(2011.11.22)


世界を見て回るのだ、とエドワードとクライサがこの国を出て半年。機械鎧のメンテナンスと身体の定期検診のために帰国した二人が、東方司令部に顔を見せに来た。中央でメンテも検診も済ませて来たという彼らは、どうやら半年前と変わらず元気にしているらしい。そっちこそ元気そうでよかった、と笑ったエドワードとクライサに、リオンもまた微笑んでみせた。

「で、どこまで進展したんだ?」

旅の話の流れそのままに尋ねてみれば、エドワードが口にしていたコーヒーを盛大に噴いた。何しろリオンの表情はまったく変わらないので、ハボックやブレダあたりにからかわれる時のように心構えが出来なかったのだ(それ以前に、彼がそんなことを聞いてくるとは思わなかった)。
リオンはリオンで、エドワードのその反応と、きょとんとしたクライサの表情で大体察してしまった。進展してない。なんだ、この二人、想いを伝え合った恋人じゃないのか。

「……はぁ」
「なんだよ、その溜め息」
「確実にあたしたちに対して失礼なこと考えてるよね」
「いや、本人たちがいいなら、周りがとやかく言うことじゃないからな」
「遠い目しないでよ」

応接セットの向かい合ったソファー、その片方に二人並んで座る姿にも色気を感じない(いや、いちいち赤面されても面倒くさいが)。そもそも、この二人に『ラブラブな恋人』を期待するだけ無駄なのか。
話が一段落したところで時計に目をやれば、クライサの兄である准将殿が出先から戻ってくる時間だった。それを出迎えるべく立ち上がりながらその旨を二人に話すと、エドワードが同じように席を立つ。そしてごく自然に差し出された手を、クライサがまたごく自然に取った。

「…………」

思わず凝視してしまった先で、完璧なエスコートを受けてクライサが立ち上がる。触れ合った手のひらをお互いが握り、視線を絡めて柔らかく微笑み合う。手のひらが離れると同時に二人の目がこちらを向き、リオンは反射的に顔を背けた。なんか。なんというか、−−恥ずかしい。

(なにが進展無し、だ)

『ラブラブな恋人』だなんて、とっくにそんな域は越えてしまっているじゃないか。あれは、あの表情は。あの空気は、完全に。

(熟年夫婦以外の何ものでもないだろ!)







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