『テロ事件と誘拐事件が繋がってるかもしれないってのは、俺も一理あるんだけどな』
「リオンも?」
『ああ。一理っつーか五理ぐらい』
「五理でも六理でもいいけどさ、なんで?」
貨物発着場でロイたちが得た情報では、いくつもの過激派グループが集まって行動を起こしているように見える。
そしてクライサたちが対峙した男、ゲイル。一般人には怪我をさせない筈なのに、彼はロイだけでなく私服姿のクライサとエドワードまで狙ってコンテナを倒したのだ(避けなければ確実に死んでいたところだ)。おそらくゲイルは首謀者ではない。
『そんな荒くれ者に言うことを聞かせるために金を使う。けど人数が多いほど大金が必要になるから身代金誘拐をする。金は各グループに分配されるから、当局の目にもつきにくい』
「あ、本当だ。ばっちり繋がってんじゃん」
『だけど、奴らの目的まではわかんねぇんだよ』
ひとつひとつのテロは嫌になるくらいきっちりしていて尻尾を掴ませないし、一般市民の怒りは軍部に向くし、ますます情報収集は困難になるし。グループの力を誇示し軍部の無能っぷりをさらけ出すのが目的なら、一つ事件が終わった後で堂々と名乗る筈なのに、彼らは足跡を消しては次のテロを起こし、また消えるのを繰り返している。
『俺たちが考え過ぎてるだけで、単に世間を騒がせたい愉快犯の仕業かもな』
「……本当にそう思ってる?」
『まさか。俺も大佐も納得いってねぇよ』
「だよね。あたしも」
納得はいかないが、こうして考え込んでいても、答えは浮かんできやしない。
とりあえず捜査の現状を聞くことは出来たので、今はこれで良しということにしよう。これから必要なのは更なる情報であり、憶測にすぎない推理ではない。
「それじゃ、またこっちから連絡するね。お兄ちゃんによろしく」
『かわらなくていいのか?』
「あー、いいよいいよ。東方司令部司令官殿の邪魔を妹がするわけにはいかないでしょ。リオンも大変だと思うけど、頑張って」
『ああ。エドワードとアルフォンスによろしくな』
「うん。じゃあね」
受話器を置いて電話を切った。ふう、と溜め息をついて、得た情報を頭の中で整理する。一から考え直しても、やはり、相手の目的を掴むことは出来なかった。
(もう少し情報が集まらないことにはなぁ…)
ひとまずこの問題は横に置いておこう。気持ちを入れ換えたクライサは、エドワードたちのいる大部屋に戻ることにした。