エドワードとクライサの前に再びあの男が現れたのは、彼らが三階の窓や扉をすべてふさいだ後のことだった。
武装した男たちからの銃撃を防ぐために錬成した壁が吹っ飛ばされ、何事かと目を向ければそこには拳を突き出したゲイルの姿。エドワードとクライサの顔が大きく歪む。

「やっぱり会っちゃったか…!」

その怪力や何をしでかすかわからないことから、出来れば彼には会いたくなかった。とは言え、会ってしまってからではもう遅い。こちらを見てニタァ、と笑った男に向き直りながら、階段の位置を確認した。
二階では万が一飛び降りられてしまうかもしれないからと、念のため三階までふさいだのだ。これ以上、下の階におりさせるわけにはいかない。

「エド、ここで止めるよ」

「おう」

ゲイルと対峙するエドワードの横で臨戦体勢をとりながら、クライサは他の男たちの動きにも注意する。ゲイルが拳を振り上げ、エドワードが武器を錬成しようと両手を合わせた時、男たちの中から怒鳴り声が上がった。

「ゲイル!列車が来るんだぞ!小僧たちなんか放っておいて外に出ろ!」

「げへへ、そうだったぁ」

少年らに向いていた拳が壁に向かう。鉄の棒を錬成したエドワードは、壁に穴を開けようとしたゲイルの右腕にそれを振り下ろした。
ここは三階だ。普通の家とは違い、一階一階の天井が高い工場なのだから、三階ともなればかなりの高さになる。まさか飛びおりはしないだろうが……いや、この男ならやりかねない。こちらの予想の斜め上を行く奴なのだ、いずれにせよここで食い止めた方がいい。

「痛いな〜」

「……!」

「なっ……」

エドワードの持った武器は、確かにゲイルの右腕に命中した。だがその腕は、鉄の打撃をもってしてもびくともしなかった。
クライサたちは驚きに目を見開き、そのためにエドワードの反応が一瞬遅れる。ゲイルが空いている左手で棒を掴み、エドワードごとブンと放り投げたのだ。

「エド!」

床に落ちた衝撃に息が詰まる。クライサはそちらに駆け寄りかけ、しかし男たちが動く気配を感じ取ると身構え直して牽制した。この状況で、武装した男たちに囲まれるのは避けたい。

「がはははっ。ばいばい、ネズミちゃ〜ん」

ゲイルの笑い声が聞こえてそちらに目を向ければ、丁寧に手を振った彼が壁に突進していくところだった。しまった、と顔を歪めるクライサとエドワードの前で、ゲイルの体当たりを受けた壁はまるで薄い紙が破けるかのように向こう側へと開く。
射し込んだ光に手をかざしてゲイルの行方を追えば、逆光の中、巨体がふわりと舞った後に下へと落ちていくのがはっきり見えた。

「あいつ…!」

「くそっ!」

悔しがるエドワードらの耳に遠くから汽笛の音が聞こえてきたのは、その直後だった。









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