執務室を出た頃からずっと考え込んでいたかと思っていたら、今度は『予感』か。文句を言ったり笑ったり考え込んだり、とにかく忙しい奴だ。
「……って言っても、嫌な予感限定なんだけどね」
「で、今回もその予感がしてるってわけか」
「……うん」
漸く旅を再開出来るというのに、未だにその表情は険しい。
テロ事件はまだ終わらない。犯人たちが捕まるまでは当然終わったとは言えないのだが、そういったことではなくて。
「…また、巻き込まれそうな気がする」
「……なるほど」
クライサたちはこれから、司令部を離れ軍とは関係の無さそうな村に向かう予定だ。
線路の爆破により列車の運行が乱れれば、それは旅人であるエドワードたちにも関係するが、軍の施設を狙ったテロには巻き込まれることはないだろう。
「お前たち自身が軍の関係者だとバレなければ、そうそう危険な目には遭わないだろ」
「甘いねぇ。可能性の低い危険を呼び込むのが、あたしとエドなんだよ」
「それは決して自慢にはならないからな」
とは言っても、軍の評判が下がっている今、下手に自分たちの身分を明かすようなことはしないと思うが。
「…万が一ってこともある。お前とエドワードはテロリストの一人に顔を見られてんだ。気は抜くなよ?」
「やだな、わかってるよそんなこと」
「んなこと言って、誘拐されたりすんなよ?……ああ、いくら小さくても幼児には間違えられないか」
「アンタはまたそういうこと言う!なんで一言多いかなぁ!?」
「お前には言われたくないし、あえて答えるならお前の兄貴どものせいだよ」
「すいません!」
「心当たりはあるんだな」