クライサの活躍によって、テロを行う武器や組織形態はなくなった筈だ。他のグループの傘下に入ったということだろうか。

「どうする?」

「下手に動けないでしょ」

他にも見張りがいるかもしれない。しかも相手は武器を持っている。そこに、いくら彼らが国家資格の所有者だからといって、三人だけで乗り込むのは危険だ。
ロイの立場上、危険なことは避けるべきである。エドワードとクライサは、考え込むロイの返事を待った。

「……行こう」

暫くして、ロイが口を開く。
フライング気味な行動ではあるが、ここで何もしなければ行き詰まった捜査に進展はない。

「ここで行動することが重要だ」

犯人の手掛かりが、今は極端に少ない。多少の危険を犯してでも情報を得たいというのが、実のところロイの本音であった。

「君たちはこれ以上…」

「ついてくるなとか言うなよ、大佐」

「もう今さらだからね」

ロイの言葉を、エドワードとクライサの声が制す。彼もわかっているのだろう、呆れたように溜め息をつくものの、それ以上は食い下がらなかった。

「……よし、行こう」

三人は腰を上げると、姿勢を低くしたまま足早に移動し始める。
塀にピッタリ寄り添うようにして置かれたコンテナの近くで足を止め、慎重に頭を上げた。先程の見張りの男たちはコンテナの影。ちょうど視界には入らない。

塀に手をかけグラつきがないことを確認すると、まずロイが一気に乗り越える。続いてエドワード、クライサもヒラリと飛び越えた。

コンテナの角からそっと様子を窺うと、見張りがゆっくりと砂利を踏んで歩く音だけが聞こえてくる。

「貨物列車の間に駆け込むまでの時間、見張りの目をそらさないとな」

「でも砂利を走ったら結構音がするよ」

「二人とも」

クライサの声に、エドワードとロイはそちらへと目を向ける。彼女の指し示す先、砂利の足元を同時に見て、顔を見合わせた。その意味を理解したのだ。

「原始的な手段だけど」

「一番手っ取り早い方法だからな」

ロイは屈み込むと、その手に一つの石を握った。










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