(after FA/エド)





頭の上に広がるのは、雲一つない青い空。さんさんと輝く太陽は、心地よい日差しを地上に届けてくれる。そして足元に広がるのが青々とした草原ときたら、やることはひとつだ。

「素晴らしきかな、秋晴れ!」

夏を連れ去った風は、同時に秋の匂いを運んで来てくれた。暑さが引き、寒さがやってくるにはまだ早い時期。あたたかな日差しと涼しげな風があいまって、最高のお昼寝日和をあたしに提供してくれた。迷うことなく緑の中に体を横たえ、頭の後ろで腕を組む。風が緑を凪ぐ音と小鳥の囀りをBGMに、悠々自適に日向ぼっこを開始した。

(空が高いなぁ)

春や夏のそれよりも、秋の快晴は空が高くなったように見える。何となしに腕を伸ばす。空。この大地よりも、それこそ果てしなく広がる空。自由を象徴する、青。世界中のどこにでも当たり前のように在り、包み、見守る空。憧れた。同じ色だけど、まったく違うその存在に。同じ色だと思っていたのは、実はまったく違う色だった。ーー違う。空は、その瞬間ごとに、まったく違う色に変化しているのだ。何にもとらわれず、自由に。

(……自由、か)

想うのは、運命にとらわれた身だからだろうか。運命から逃れたつもりで、宿命にとらわれてしまったからだろうか。時間という制限を受けたこの身では、それに伸ばすにはあまりにも腕の長さが足りない。高い。秋の空は、あたしには高すぎる。伸ばした手のひらが、青色に濡れる気配は皆無だ。

「クライサ」

目を瞬いた。
微風を掠るだけだった手は、あっさりとぬくもりに包まれた。彼の弟が魂と引き換えに取り戻した、あたたかな手のひら。
ーーああ、そうか。

「何してんだ?」

「…太陽に、届くかなって思って」

促されるように体を起こしながら答えれば、エドは目を丸くした。だけどすぐに表情を微笑に変える。

「届いただろ?」





040:届くだろうか
手をとってくれたのは、いつだって彼だった





【H23/11/03】





index




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -