「ーーロザンヌ、アメリア、シア、エレン、リアナ、イザベラ、メリル、ジェシカ、ユリア、シュナ、アンジェラ、ミレイ」

「おー、全部合ってる。さすがだな」

「ユリアって人はハボックの彼女だった人だよな」

「ああその通りだよ畜生!」

「……何をやっているんだね」

この司令部で一番偉い人の登場に、学生の休み時間のような空気だった司令室が一瞬にして静まり返る。ハボックをはじめ男たちが軋んだ音を立てそうな動きで振り返り、リオンが何食わぬ顔で視線を上げた。

「あ、いや、これは…」

「アサヌマ少尉、報告してくれるな?」

「俺の記憶力のテストだそうですけど」

「それで、君が暗唱していたのは何だね」

苛立った様子のロイには、答えなど聞かなくてもわかりきっているのだろう。伏せられた目の上で寄せられた眉が引き攣るような動きを見せている。
対してリオンは冷静に、後退り始めたハボックが後ろ手に持ったものを指した。

「大佐の机の引き出しに入ってた、アドレス帳に書いてある女の人の名前を上から順に」

言い終えるか否かのタイミングで、ロイの右手が音を立てる。直後、ハボックのくわえたタバコが一際大きく燃え、そして灰になった。

「あっ…ぶないじゃないっすか大佐!」

「ああすまん、手が滑った」

「どんな言い訳ですか!」

ま、報復があんのはわかりきってたけど。
既に他人事にして書類処理に戻っていたリオンが、同類のブレダやフュリーたちと目を合わせて肩を竦めた。誰もハボックを助けてやるつもりはない。言い出しっぺは彼だったのだし、何より飛び火しちゃかなわん。

「それで、君は全部覚えたのかね?」

……と思ったのに、向こうから話しかけてきやがった。リオンは心中で舌打ちし、ゆっくりと顔を上げた。

「…………ああ」

「ふむ。さすが瞬間記憶能力者だな。ファルマン准尉といい、そういった人材に困らなくて助かるよ」

「……なんだよ」

左手に持っていたペンを置く。ロイは先程までとは逆に上機嫌そうに笑んでいる。彼がそういう言い方をするのは、何かしら企んでいる時だ。

「仕事だ。ついて来たまえ」

(やっぱり……)







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