in hot daysD
またハズレだった。
賢者の石を持つ人がいると聞いて、東部のある街へ向かった。けれどそれは目的の石ではなくただの宝石で、早々にイーストシティへと戻ってきたのだ。
オレがいるのは、司令部の中庭。建物の壁に背を預け、緑の上に腰を下ろし、ぼんやりと空を見上げる。
アルは中尉の手伝いに行ったし、クライサはどこかへ消えてしまった。オレは一人、夏の暑さの中で、何もせずにぼんやりしているのだ。
一人でいると、よく考えてしまう。
賢者の石は手に入るのか?オレたちは元の身体に戻れるのか?
アルは、一生、あのままなんじゃーー
ぶしゃっ。
「うぉっ!?」
いきなり顔に叩きつけられたのは、冷水。雨ともまた違ったそれに、濡れた顔を拭いながら目を向けると。
「てめ…いきなり何しやがる、クライサ!!」
チョロチョロと水を垂らすホースを手にした、空色の少女ーークライサが悪戯に笑んでいた。さっきのはホースの先を抓んだのだろう。だから勢い良くこちらに降りかかってきたのだ。
「水をかけてみました☆」
「んなこたぁわかってんだよ!!」
「さっき近くでコレ見つけたから。蛇口を探して決行してみました」
と言って、空いた片手でホースを指差す。
その様子に溜め息をついて、オレは彼女の元に歩み寄った。そして彼女の手のホースの先を、持ち主に向けて
「仕返し。」
先を思いっきり抓んでやった。
「ふぎゃあ!?」
勢い良く向かってきた水をまともに顔面に受けると、クライサは驚き声を上げた。
それに笑っていると、彼女は眉を寄せてこちらを睨み付ける。どうやら機嫌を損ねたらしい。
「…仕返しの仕返しーっ!!」
「暑いとさ、何やっても嫌になるでしょ?」
びしょびしょに濡れた上着を絞りながら、クライサは言う。
「だから、気分転換」
どうやら気を遣ってくれたらしい。確かにスッキリした。
「…サンキュ。元気出た」
「それは良かった」
ホースから流れ出る水。それは色鮮やかな虹を作っていた。
「…じゃ、大佐に情報たかりに行くか」
「りょーかい」
『暑い日で5のお題』
5.ホースで水遊び