車を降り、二手に分かれて互いに援護し合いながら廃工場に近付いたロイたちは、建物の全貌を見て絶句した。

「……なんだ、あの建物は!」

「すっげぇな、こりゃ……」

建物の下半分は、一階と三階にある巨大な穴以外に窓も扉もなく、まるで四角い箱のようになっている。ミミズ腫れのようなうねりが生じた壁、外に取り付けられた階段は捻れ、所々に凍りついた跡が見られた。

「エドワードと姫の仕業か…」

「兄さんとクライサ、やるとなったら派手にやるから…」

あの二人が、囚われたまま何もしないわけがないことくらいはわかりきっていたのだが。建物全体が変貌する程の暴れっぷりに、幾らかの安堵と同時に多大な呆れで溜め息が出た。





第八章





二人の救出チームとして組んだロイとアルフォンス、リオンは、ハボックたちの援護を受けながら建物に走り寄り、一階の入口脇の壁に背をつけた。
慎重に内部を覗いてみるが、テロリストの姿はない。……いや、いた。いたのだが、皆地獄でも見たかのような顔で倒れていたのだ。

「……リオン、どう思う?」

「姫だな、確実に」

エドワードはこんな、相手に恐怖を植え付けてやるような戦い方はしないだろうから、これはクライサの仕業に違いない。彼らの表情が語る通り、地獄を見せてやったのだろう。方法は想像したくもないが。

奥にある階段がちゃんと二階に繋がっているか確認に向かったロイは、手摺のついていないその階段がご丁寧に一段一段氷が張られているのを見てガックリと肩を落とした。彼の様子に何事かとそちらに歩み寄った二人も、ロイと同じような反応をした。
そのくせ二階に繋がる部分はしっかりと塞いであり、テロリストがここを通ることは出来ないようになっている。万一障害が破られた時のために用意されたトラップだというならまだいいが、彼女の場合、救援が来るとわかっていてわざわざ仕掛けていったお茶目すぎる悪戯の可能性が高すぎる。…まあ、前者だったとしてもタチが悪いことに変わりはないが。

「あいつ…完全に楽しんでやがるな、この状況」

「どうしよう…ボク、ちょっと尊敬しそうになってきた…」

「やめておきたまえ。あいつに憧れてもロクな事にはならんぞ」

仕方がない。外のねじ曲がった階段やら凸凹した壁をアスレチック気分で登っていくことにして、ロイは動きやすいように上着を脱いだ。









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