予定より二日遅れて、三人の旅は再開された。
しかし次に向かった町で彼らを迎えたのは、賢者の石らしき物が別の者の手に渡ったという事実。そしてそれを追ってまた別の町に行けば、石はただの赤い宝石にすぎなかった。

やはりアテが外れればガッカリもするし、ここ最近続くタイミングの悪さに正直嫌になってくる。
だが先日のように遠くまで行って長い期間滞在するのに比べれば、今回は三日で回れるような町だったからまだマシだろう。そう思うことにし、気を取り直して。日が暮れる前に宿を確保すべく、とある駅で列車を降りた。





第五章





そこは東部周辺によくある、ごくごく普通の町だった。近くには小さな川が流れ、町には緑が点在する。その合間から漏れる家々の明かりに、懐かしさが込み上げてきそうになる。
だが、エドワードたちは、その駅にそぐわない景色を目の当たりにした。屋根の無い石畳のホームに、隅々まで並べられ積み上げられた木箱が広がっている。そしてその中で、木箱を移動したり並べ替えたりしている一人の男。

この荷物は本来、先日テロによって破壊された軍の貨物発着場を経由し、各地方の軍施設に届けられる筈だったものだ。その中身は武器や弾薬。緊急用にとこの駅が荷物の積み卸しに使われているのだが、ここは倉庫が無いため、届け先に行く貨物列車が来るまでホームに放置されているらしい。
だがこれでは駅を使うのに不便だからと、彼(グレッグというらしい。三十代か四十代くらいの男性だ)が一人で箱を整理しているのだそうだ。

何故手伝う者がいないのかと問えば、テロに対する軍の現状を知っていれば容易に辿り着けそうな答えが返ってくる。
最近のテロ騒ぎで軍の不手際に頭に来てるから、その軍の荷物なんて放っておこうーーというわけだ。

グレッグは、不穏分子との戦いで負った怪我を理由に退役した、元軍人なのだそうだ。現在の軍の苦労が分かるからこそ、こうしてたった一人で、些細なことかもしれないが、同じ境遇の彼らを応援している。
かつての仲間を思うグレッグの気持ちに共感したエドワードは、彼の手伝いをすることにし、アルフォンスとクライサもそれに続いた。エドワードもクライサも、軍が好きかと問われれば、正直頷くことはしない。それでも、仲間意識はある。

「大佐の手伝いを直接出来なくても、これくらいはできっからな」

「ホント、ささやかな手伝いだけどね」

積み上げられた箱の中に、東方司令部に届けられるらしいものを見つけ、クライサはエドワードたちと密かに笑い合った。









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