目的地が一緒だから、クライサたちはロイたちと共に先の駅に向かうことにした。
だが管轄外だからといって、現場をこのままにしておいて良いのだろうか。

「怪我人はいないし、我々に出来ることは早く司令部に戻ることだ」

乗客のうち数人はクライサたちと同じ方向に進んでいたが、大抵の者は馬車を待ちながら雑談していた。中には声を荒げている者もいる。
何日たってもテロリストを捕まえられない軍に不満を持っているのだろう、怠慢だの捕まえる気がないだのという声も聞こえる。
しかし、前を歩くロイとハボックは、全く表情を変えずに黙々と歩いている。

停車した列車の横を通り過ぎ、周囲に誰もいなくなってから、漸くロイが口を開いた。

「私服で来て正解だったな」

「そっスね」

「……随分軍に不満が向いてるみたいだね」

「ああ」

クライサの言葉に、ロイは僅かに眉間に皺を寄せた。
先に説明した通り、ここ暫くテロリストによるレールの爆破が続いている。それも頻繁に。

「……にしては、おかしいと思わなかったか?」

ロイの言わんとしていること。それに気付いたエドワードとクライサは、同時に口を開いた。テロの対象となる列車に、普通あれだけ人が乗るなんて考えられない。
今回もそうだったが、連続してテロは起こっているのに、小規模だったり人のいない場所だったりで、今まで大した怪我人が出ていないのだ。それ故、列車にも人が乗る。

「でも、だからってどうしてあそこまで軍に文句を言うんだ?悪いのはテロリストだろ?」

「……犯行予告があるんだ。しかも一般人も聞けるよう大々的にラジオでやっている」

だが予告は犯行の直前で、人を向かわせる時間もない。しかし市民にそんなことは関係ない。怪我人は出ないため命の危険は感じないが、列車があまりに止まれば生活に響く。

「犯行予告を貰っていながら何をしてるんだ、と必然的に不満はテロリストでなく軍に向かう…ってわけか」

「そういうことだ」

そんなわけだから、今軍人であることを周囲に知られては、場合によっては敵意が向いてくる。それで軍服でなく私服を着用しているのだろう。









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