「助かった。少しでも情報が得られただけでも、良かったよ」

犯人は逃したが、爆弾は止められた。その顔や持っている武器、爆弾を仕掛ける時のやり方など、手に入れられた情報も多い。今回は大きな収穫だったといえるだろう。
駅構内の避難が完全に終わったのか、駅の方角からは指揮を執る兵の声が聞こえてきた。遠くに見える駅の建物から届く喧騒を聞きながら、エドワードは伸びをする。

「さて、さっさと退散して、オレたちは旅を続けますか」

「私も戻ろう」

足を踏み出そうとする二人の後ろで、クライサは違和感に眉を寄せた。エドワードたちが歩き出しても、少女は立ち止まったまま動かない。

「クライサ?」

「どうかしたか?」

投げかけられる問いには答えず、素早く振り返る。見つめる先はコンテナの上。
クライサの行動に疑問に感じ視線を上げたロイたちは、そこに男がいるのを見た。テロリストの一人だと気付くのと、コンテナの上に登った巨体が三人を見下ろしたのはほぼ同時だった。

「おやおや?忘れ物を取りにきたら、ネズミを見つけちまったぞ〜」

ニヤニヤしながら物珍しそうに三人を眺める男に、クライサたちはどうしたものかと戸惑った。
もう少し焦りがあっても良さそうな男からは、残念ながらそんな様子は微塵も感じられない。更に間延びした話し方をされ、ロイたちは緊迫感が薄れそうになってしまった。

「……アンタ、ここ最近の連続テロの犯人だね?」

すぐ傍のコンテナに音を立てずに登ったことから、この男の油断ならない運動神経の良さが窺える。事実、男の大きな身体と太い手足がかなり鍛えられているのが見て取れた。
構えるクライサの言葉に返答は無く、黒い髪も髭も伸ばしっぱなしの男は不意に顔をしかめる。

「あ、せっかく用意した爆弾を解体しやがったな。作戦失敗じゃないか〜」

「爆弾見つけてそのまま放置するわけないでしょ。綺麗にバラさせてもらったよ」

三人の足下に爆弾が散らばっているのを見つけたらしい。相変わらず間延びした口調の男に、いつもの強気な様子でクライサは返す。だが男は特に何の反応も起こさなかった。









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