エドワードとクライサがいくら小柄な子どもだからと言って、そう簡単に騙せる年齢ではない。外見年齢でさえ十代には見える筈だ。
それに一度に二人も連れ去ったというのもおかしい。

「エドワードのほうは知らねぇけど、姫のほうは口封じの意味もあったんじゃないか?」

黙り込むロイにリオンが言った。そういえばクライサが司令部に連絡を入れたという時、電話口に出たのは彼だったのだ。

「あいつはアンシーって子どもと誘拐犯のことに気付いてた。それを大佐に伝えようとして、犯人に邪魔されたんじゃないか?」

「それじゃあ…」

口封じ。その言葉にアルフォンスが不安げな声を漏らす。しかしリオンは彼に微笑みを向けた。

「あいつがテロリストなんかに殺されると思うか?今頃奴らのアジトで大暴れしてるだろ」

エドワードが誘拐された意味がよくわからないが(そして彼の身内が東方司令部にいるという言葉も)、まあテロリストたちは保険の意味で拐っていったのだろう。どっちにしても、騙せない年齢の子どもを連れて、朝早くの目立つ時間帯に一緒に出ていった、というこれまでの事件での慎重さを裏切る行動から、彼らがここで誘拐事件を終わらせるつもりだということがわかった。そして、エドワードとクライサを生きて帰すつもりが無いことも。

「なら、繋がってる筈のテロ事件も終わろうとしてんだな」

つまり、犯人にとっての目的が完遂されようとしているのだ。
ロイはその目的に気付いたらしく、全員に指示を出した。ハボックとブレダには、軍の武器を受注している工場の全てに、武器の運送状況を尋ねろと。ファルマンとフュリーには、現在軍が使用している倉庫の確認。

「リオン、爆破されたレールと施設は全て記憶しているな?」

「ああ」

「ならホークアイ中尉と、生き残っている線路の再確認とその回りの建物のチェックだ!」

「「了解」」

慌ただしく動き始めた司令部を横目に、兄たちの身を案ずるアルフォンスがロイを窺う。彼は力強くこう返した。

「大丈夫だ。鋼のも氷のも見つかるし、事件も全て解決する。長かった騒ぎも今日で終わりだ」

やがて全員が情報を集めて戻ってくると、ロイは皆に告げる。一連のテロ事件と誘拐事件は、やはり繋がっていたのだと。
誘拐事件で要求された金は、テロの実行犯を雇うためとその他武器の購入などの資金源に使われていた。
そして無差別に行われていたように見えるテロの目的は、工場から軍部に送られる武器や火薬を手に入れるためだ。

「それも各支部に送られる少量のものじゃない。それらを全て集めた大量の武器だ!」









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