「こらぁ!誰が豆だ!」

「うわ何、ビックリした!」

五階でテロリストたちを相手に奮闘していたクライサは、ちょうど背中合わせになっていたエドワードが突然大声を上げたのに驚いて振り返った。
何事かと様子を窺おうとすれば、彼は『チビ』呼ばわりをされた時のお馴染みの表情をしており、クライサは首を傾げるほかない。テロリストの誰かがそんな発言をしたのだろうか。

「ちょっと、エド…」

「おらぁっ!」

「わぁっ!?」

とりあえず落ち着けとその肩に手を置いた途端、鋭い裏拳が迫ってきて咄嗟にしゃがみ込んだ。すると、クライサを襲った筈の鋼の拳は、背後にいたテロリストに命中したらしく男の鈍い声が聞こえた。

「エ、エドワードさん…?」

明らかに殺気立っているエドワードに冷や汗をだらだらと垂らしながら、クライサはゆっくりと後退っていく。何が引き金になったのかよくわからんが、今の彼を刺激するのは非常にまずいと思う。だがそんなことをテロリストたちは知るわけがないので、敵はお構い無しに襲いかかってくる。エドワードが吠えた。

「どきやがれ!オレは、オレを豆呼ばわりした奴のところに行くんだぁぁぁああ!!邪魔すんじゃねぇっ!!」

猛獣は視界に入る人間を手当たり次第に殴り、蹴り飛ばし、部屋中を駆け回る。敵味方の判別もついていないのか、問答無用でクライサにまで襲いかかってくる手足を彼女は必死に避ける。テロリストたちもエドワードに対することで精一杯で、彼から目を離せないクライサに攻撃を仕掛ける者はいない。

「ちょっ、待っ…エド、ストップ!ストーップ!!」

錬金術まで使って暴れ回るものだから、今すぐ白いタオルをリングに投げ入れたいところだが、普通に無視されそうだ。
エドワードはクライサの声に止まるどころか聞こえた素振りを見せることすらなく、やがてその階にいた彼女以外の全ての人間は床に倒れ伏して沈黙した。

あれー?あたしに暴れ馬ってあだ名つけたの誰だっけ…あたしなんかよりよっぽど暴れ馬らしい人ここにいたんだけど。
現実逃避気味なクライサに構わず猛獣は四階への階段を下りていく。その後すぐに聞こえた

「誰だ!誰がオレを豆呼ばわりしやがった!出てこいコラァァア!!」

…という声に漸く現実に帰ったクライサは、エドワードに倒されたテロリストたちに同情し、先程一階等で自分が相手をした者たちに心の中で謝罪しながら少年の後を追った。









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