「………」

朝はどうにも、覚醒するまでに時間がかかってしまう。目が覚めてから体を起こすまで最低10分。朝方の外気はまだ肌寒く、くるまった毛布が心地良い。

(あー…二度寝しそう…)

昨夜遅くまで読書に耽っていたせいか、今日はやけに瞼が重い。温かな毛布の中から出られない。

「……ん?」





お兄ちゃんといっしょ





頭の下に、違和感。いつもの枕と違って若干ゴツゴツとした感触に、手を伸ばした。

「……」

触れたのは、人肌。
そういえば寝息のようなものも聞こえる。

首を曲げると、兄の寝顔がそこにあった。
現状を理解するのに頭の中を整理しながら、寝顔はさらに童顔だ、などとぼんやり考えている自分もいる(まだ少し寝惚けているらしい)。

腕枕から頭を上げ、室内を見回すが、間違いなくここは自分の部屋。
再び、隣で未だ夢の世界の住人になっている彼に、目を向けた。

「お兄ちゃん」

「……う」

「人のベッドに入り込むなって、何度言えばわかんのかな?」

「う…うう…」

口調は穏やかに、しかし頬を抓る手に加減は無い。彼の寝顔がみるみる苦痛に満ちていく。

「……クライサ?」

「オハヨウ。」

ゆっくりと目が開くのを確認してから、漸く手を離した。微かに赤くなってしまった頬を指先で摩り、クス、と笑みを溢す。

さて、今日の朝食は何にしようか。
ベッドから出るため毛布を捲ると、強い力で腕を引かれた。倒れ込んだ体を抱き込むのは、もちろんロイだ。

「お兄ちゃん、朝ごはん…」

「まだ寝る」

「え、ちょ…」

ご丁寧に毛布を掛け直され、両腕による拘束はより強固になる。真正面から抱き込まれて少々息苦しいが。

(…やば、また眠気が…)

心地良い体温に、抵抗する気力は奪われていった。既に再びの眠りに落ちたらしい兄の寝息が耳に届き、無意識なのか、抱き締める力は更に増す(それでも苦しくないのは、相手がロイだからだろうか)。

攻撃行動に出ない限り抜け出せそうにない、優しい拘束。温かく、暖かい腕の中。
今眠ったら、きっと日が高くなるまで目覚めそうにないけれど、

(こんな日も、たまにはいっか)





毛布のなか
(仕事休みで本当に良かった!)





【H20/07/01】





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