そんなわけで、人身売買組織のアジトに忍び込んでみた。

「なにもんだテメェ!!」

…ら、いきなり修羅場でした。

「……何やってんだよ、あいつ…」

リオンは心の底から呆れの溜め息をズハーッと吐いてみた。その隣のエドワードも似たような顔をしている。

リオンが抜け道になりそうな通路を記憶していたため、二人はその通路を使いながら一階から順に内部を探ろうと思っていた。
しかしガラスの割れた窓から中へ侵入してみれば、先のような怒鳴り声が聞こえてきたではないか。まさか見つかったのかと肝を冷やすが、辺りには誰もいない。では何事だろうかと声がしたほうに近付き、身を隠しながら窺ったところ。

「何だコイツ!」

「撃て!撃て!撃ち殺しちま……うわぁぁああ!!」

銃を手に奮闘している成人男性たちと、それに囲まれながら舞い踊る少女を発見してしまった。

「あ、リオンとエドじゃーん」

空色の長い髪を揺らして跳んだり跳ねたりしている少女に呆れかえっていると、こちらを向いた少女と目が合った。そして上機嫌そうに名を呼ばれたことで、また溜め息が出た。
仲間がいるのか、と数人の男が辺りを見回す。別の男がこちらを向いたままの少女を背後から拳銃で狙うが、一発の銃声の後、彼の手から銃は弾き飛ばされてしまった。

「ったく…視察行ってたんじゃなかったのか?」

男たちの視界に現れたリオンが、少女にそう言いながら発砲したばかりの拳銃を下ろした。少年の登場に驚いた男たちが銃口を向ける。

「いやね、視察先で失踪事件が続いてるってんで調べてたら、ここに行き着いたんだよ」

「あー、なるほどな」

納得の声はエドワードのものだ。彼が両手のひらを合わせ、床に手をつくと、そこから現れた大砲に男たちは震え上がった。銃を捨て一目散に逃げ出すが、

「だからって、いきなり潰しにかかるなよ。人質でもとられたらどうする気だよ」

天井に銃口を向けたリオンが発砲すれば、衝撃を受けたスプリンクラーが誤作動を起こして大量の水を撒き散らす。頭から水を被りながらも走るのをやめない男たちの足は、パキパキと音を立て始めた床から離れなくなってしまった。何事かと見下ろせば、どの男も、両足が床と一緒に凍り付いている。勢いよく振り返った先で、少女が濡れた床に両手をついていた。

「捕まってた人はみんな安全な場所に保護しといたよ。だから、あとはアイツらをボコすだけ」

そして立ち上がった氷の錬金術師、クライサ・リミスクは、満面の笑顔を男たちに向けた。







[ prev / next ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -