(FA/兄弟+α)
「なんだっけ…」
「うーん…」
「思い出せそうにないなぁ…」
円を作るようにして座り込むエドワード、アルフォンス、クライサ。腕を組んで、あるいは目を伏せて、あるいは空を仰いで。記憶の糸を引っ張ろうとするが、引くべき糸自体が見つからない。
「んー……」
「…そもそも、名前聞いたっけ?」
「聞いた筈だよ、きっと。思い出せないけど」
「あー…確かにオッサンたちには呼ばれてたよな。思い出せないけど」
「あたしたちも呼んでる筈だよね。思い出せないけど」
それを眺めているウィンリィとメイ、マルコーが首を傾げる。スカーも若干不思議そうな様子だ。
「試しに挙げていってみるか」
「そだね」
「もしかしたら、そこから思い出せるかもしれないしね」
三人、順々に思い付く名を挙げていく。しかしどれも正解に近いとは思えず、と言ってヒントにもなりそうにない。
「バルド」
「あー…いたね、そんな人」
「でも違うよねぇ」
「カヤル?」
「それは親方の息子だろ」
「じゃあカロル」
「それは別作品でしょ」
「っていうか何だよ、じゃあって」
三人が話し合いを始めて三十分。握り拳をワナワナと震わせる男の顔の険しさが増す。しかし、当然のように彼らはそれに気付かない。
「もっとこう…貧相な名前っていうか…あの顔に合ってる名前だよね」
「ロイとか?」
「エド、今すぐ全世界のロイさんに謝ってきな。お兄ちゃん以外」
「大佐はいいんだね」
「確か二文字だったような気がすんだけどなぁ…」
「ああ…言われてみればそうだったかも」
「二文字であの顔に合ってる名前かぁ…」
と、三人同時に顔を上げた。合った視線。髭面の男を指差して、思い出した、とこれまた同時に口を開いた。
「「「モブ!!」」」
「ヨキだ!!」
004:忘れられた名前
FA20話内で本当にあった話(嘘)
ヨキ好きです
【H21/06/02】