情報を欲しがる軍に協力するため、直接テロリストの一人と鉢合わせしたクライサたちは東方司令部で二晩を過ごすことになってしまった。当然旅の再開は先延ばしにされ、足止めを喰らうことになったというわけだ。

「テロ犯の人相や出で立ちなんかを、何度も何度も繰り返し話すハメになるし……本当に気の毒だと思わない?」

相変わらず忙しさに襲われている司令官の執務室。革張りのソファーにうつ伏せに転がりながら、溜め息混じりの言葉を背もたれ側に立つ男に投げかけた。

「気の毒って言ってもなあ…軍側としては、やっぱ少しでも情報は欲しいしな」

「だったら大佐から聞けばいいじゃん。あたしたちまで引き止められる意味がわかんないよ」

「見ればわかるだろう。私はこの通り忙しいんだ」

狭いソファーの上で寝返りをうつよう仰向けになり、頭上に見える茶髪に視線を定める。青に身を包んだ茶色はこちらに背を向けているため、少年の顔は窺えない。

「ねぇリオン、もう行ってもいいよね?」

「……そうだな。大体情報はまとめられたし、もういいだろ。エドワードたちにもお疲れって伝えといてくれ」

「りょーかい」

ヒョイと身を起こし床に足をつくと、少女は少年を振り返る。彼は変わらず書類に目を落としており、こちらを向く素振りも見せない。ちぇ、と小さく漏らしてから、クライサは上司の机の前へと足を進めた。

「……じゃ、今度こそ行くね」

「ああ、気をつけてな。兄弟にもあまり無茶はするなと伝えておいてくれないか」

「ん、わかった。早く事件解決出来るといいね」

頑張って、と満面の笑みを浮かべる少女。兄の顔で微笑んだロイに

(シスコン…)

ちらりとそちらを盗み見ていたリオンが、呆れ顔で溜め息を吐く。

「では、行って参ります」

「ああ、行って来い」









「どうした?難しい顔して」

エドワードたちの待つ司令室へ向かうため、執務室を出たクライサは廊下を歩いていく。その隣にはリオン。彼もまた上司の自室での用事を終え、司令室に戻らなければならないのだ。

「……あたしの予感ね、凄く当たるの」

「は?」










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