扉を開けて数拍、リオンは床に転がる無数の紙飛行機に目を丸くした。

「……マスタング大佐。過激派の件がまだ片付かないとはいかがなものか。君自身の進退問題に発展する前になんとか……」

棒読み気味の声が言葉の途中で切られ、白い紙が男の手元で飛行機に変わる。投げられたそれは風も無い室内を滑空し、リオンの足元に墜落することなく滑り落ちた。

「…大佐へ。口ではいくらでも言える。結果を出したまえ。良い報告を待っている…」

そしてまた新たな紙飛行機が空を飛ぶ。リオンは床に散らばっているそれが全て上層部からの『励ましの手紙』なのだと理解し、とりあえず扉を閉めた。

「で、なんかわかったのか?」

「……地位が上がれば上がるほど、よく飛ぶ」

「へぇ」

連続テロ事件と、それに関連していると思われる誘拐事件の捜査は、相変わらず難航していた。
休む間も惜しんで走り回っているというのに困ったものだ。リオンは他人事気味に思いながら、足元の紙飛行機を拾って軽く投げる。それはロイの座っている机に当たり、カサリと音を立てて床に落ちた。

「先日の過激派グループについてはどうなった」

ロイの問いに、リオンは調査の結果を纏めて返す。
貨物発着場での事件でロイが見たという過激派グループのマークをもう一度調べてみたが、どれも以前は派手に活動していたものの、今では既に(主に某暴れ馬によって)潰されていたり、ここまでの規模の連続テロを行えるほどの力は無かった。
やはり彼の言うように、こうしたグループに資金を渡して怪我人を出さないよう命令し、指揮を執っている者がいるのかもしれない。
だが。

「上層部は、単独グループの犯行が重なっただけとか、ゲイルって奴が首謀者だって考えて、その見解を世間に発表するらしいって話を聞いてる」

「……お前はそれで納得出来るか?」

「あんたと同じだよ」

「……そうだな」

あれだけのテロを起こしておきながら、一度も一般市民の怪我人は出さず、犯行予告は実行ギリギリに出す。例え模倣犯が現れたとしても、ここまで同じにするには無理があるだろう。別々の単独グループの犯行とは考えられない。
ゲイルの件も然りだ。彼が首謀者でないことはクライサたちが確信している。









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