倒れた。
流れるような一連の動きに呆気にとられていた男は、銀髪が視界の隅、自身の懐で揺れたのに気付いて我に返り、うわぁと喚いて腕を持ち上げる。しかし動きを既に読んでいたセツナは、愛刀を床に突き立て、空いた両手で持ち上げられた男の腕を絡めとった。男の足はあっさりと払われ床を離れ、体が浮いたと認識した直後、今度は背中から床に叩きつけられる。暫し焦点の合っていない目が宙を巡った後、落ちるように男は意識を失った。これが三人目である。







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