人より険しい道を歩けば、ついてくる友人は少なくなっていく。なら尚更、自分の感覚を信じるべきでは?友人の言葉を鵜呑みにしないまでも、耳を傾けるくらいはしても損はないだろう。
「友達ねぇ…」
エドワードとクライサは、互いに顔を見合わせる。
「確かに友達なら、信じられるよね」
「だろう?」
「で、大佐の友達はあれを怪しいと言ってるわけだ」
風に吹かれて揺れ、塀にまとわりつく白い布を眺めた。
貨物列車発着場の周囲には、流通に便利なように倉庫が建ち並んでいる。クライサとエドワード、ロイがいる辺りの倉庫は、出入口から遠いためか使われていない。または滅多に必要としない物ばかりが入っているのだろう、人の気配はなかった。
ロイに続き、エドワードたちは腰を低くしたまま白い布のある位置に近付いていく。
「予告時間まであと十三分か」
一般市民の避難優先で人手の少ない今、爆弾を探したり犯人を包囲する人員がいないのは痛い。どうせ市民に危害を及ぼすつもりはないのだから、避難の誘導なんてそっちのけでこちらの人員を増やせばいいんじゃないか?……なんて口に出したら、きっとロイに咎められてしまうのだろうけど。
「……なるほど。大佐の友達は信頼出来るみたいだな」
白い布の前で足を止めた。
見ろ、とロイに指し示された塀が綺麗に切断されているのを見て、納得する。
「ここを出入口にしているんだ。多分…数日前から用意して、布を目印にしたんだろう」
用意周到なことだ。
塀は完全に切り取られており、両端にある、地面に斜めに突き刺さった棒に支えられてかろうじて立っているに過ぎない。
「!!」
その時、塀の向こう側で、じゃり、と石を踏む音がした。クライサたちが頭を低くし息を殺していると、ぼそぼそと話す声が微かに流れてくる。
そっと、塀の隙間から目を凝らすと、塀から少し離れた辺りに二人の男が立っているのが見えた。
男たちは辺りにゆっくりと首を巡らせており、手には拳銃が握られている。
「……あの二人…」
「……ああ」
何かに気付いたクライサがもらした小さな呟きに、ロイが返す。
「以前君が潰したテロリストグループの残党だな」
「クライサ…お前…」
「……忘れたね、そんなこと」