というわけで。
「七夕です」
「うっわ。やる気ないねぇリオン」
「ったりめーだ。朝から騒ぎまくりやがって…お陰様で残業決定だ」
Milky Way
東国の情報をファルマンから得たクライサは、非番だというのに司令部にやって来て、そこで働く者たちを巻き込んだ。
七月七日。
この日は東の島国では七夕と呼ばれていて、年に一度、空の上で一組のカップルが再会するのだそうだ。
(七夕ねぇ…短冊に願い事、って歳でもないしなぁ)
違う次元にある『東の島国』の出身であるリオンは、幼い頃友人連中と笹を囲んで走り回っていたことを思い出し、笑みを浮かべる。
その隣では紙(短冊と呼ばれているらしい)とペンを左右の手に持ち、何やら考え込んでいるクライサの姿。
ロイやハボックたちはと言えば、どこから持ってきたのだろうか、巨大な笹に己の短冊をそれぞれ吊るしている。
日の沈みかけた司令部の中庭。初めは文句を言っていた軍人たちも、今は童心にかえって行事を楽しんでいるようだ。
「姫。書くこと思い付いたか?」
「うーん……リオンは?」
「もう書いた」
手渡した紙に書かれているのは、ほどほどに休暇が欲しい、という一文だけ。年頃の少年の、何だか不憫に思えてきそうな願いに、クライサは大きな溜め息をついた。くだらないと笑い飛ばせないのが、またタチが悪い。
「適当に書けばいいじゃねぇか。まさか本当に願いが叶うなんて思ってないんだろ、国家錬金術師殿」
「とーぜん。でも万が一にも叶ったら儲けもんでしょ?」
大人たちが騒いでいる位置から遠く離れた場所に、二人並んで座って。徐々に見え出した星が川を形作り、それを見上げる少年と、気付かず奮闘する少女。
今頃この星空の中で、彦星と織姫は再会を果たしているのだろうか。
ふと視線を向けると、こちらを見た少女と目が合って、二人同時に吹き出した。
ロマンチックには程遠い
(書けた!世界征服!!)
(…お前が願うとなんか叶いそうだよな)
【H20/07/02】