クライサが誕生日だと言うので花束を買って渡したら、すぐさま顔面に叩き付けられた。

「……あの」
「あん?」
「何が不満だったんでしょうか…」

いや、そりゃ花束なんて我ながらキザな選択だとは思うさ。似合わないと言われるのも覚悟してる。でもさ、ほら、なにも百本のバラの花束を持ってきたとかじゃないんだし。小さな花屋の店先に並んでいた、カラフルで可愛らしい…女の子なら基本的に誰でも喜びそうなものを選んだのに。そう、リナリーだったら喜んでくれていただろう。何がいけなかったんだろうか。いっそバラ百本のほうが良かったか。

「花なんぞで喜ぶと思ったか」

そこからでしたか。

それはもう不機嫌そうに言ったクライサは、オレの手の上でくたびれた様子になった花束を奪うようにして自身の手の中に戻すと、その中では一応形が崩れずにいるピンクのバラに口を寄せた。小さな女の子が好みそうな可愛らしい花と、性的とも言える瑞々しく真っ赤な唇のアンバランスに、思わずドキリとする。
……ドキリとしたのだが、その赤い唇から覗いた歯が花びらに立てられるのを見ると、一瞬浮かんだピンクな想像など彼方に飛んでいってしまった。そんなことも知らないクライサは噛みちぎったそれを口の中でもごもごやっている。食うな。

「他にもっと選びようあったでしょ。選択肢は山ほどあるのに、なんで花チョイスしちゃうかな」
「じゃあクラは何もらったら喜ぶんだ?」
「むやみに高いものとかやたらと貴重なものとか」
「……選択肢、一気に減ったんだけど」

しかもそれらは単純に価値の高いものなだけで、彼女の喜ぶものではないだろう。渡したら最後、確実に質屋行きだ。酷すぎる。

「あーあ、ラビからのプレゼントっていうから期待してたのに。これならアレンからのみたらし団子のほうが面白かったよ」
「えー、せっかくクラの顔思い浮かべながら選んだのにー」
「へぇ」
「オレの心のこもったプレゼントじゃ不満?」
「心で世界が救えるか!!」
「どっかで聞いたようなセリフ!!っていうか世界とかいう問題なのコレ!?」

結局、今回のプレゼントには満足がいかなかったようなので、明日一日彼女のために空けることになった。デート?デートなのか?

「もしかして、結果オーライ…?」

まあ、何させられるかわかったもんじゃないんだけど!









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