in hot daysC
毎年恒例の夏祭りが開催された。
仕事後、家に帰ってくつろいでいたのだが、何となく外に出たくなって出店巡りをした。それほど好きでもないのに、ついついかき氷(苺味)を買ってしまったり。
人混みを歩くのも甘いかき氷を食べるのも嫌になってしまい、俺は半分程残ったかき氷の器を片手に、人気のない路地に入った。
片手で器用に煙草を取り出し、とりあえず一服。やはりかき氷よりもずっと落ち着く。
「あれー?少尉じゃん」
そんな時に聞こえた声。そちらに目を向けると、路地の入り口付近に見慣れた少女が立っていた。クライサだ。
「よう、奇遇だな。大佐と一緒に来たのか?」
「うん、前々から楽しみにしてたんだ」
しかしクライサの隣、後ろ、どこにも大佐がいない。大方この人混みではぐれたんだろう。
「……あれ?少尉、それ」
「ん?…ああ、これか」
少女の視線を追うと、それは俺の手の中のかき氷。
クライサは甘い物ーー特に苺が大好きだ。食べたいのだろうか。羨ましそうな目でそれを見つめている。
「少尉。これちょーだい」
徐に彼女が手を伸ばした。俺の手の、食べかけのかき氷に。
「ちょっと待てクライサ!」
「もう食べないんでしょ?勿体無いし、ちょーだいよ。何ならお金も払うよ」
「いや、そうじゃなくて…!」
慌てて止めようとするも、彼女はすぐに器に刺さっていたスプーンを手にし、かき氷を一口食べた。気に入ったのか、その後も次々に残ったそれを頬張っていく。
(それ、俺も口つけたんだけど…)
俺の視線の先には、ご機嫌な少女…の手の中のスプーン。
本人が気にしないのならいいが、これはアレだよな。
(間接キ、)
ボン!!
「あっちぃーーーっ!!!」
突然くわえていた煙草が爆発した。慌てて口からそれを離すと、またも聞き慣れた声。
「こんな所にいたのか?探したぞ」
「あ、お兄ちゃん!」
そう。彼女の兄。……右手に発火布をつけた、マスタング大佐だ。この兄貴のガードは本当にかたい。とにかくかたい。
…っていうか、今回は俺悪くねーじゃん……
『暑い日で5のお題』
4.かき氷