「それで、そっちはどう?」

グレッグに案内されたのは、飲み屋も兼ねた、二階建ての大きな宿屋だった。一階が飲み屋になっているらしく、店の真ん中に大きな四角いテーブルが置いてあり、町の者らしい、男たちが楽しそうに飲んでいた。
グレッグが一人で軍の荷物を片付けていると知った時は、町の者はどんなに冷たい人なのかと思っていたが、どうやらそうではないようだ。すっかりできあがっている男たちは明るく笑いながら、君たちも飲みなさい、と三人をテーブルに誘った(未成年だと言っても気にした素振りはなかった)。
宿の主人の奥さんに連れられ二階へと上がる時も、荷物を置いたら飲みに来い、と酔っ払いの声が追いかけてくる。奥さんは申し訳なさそうにしていたが、エドワードたちは平気だと笑った。

この町は特に何も無い所だが、都会に出る列車と田舎に行くものを繋ぐ駅なので、旅人がよく訪れる。
そのため、町の者は誰にでも友好的な人ばかりで、旅人を巻き込んで毎晩大騒ぎしているらしい。

夕飯を食べに一階へ下りると、予想通り、酔っ払った男たちが絡んできた。奥さんに二人分の食事を頼み、エドワードはコーヒーを持ってアルフォンスと共にテーブルにつく。クライサはすぐには人の輪に入らず、奥さんのそばで男たちの明るい声を聞いていた。

情報収集や男たちの相手はエドワードとアルフォンスに任せ、先に食事を終えたクライサは奥さんに頼んで、大部屋の外の廊下に設置された電話を借りることにした。受話器を取った相手は兄ではなく、近い年頃の少年軍人。若干疲れた声のリオンに、少し同情した。

『どうもこうも、死ぬ程忙しいとしか言い様が無いな』

「進展は?」

『無い』

休む間も惜しんで片っ端から捜査しているというのに、連続テロ事件の犯人は絞りこまれていない。
今なお多忙を極める司令部では、ロイは一般人の苦情の手紙や上層部からの嫌みの手紙に埋もれ、時折リオンに八つ当たり気味な仕事を押し付けているとかいないとか。

『テロ事件の目的も見えないし、大佐が関係があるかもって睨んでた誘拐事件からも、今のとこ手掛かりは無し。市民からの情報も得るのに一苦労だし……参ったな、こりゃ』

「棒読みに聞こえるんだけど。他人事じゃないんだからさ」

『他人事にしたいんだけどな』

今でこそ兄弟と行動を共にしているが、本来クライサは東方司令部の一員だ。だから一応各地でテロや誘拐に関する情報を集めたり、こうして軍からも現状を聞いたりしているが、残念ながら大して役に立てそうにない。









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